第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本呼吸理学療法学会 一般演題ポスター
呼吸P09

2016年5月29日(日) 10:00 〜 11:00 第11会場 (産業振興センター 2階 セミナールームA)

[P-RS-09-1] 外来呼吸リハビリテーションを実施したCOPD患者の身体活動量とセルフマネジメントとの関連

白石匡 (近畿大学医学部附属病院リハビリテーション部)

キーワード:COPD, 身体活動量, セルフマネジメント

【はじめに,目的】

慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease,COPD)の主たる症状は,慢性的な咳や痰,労作時の息切れであり,更に進行すると呼吸困難のために日常生活が制限されPhysical Activity(以下PA)の減少をきたす(GOLD 2014)。COPD患者にとって,日々のPAを高めることは重要である。セルフマネジメントとは患者が健康になるために身体的,心理的,社会的問題に適切な行動を取れる問題解決技術のことである。近年,患者と医療従事者が協力して,患者を自身のケアに積極的に参加させるセルフマネジメントの有用性が注目されており(Spruit MA, et al.,:2013),セルフマネジメントの向上が急性増悪による入院回数を減少させると報告されている(Effing T, et al.,:2007)。本研究の目的はCOPD患者におけるPAとセルフマネジメントの関係を検討することとした。

【方法】

当院に外来通院中のGOLD stage2~4期の安定期のCOPD患者で,運動を制限する他疾患のない,13例(男性11例 女性2例 年齢73.8±6.2歳)を対象とした。評価内容としては年齢,BMIなど基礎情報の聴取を行い,併せて呼吸機能(FVC,FEV),PA(身体活動指数:1日の総エネルギー消費量/基礎代謝量),運動耐容能(6分間歩行試験:6MWD),健康関連QOL(St,George's Respiratory Questionnaire:SGRQ),うつ・不安(The Hospital Anxiety and Depression Scale:HADS),COPD患者の自己管理能力(Lung Information Needs Questionnaire:LINQ)であり,リハ介入時・介入後12週以降とした。PAの評価には3軸加速度センサー(アクティマーカー)を使用した。またPAの変化に影響する因子を検討するため,呼吸リハ介入前の各指標と身体活動量の変化量との関係を検討した。統計処理はPAと各項目の変化量の関係をピアソンの相関係数を用いて検討し,有意水準を5%未満とした(SPSS,ver22)。

【結果】

呼吸リハ介入前のPAと6分間歩行距離とに有意な相関を認めた(r=0.65,p<0.05)。呼吸リハ介入前後での変化量は,PAとSGRQ impacts(r=0.53,p<0.05),SGRQ total(r=0.58,p<005),HADS depression(r=0.63,p<0.01)に相関を認めた。また,呼吸リハ介入前の各指標とPAの変化量では,PAの変化量とLINQ薬(r=-0.58,p<0.05)・LINQ自己管理(r=0.63,p<0.05)・LINQ合計(r=0.62,p<0.05)とに相関を認めた。

【結論】

今回,COPD患者の呼吸リハ介入前のLINQとPAの変化量の関連から,開始時のセルフマネジメント能力が高いほどPAは増加しやすい傾向にあった。近年,COPD患者における患者教育や栄養指導といった包括的なアプローチを含めた呼吸リハの有用性が確立されつつある(Altenburg WA, et al.,:2015)。本研究の結果より呼吸リハ介入時においてセルフマネジメント能力を向上させることが,PAの増加へとつながる可能性が示唆された