第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本支援工学理学療法学会 一般演題ポスター
工学P01

Fri. May 27, 2016 11:50 AM - 12:50 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-SK-01-2] 若年下腿切断者の早期部活復帰を目指して

活動・参加への介入によりQOL向上に繋がった一症例

東山学史1, 髙江洲夕貴2, 石田文香1, 森憲一1 (1.大阪回生病院リハビリテーションセンター, 2.澤村義肢製作所)

Keywords:QOL, 下腿切断, 症例報告

【はじめに,目的】

下腿切断者は義足適合までに多くの時間を要し,活動・参加が制限され満足度が低下することが多い。今回,大学最終学年で野球部員の下腿切断者を担当した。引退時期が迫っており,早期の部活復帰が本人の希望であった。義肢装具士との連携を含め,機能のみならず活動・参加までを考慮した治療展開を行った。QOL評価を用いてその効果を検討し,考察を加えここに報告する。


【方法】

カナダ作業遂行測定(以下COPM)により目標と治療戦略を検討し,SF36v2™にてQOLの評価を行った。また義足歩行能力分類,10m歩行,50m走行,義足側の片脚立位時間にて効果判定を行った。症例は20歳代男性。交通事故で受傷し,他院にて手術施行。その後当院へ転院し,義足作成を行った(第19病日)。第27病日より仮義足作製開始し,第61病日に義足歩行自立獲得,第91病日に退院となった。退院後,第124病日に野球部復帰を果たした。本発表は義足歩行獲得時を初期評価,退院時を部活復帰時とした。介入として断端管理の他に,入院直後より義肢装具士とのカンファレンスを重ね,外出により義肢製作所へ出向き多種類の義足パーツを検討した。また野球の競技特性に合わせた義足の調整・検討を行った。義足歩行獲得後には積極的な屋外歩行やADL練習,競技特性を考えた治療を展開した。また退院3日後に障がい者スポーツのイベントへ参加し,切断者のプロアスリートと接する機会を設けた。


【結果】

初期評価→最終評価で記載。COPM(遂行度/満足度)において①断端の痛みのない生活が送れる(2/1→7/6),②今までと同じように難無く部活がこなせる(2/2→5/5),平均スコア遂行度(2→6)満足度(1.5→5.5)。SF36v2™下位尺度については身体機能(10→60),日常役割機能(身体)(18.8→50),身体の痛み(0→50),全体的生活感(30→47),活力(18.8→37.5),社会的生活機能(12.5→25),日常役割機能(精神)(25→58.3),心の健康(40→50)と全ての項目において改善がみられた。義足歩行能力分類はK1→K4,10m歩行は8.2秒(132steps/min)→5.3秒(136 steps/min),50m走は最終評価時10.5秒。片脚立位時間は2.0秒未満→15.0秒以上可能であった。


【結論】

引退の時期が迫り,早期の部活復帰が必要であった野球部員の下腿切断者を担当した。多連携と競技特性を踏まえた治療展開により,退院後すぐに部活復帰が実現できた。QOLの向上には,COPMにより必要とされるパフォーマンスを聴取し,身体機能面の改善だけでなく活動・参加レベルまで考えた治療が必要であった。また,義肢製作所で自らも切断者である義肢装具士や切断後に障害がいスポーツで高みを目指すアスリートと接する機会があったことは,患者自身の具体的な目標設定と心理的安定に大きく関与したと考える。受傷直後に関わる療法士は,機能のみならず活動・参加を考慮した関わりが重要な役割の一つと考える。