[P-RS-10-2] 慢性閉塞性肺疾患患者における運動中の呼吸介助併用効果
キーワード:呼吸介助, 呼吸中枢出力, 運動負荷
【はじめに,目的】
慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の呼吸困難の軽減に運動療法は有用であり,特に下肢筋への運動療法のエビデンスは高い。しかし運動療法をCOPD患者に実施すると呼吸困難の増大により運動強度を増加させることができないばかりか,運動自体を中断しなければならないことが多い。このような場合では呼吸困難の軽減を目的に胸郭へ徒手的な圧迫を行う呼吸介助手技が用いられることがある。これまで我々はリラクセーション肢位での呼吸介助がCOPD患者における呼吸困難の軽減に有用であることを報告している。しかしCOPD患者への運動療法時の呼吸介助併用効果については明らかにされていない。そこで運動中の呼吸介助併用効果について,運動生理学的な視点からそのメカニズムを明らかにすることを本研究の目的とする。
【方法】
在宅で管理されている24名の安定したCOPD患者(76.3±8.0歳,1秒率53.0±13.7%)を対象とした。換気量と呼吸代謝の測定には呼気ガス分析器を,呼吸中枢出力の指標である気道閉塞圧(P0.1)は気道閉塞装置を用いて測定した。気道閉塞装置に呼気ガス分析器の熱線トランスデューサー,気道内圧測定のための差圧トランスデューサーを接続し,対象者の口にマスクで固定した。心拍数の測定にはモニター心電図を用いた。呼気ガス分析器,差圧トランスデューサー,心電計のアナログ信号はADコンバーターを介してパーソナルコンピューターに取り込んだ。運動中の呼吸困難感はVisual analog scale(VAS)を用いた。
対象者のスパイロメトリーと吸気筋力(PImax)を測定し,運動負荷には自転車エルゴメータを用い,マスクをつけた状態で2分間の安静の後10W/分のランプ負荷にて呼吸介助手技の有無の2条件をランダムに運動負荷試験を行った。運動負荷は別に定めた運動中止基準に達するまで行った。各項目は1分ごとに測定し,運動終了時のデータを採用した。統計処理にはSPSS ver21.0(SPSS)を用い,呼吸介助の有無の比較に対応のあるt検定を行った。有意水準はp<0.05とした。
【結果】
呼吸介助によりP0.1は5.86±2.73cmH2Oから5.09±2.75cmH2Oと有意に減少し,P0.1/PImaxも0.13±0.09から0.11±0.08と有意に低下した。しかし運動継続時間,換気指標や呼吸困難の程度については有意な差が認めなかった。
【結論】
COPDへの呼吸介助手技は,圧迫により呼気運動を介助したり,機能的残気量を超えて呼出させた後の胸郭の弾性拡張圧によって吸気努力を減少させたりするため,呼吸困難を低下させる可能性がある。呼吸努力と関連があるP0.1やP0.1/PImaxのいずれも呼吸介助によって減少したことから,運動中であっても呼吸介助は呼吸中枢出力を減少させると考えられた。しかしながら対象者が感じる呼吸困難や換気諸量については差が認められなかった。
今後はさらに対象者を増やし,GOLDの重症度分類ごとに検討を行っていきたいと考える。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の呼吸困難の軽減に運動療法は有用であり,特に下肢筋への運動療法のエビデンスは高い。しかし運動療法をCOPD患者に実施すると呼吸困難の増大により運動強度を増加させることができないばかりか,運動自体を中断しなければならないことが多い。このような場合では呼吸困難の軽減を目的に胸郭へ徒手的な圧迫を行う呼吸介助手技が用いられることがある。これまで我々はリラクセーション肢位での呼吸介助がCOPD患者における呼吸困難の軽減に有用であることを報告している。しかしCOPD患者への運動療法時の呼吸介助併用効果については明らかにされていない。そこで運動中の呼吸介助併用効果について,運動生理学的な視点からそのメカニズムを明らかにすることを本研究の目的とする。
【方法】
在宅で管理されている24名の安定したCOPD患者(76.3±8.0歳,1秒率53.0±13.7%)を対象とした。換気量と呼吸代謝の測定には呼気ガス分析器を,呼吸中枢出力の指標である気道閉塞圧(P0.1)は気道閉塞装置を用いて測定した。気道閉塞装置に呼気ガス分析器の熱線トランスデューサー,気道内圧測定のための差圧トランスデューサーを接続し,対象者の口にマスクで固定した。心拍数の測定にはモニター心電図を用いた。呼気ガス分析器,差圧トランスデューサー,心電計のアナログ信号はADコンバーターを介してパーソナルコンピューターに取り込んだ。運動中の呼吸困難感はVisual analog scale(VAS)を用いた。
対象者のスパイロメトリーと吸気筋力(PImax)を測定し,運動負荷には自転車エルゴメータを用い,マスクをつけた状態で2分間の安静の後10W/分のランプ負荷にて呼吸介助手技の有無の2条件をランダムに運動負荷試験を行った。運動負荷は別に定めた運動中止基準に達するまで行った。各項目は1分ごとに測定し,運動終了時のデータを採用した。統計処理にはSPSS ver21.0(SPSS)を用い,呼吸介助の有無の比較に対応のあるt検定を行った。有意水準はp<0.05とした。
【結果】
呼吸介助によりP0.1は5.86±2.73cmH2Oから5.09±2.75cmH2Oと有意に減少し,P0.1/PImaxも0.13±0.09から0.11±0.08と有意に低下した。しかし運動継続時間,換気指標や呼吸困難の程度については有意な差が認めなかった。
【結論】
COPDへの呼吸介助手技は,圧迫により呼気運動を介助したり,機能的残気量を超えて呼出させた後の胸郭の弾性拡張圧によって吸気努力を減少させたりするため,呼吸困難を低下させる可能性がある。呼吸努力と関連があるP0.1やP0.1/PImaxのいずれも呼吸介助によって減少したことから,運動中であっても呼吸介助は呼吸中枢出力を減少させると考えられた。しかしながら対象者が感じる呼吸困難や換気諸量については差が認められなかった。
今後はさらに対象者を増やし,GOLDの重症度分類ごとに検討を行っていきたいと考える。