[P-RS-09-3] クリニックに通院している慢性呼吸器疾患患者の主観的な身体活動量について
Keywords:身体活動量, 慢性呼吸器疾患患者, 歩数計
【はじめに,目的】
臨床で身体活動の問診を行った際,「普段,歩いている」と回答した患者でも歩数計から得られた実測歩数が少ないことにしばしば遭遇する。そこで,本研究の目的は,問診にてよく用いられる質問を参考に作成した質問紙から得られた主観的な身体活動量について調査することである。
【方法】
対象は,当クリニックに通院している慢性呼吸器疾患患者47名(男性30名,女性17名,年齢71.2±6.8歳,%FVC 85.4±23.7%,FEV1% 61.8±15.3%)とした。調査方法は,呼吸リハ開始時評価の際に主観的な身体活動量に関する質問紙を用いて調査した。今回,作成した質問紙の内容は,1.歩数計をもっていますか。2.あなたは普段歩いていると思いますかの質問にて,a.思う,b.思わないの回答で歩行充足感を聴取した。3.あなたの普段の生活範囲はどれに最もあてはまりますかの質問にて,a.ほとんど外出しない,b.外出はするが,ほとんど歩かない,c.自宅周辺を歩く,d.散歩する,e.汗ばむ程度の運動をするの回答で生活範囲および活動状況を聴取した。調査項目は質問紙に加え,歩数計(ライフコーダ(スズケン))から得られた実測歩数/日,中等度以上の活動割合/日,健康関連QOL(SF-36)とした。解析は,質問紙の内容から1.歩数計の有無により所持群,非所持群,2.主観的な歩行充足感からaを充足群,bを非充足群,3.主観的な生活範囲および活動状況からa~cを低範囲群,d.eを高範囲群に分類し各群における調査項目をt検定およびMann-WhitneyのU検定を用いて比較検討した。また,実測歩数/日の基準を国民健康栄養調査の結果を用いて5000歩に設定した。
【結果】
1.歩数計の有無
所持群(24名)と非所持群(23名)において検討項目に有意な差を認めなかった。実測歩数/日が基準に達しなかった者は所持群で37%,非所持群で34%であった。
2.歩行充足感
充足群(28名)では,非充足群(19名)に比べ実測歩数/日のみ有意に高かった。実測歩数/日が基準に達しなかった者は高充足群で32%,低充足群で31%であった。
3.生活範囲および活動状況
高範囲群(28名)では,低範囲群(19名)に比べ実測歩数/日,SF36の下位尺度のうち身体機能,全体的健康感は有意に高かった。実測歩数/日が基準に達しなかった者は高範囲群で25%,低範囲群で52%であった。
【結論】
主観的な身体活動量が高いと回答した者でも,実際には歩いていない者が含まれていたことから問診による身体活動量の把握は不十分であることが示唆された。また,歩数計を所持していても実測歩数/日には反映されないこと,健康関連QOLの評価では活動性の推測が困難であることが示唆された。これらのことから,身体活動性の評価は歩数計から得られる客観的データを用いる必要があること,歩数計をただ所持させるだけでなく,専門知識を持った理学療法士の介入(患者指導)が重要であると考えられた。
臨床で身体活動の問診を行った際,「普段,歩いている」と回答した患者でも歩数計から得られた実測歩数が少ないことにしばしば遭遇する。そこで,本研究の目的は,問診にてよく用いられる質問を参考に作成した質問紙から得られた主観的な身体活動量について調査することである。
【方法】
対象は,当クリニックに通院している慢性呼吸器疾患患者47名(男性30名,女性17名,年齢71.2±6.8歳,%FVC 85.4±23.7%,FEV1% 61.8±15.3%)とした。調査方法は,呼吸リハ開始時評価の際に主観的な身体活動量に関する質問紙を用いて調査した。今回,作成した質問紙の内容は,1.歩数計をもっていますか。2.あなたは普段歩いていると思いますかの質問にて,a.思う,b.思わないの回答で歩行充足感を聴取した。3.あなたの普段の生活範囲はどれに最もあてはまりますかの質問にて,a.ほとんど外出しない,b.外出はするが,ほとんど歩かない,c.自宅周辺を歩く,d.散歩する,e.汗ばむ程度の運動をするの回答で生活範囲および活動状況を聴取した。調査項目は質問紙に加え,歩数計(ライフコーダ(スズケン))から得られた実測歩数/日,中等度以上の活動割合/日,健康関連QOL(SF-36)とした。解析は,質問紙の内容から1.歩数計の有無により所持群,非所持群,2.主観的な歩行充足感からaを充足群,bを非充足群,3.主観的な生活範囲および活動状況からa~cを低範囲群,d.eを高範囲群に分類し各群における調査項目をt検定およびMann-WhitneyのU検定を用いて比較検討した。また,実測歩数/日の基準を国民健康栄養調査の結果を用いて5000歩に設定した。
【結果】
1.歩数計の有無
所持群(24名)と非所持群(23名)において検討項目に有意な差を認めなかった。実測歩数/日が基準に達しなかった者は所持群で37%,非所持群で34%であった。
2.歩行充足感
充足群(28名)では,非充足群(19名)に比べ実測歩数/日のみ有意に高かった。実測歩数/日が基準に達しなかった者は高充足群で32%,低充足群で31%であった。
3.生活範囲および活動状況
高範囲群(28名)では,低範囲群(19名)に比べ実測歩数/日,SF36の下位尺度のうち身体機能,全体的健康感は有意に高かった。実測歩数/日が基準に達しなかった者は高範囲群で25%,低範囲群で52%であった。
【結論】
主観的な身体活動量が高いと回答した者でも,実際には歩いていない者が含まれていたことから問診による身体活動量の把握は不十分であることが示唆された。また,歩数計を所持していても実測歩数/日には反映されないこと,健康関連QOLの評価では活動性の推測が困難であることが示唆された。これらのことから,身体活動性の評価は歩数計から得られる客観的データを用いる必要があること,歩数計をただ所持させるだけでなく,専門知識を持った理学療法士の介入(患者指導)が重要であると考えられた。