第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本呼吸理学療法学会 一般演題ポスター
呼吸P10

Sun. May 29, 2016 10:00 AM - 11:00 AM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-RS-10-4] 急性期病院の肺炎入院患者における身体活動量の推移と特徴について

鈴木亮馬, 新津雅也, 山口亜紗美, 山岡祐介, 藤原充, 櫻田隆悟, 河島徹, 満冨一彦 (磐田市立総合病院リハビリテーション技術科)

Keywords:身体活動量, 肺炎, 急性期病院

【はじめに,目的】

近年肺炎患者が増加傾向である。たとえ,肺炎が治癒しても高齢者では肺炎後の身体能力の低下が著しくADLが制限される者も少なくない。一方で,ADL維持のためには身体活動量(physical activity:PA)の向上が必要と言われている。一般的に早期離床がADL維持のため必要と言われているが,入院肺炎患者の早期離床時のPAを実測した報告は少ない。早期離床ができなければADLの低下を惹起する可能性があり,離床開始時のPAならびにPAに関連する要因について把握することは重要である。したがって,本研究では肺炎患者の入院中における病棟でのPAと理学療法中のPAを調査することで現状を把握し,併せてPAに与える要因を重症度,耐久性,パフォーマンス,筋力の観点より検討した。

【方法】

対象は,2015年7月から10月に当院呼吸器内科へ入院し細菌性肺炎と診断された20名とし,理解力が乏しい者,運動を制限し得る整形疾患,心疾患および神経疾患を有する者は除外した。評価項目は,肺炎重症度分類(A-DROP),修正息切れスケール(mMRC),10m最大歩行テスト(10m max),6分間歩行テスト(6-minute walk test:6MWT),6MWT後の呼吸困難感(呼吸BS)ならびに全身疲労感の修正Borg Scale(全身BS),大腿四頭筋力(quadriceps force:QF),PAとした。mMRC,10m max,6MWT,QFは入院時および退院時にそれぞれ測定した。QFは徒手筋力計(プルセンサー/SAKAIMed)を使用し,加藤らの方法に準じて測定し,体重比百分率(%kgf)に換算し用いた。PAは,理学療法介入日より身体活動量計(Active style Pro HJA-350IT/OMRON)を装着し,翌日から連続5日間のPAを抽出した。身体活動量計で得られたデータから,総歩数ならびに静的活動(0.1~1.9METs)の活動時間(SPA),低強度(2~2.9METs)の活動時間(LPA),中等強度(3METs)以上の活動時間(MVPA)を算出した。総歩数と各項目の関連性にはPearsonの相関係数ならびにSpearmanの順位相関係数を用いた。また歩数を平均で高活動量群,低活動量群に群分けし,両群間の各項目は対応のないt検定で比較した。統計学的分析にはSPSS21を用い,統計的有意水準は危険率5%未満とした。

【結果】

総歩数と退院時の6MWT後の呼吸BS(r=-0.59)と全身BS(r=-0.65)に有意な負の相関が認められた。また,2群間の比較では病棟のPAでLPAおよびMVPAの時間,A-DROP,初期退院時それぞれの6MWT,呼吸BSおよび全身BS,退院時のmMRCに有意な差を認めた。

【結論】

入院初期時の総歩数が退院時における動作後の呼吸困難感や全身疲労感に関連している可能性が示唆され,活動量の高低には耐久性がより関係している可能性が示唆された。今回の結果により,重症な患者では活動量が上がりきらない内に退院となる可能性が見られた。そのような患者でも理学療法中には低~中等度負荷の動作を実施しているが,それ以外の時間では実施できておらず今後はPAを増加できるよう病棟看護師等と連携する必要があると考える。