第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本呼吸理学療法学会 一般演題ポスター
呼吸P08

Sat. May 28, 2016 4:00 PM - 5:00 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-RS-08-3] 非小細胞肺癌患者における胸腔鏡下肺葉切除術後の退院後運動耐容能の推移

兵頭正浩1, 入江将考1, 濱田和美1, 安田学2, 花桐武志2 (1.国家公務員共済組合連合会新小倉病院リハビリテーション部, 2.国家公務員共済組合連合会新小倉病院呼吸器外科)

Keywords:非小細胞肺癌, 胸腔鏡下肺葉切除術, 運動耐容能

【はじめに】

肺切除術を受けた肺癌患者に対する呼吸リハビリテーション(呼吸リハ)に関しては,開胸術を含めた報告はあるが,胸腔鏡アプローチのみを対象とした報告は殆ど見受けられない。そこで今回,胸腔鏡下肺葉切除術(thoracoscopic lobectomy:TL)を受けた,非小細胞肺癌(NSCLC)患者の退院時運動耐容能回復率に着目し,退院後運動耐容能の推移を調査したので報告する。


【方法】

対象は,当院において2012年10月から2014年7月に,TLならびに入院呼吸リハを受けたNSCLC患者とした。運動耐容能は,6分間歩行距離(6-min walk distance:6MWD)で評価し,手術前,退院時,術後1ヶ月,3ヶ月,6ヶ月の計5回測定した。対象を呼吸リハ終了時の運動耐容能(退院時6MWD)の回復率で回復群(術前比≧100%)と非回復群(術前比<100%)の2群に分類し,退院後の運動耐容能の推移を比較した。統計分析には,反復測定の分散分析(repeated measures ANOVA)を用い,posthoc検定としてBonferrorniの多重比較を行った。また,退院時の運動耐容能回復の規定因子を明らかにするため,退院時6MWD(術前比≧100%)を従属変数とした多重ロジスティック回帰分析(ステップワイズ法)を用い,独立変数は,運動耐容能に影響を及ぼす見込みのある患者,手術および腫瘍因子とした。有意水準は危険率5%とした。


【結果】

研究期間内の連続症例は100名で,そのうち,術後6ヶ月まで6MWDを計測できた50名が解析対象となった(男性:35名(70%),年齢:68.02±8.19歳)。退院時回復群は24名(48%),非回復群は26名(52%)。2群の6MWD回復率の中央値(退院時,術後1ヶ月,3ヶ月,6ヶ月)は,回復群は105,104,107,108%で,非回復群は90,94,91,90%であった。反復測定分散分析の結果,主効果(運動耐容能:p=0.008,測定時期:p=0.02)に有意差があり,交互作用は有意ではなかった。多重比較検定の結果,2群間に有意差はなかった。多重ロジスティック回帰分析の結果,退院時6MWD(術前比≧100%)の有意な独立変数は,POD7の下肢筋力(>体重比40%)のみであった(p=0.0012)。


【結論】

反復測定分散分析の結果から,運動耐容能は両群間で有意差があり,測定時期でも有意に異なっていた。交互作用は有意でなく,多重比較検定でも有意差はなかったので,2群間の差は時間経過とともに変わらないことが分かった。つまり,呼吸リハ介入が終了する退院時の運動耐容能回復が不十分な患者群は,運動耐容能回復が遅延しているという訳ではなく,少なくとも術後半年間は低下した状態が持続し,回復群との差は縮まらなかった。その退院時6MWD回復の規定因子は下肢筋力であった。従って,入院呼吸リハ介入中に下肢筋力が弱く,運動耐容能が術前レベルまで回復出来ていない患者群に対しては,入院中の呼吸リハの強化や退院時指導の見直し,外来呼吸リハなどの継続介入を検討する必要性が示唆された。