[P-RS-12-6] 男性COPD患者における外出制限指標としてのSGRQの有用性
Keywords:COPD, SGRQ, 外出制限
【はじめに,目的】
St. George's Respiratory Questionnaire(SGRQ)は,慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者に対する疾患特異性のある健康関連QOLの評価指標として,臨床の場面で広く活用されている。咳,呼吸困難,喘鳴などの症状による社会的影響,心理的影響が評価できるように,Symptom(症状),Activity(活動),Impact(影響)の3つのコンポーネントから成されている。中でもActivityは,呼吸困難によって制限される日常生活の活動レベルを評価している。近年,COPD患者の活動性は予後因子としての重要なrisk factorとして考えられている。そこで今回,活動性の一指標として,外出に制限が生じ始めるとされる6分間歩行距離400mを境界として,SGRQ測定値における外出制限のcut off値を求め,その有用性を検討した。
【方法】
対象は,研究の参加に同意が得られた病状安定期の男性COPD患者111名で,平均年齢は73.4±9.3歳,BMIは22.1±4.6,%FEV1は58.4±24.7%であった。主要測定指標は,SGRQの各コンポーネントの得点およびTotal得点,6分間歩行距離(6MWD)とした。副次的測定指標は,呼吸筋力(MIP,MEP),握力,膝伸展筋力,片足立脚時間,5m最速歩行時間,Timed Up and Go時間(TUG),漸増シャトルウォーキング試験(ISWT),長崎大学呼吸ADL質問票の合計得点(NRADL),HADSによる不安・うつの得点とした。
統計学的解析は,外出に制限が生じ始める6MWD-400m以上群と未満群を従属変数,SGRQの各コンポーネントの得点とTotal得点を説明変数としてROC曲線を求め,SGRQのcut off値を算出した。曲線の精度は,ROC曲線下面積(AUC)にて分析した。合わせて,SGRQの得点と副次的評価項目との相関をPearsonの積率相関係数を用いて分析した。なお,有意水準は5%とし,統計解析ソフトはSPSS version20を使用した。
【結果】
SGRQの外出に制限が生じ始めるcut off値は,Totalで32.9(AUC=0.81),Impactで21.2(AUC=0.77),Activityで48.8(AUC=0.87),Symptomsで70.1(AUC=0.67)であった。SGRQのTotal得点と副次的測定指標との相関は,6MWD(r=-0.58,p<0.001),ISWT(r=-0.59,p<0.001),不安(r=0.51,p<0.001),うつ(r=0.46,p<0.001),NRADL(r=-0.67,p<0.001)で有意な相関を認めた。SGRQのActivityの得点と副次的測定指標との相関は,6MWD(r=-0.67,p<0.001),ISWT(r=-0.72,p<0.001),不安(r=0.41,p<0.001),うつ(r=0.45,p<0.001),NRADL(r=-0.70,p<0.001)で有意な相関を認めた。
【結論】
SGRQは,6MWDでの外出制限の指標として中等度の精度を認めた。特に,Total,Activutyについては,比較的高い精度が得られ,これらのcut off値は,外出制限を想起する有効な指標となりえることが示唆された。また,SGRQのTotal,Activityの得点と身体能力,心理機能に有意な相関を認め,これらの指標の改善に向けた取り組みが,外出制限,如いては活動性の維持,向上に寄与するのではないかと考える。
St. George's Respiratory Questionnaire(SGRQ)は,慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者に対する疾患特異性のある健康関連QOLの評価指標として,臨床の場面で広く活用されている。咳,呼吸困難,喘鳴などの症状による社会的影響,心理的影響が評価できるように,Symptom(症状),Activity(活動),Impact(影響)の3つのコンポーネントから成されている。中でもActivityは,呼吸困難によって制限される日常生活の活動レベルを評価している。近年,COPD患者の活動性は予後因子としての重要なrisk factorとして考えられている。そこで今回,活動性の一指標として,外出に制限が生じ始めるとされる6分間歩行距離400mを境界として,SGRQ測定値における外出制限のcut off値を求め,その有用性を検討した。
【方法】
対象は,研究の参加に同意が得られた病状安定期の男性COPD患者111名で,平均年齢は73.4±9.3歳,BMIは22.1±4.6,%FEV1は58.4±24.7%であった。主要測定指標は,SGRQの各コンポーネントの得点およびTotal得点,6分間歩行距離(6MWD)とした。副次的測定指標は,呼吸筋力(MIP,MEP),握力,膝伸展筋力,片足立脚時間,5m最速歩行時間,Timed Up and Go時間(TUG),漸増シャトルウォーキング試験(ISWT),長崎大学呼吸ADL質問票の合計得点(NRADL),HADSによる不安・うつの得点とした。
統計学的解析は,外出に制限が生じ始める6MWD-400m以上群と未満群を従属変数,SGRQの各コンポーネントの得点とTotal得点を説明変数としてROC曲線を求め,SGRQのcut off値を算出した。曲線の精度は,ROC曲線下面積(AUC)にて分析した。合わせて,SGRQの得点と副次的評価項目との相関をPearsonの積率相関係数を用いて分析した。なお,有意水準は5%とし,統計解析ソフトはSPSS version20を使用した。
【結果】
SGRQの外出に制限が生じ始めるcut off値は,Totalで32.9(AUC=0.81),Impactで21.2(AUC=0.77),Activityで48.8(AUC=0.87),Symptomsで70.1(AUC=0.67)であった。SGRQのTotal得点と副次的測定指標との相関は,6MWD(r=-0.58,p<0.001),ISWT(r=-0.59,p<0.001),不安(r=0.51,p<0.001),うつ(r=0.46,p<0.001),NRADL(r=-0.67,p<0.001)で有意な相関を認めた。SGRQのActivityの得点と副次的測定指標との相関は,6MWD(r=-0.67,p<0.001),ISWT(r=-0.72,p<0.001),不安(r=0.41,p<0.001),うつ(r=0.45,p<0.001),NRADL(r=-0.70,p<0.001)で有意な相関を認めた。
【結論】
SGRQは,6MWDでの外出制限の指標として中等度の精度を認めた。特に,Total,Activutyについては,比較的高い精度が得られ,これらのcut off値は,外出制限を想起する有効な指標となりえることが示唆された。また,SGRQのTotal,Activityの得点と身体能力,心理機能に有意な相関を認め,これらの指標の改善に向けた取り組みが,外出制限,如いては活動性の維持,向上に寄与するのではないかと考える。