第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本支援工学理学療法学会 一般演題ポスター
工学P02

Fri. May 27, 2016 4:30 PM - 5:30 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-SK-02-5] 脳性麻痺児に対して座位保持装置・車椅子を作製した経験

渡邊雅恵 (さいたま市立病院)

Keywords:補装具作製, 姿勢変化, 生活環境

【はじめに,目的】

座位保持装置・車椅子は使用者の身体的状況,介護者への配慮,生活環境への配慮の考慮が重要である。今回,脳性麻痺児の屋内用座位保持装置,屋外用車椅子作製の機会を得て,良好な結果を得たので報告する。

【方法】

脳性麻痺の6歳女児。GMFCSV,大島の分類1。気管切開,胃瘻造設。昼間は酸素投与,夜間は人工呼吸器を使用。心肺停止にて当院に入院。約2年前に屋内用座位保持装置,屋外用車椅子を作製したが成長・体調変化により不適合で使用困難だった。通院中の療育センターで作製予定だったが長期入院にて通院困難なため療育センターから情報を得て当院での作製となった。

本児は快事はリラックスし不快事は右の口唇を上にあげる・全身筋緊張亢進し四肢クローヌスが出現する。身体状況は未定頸,座位保持不可,両上肢は屈曲位で拘縮,両股膝関節は軽度屈曲拘縮,足は内反尖足著明である。

座位保持装置は採寸モールド型,ティルト機構付。座角がきつく保護者が乗せにくく短時間座位で筋緊張亢進する。木製テーブルのため肘に発赤ができた。

車椅子は背もたれ張り調節型でティルト式手押し型。人工呼吸器・痰吸引器搭載台付。座角が広く乗車しても仰臥位に近い状態だった。

本児は胃瘻注入時も含めほぼ一日中仰臥位,たまに左側臥位になる程度だった。胃瘻注入中,腸を通る際脊柱を乗り越すことが困難で消化不良を呈していた。

今回の座位保持装置・車椅子の作製に際して長時間座位確保,移乗が容易,胃瘻注入時の消化不良改善,車椅子上でおむつ交換可能を考慮した。

【結果】

マット評価では脊柱軽度C字側弯,股膝関節90度屈曲可能。Hoffer座位能力分類III。全介助の端坐位は短時間でも体幹左凸が著明だった。軽度脊柱側弯,移乗容易を考慮し背もたれ張り調節型,体幹パッドで対応した。

座位保持装置はリクライニング式にして座角変更可能となり長時間座位が可能となった。特別支援学校小学部訪問学級では座位保持装置に座りクッション張りのテーブルを使用して勉強等も行うようになった。胃瘻注入も座位保持装置上で行うようになり消化不良はやや改善された。

車椅子もリクライニング式を活用し座位になる時間も徐々に増加してきている。長時間外出時車椅子上でおむつ交換可能となり保護者の負担も減少した。

【結論】

本児は入院前まではほぼ一日中仰臥位,車椅子上も仰臥位に近い状態だった。当院での理学療法中も仰臥位,左側臥位の受け入れはよかったが右側臥位や端坐位の受け入れには時間を要した。座位保持装置,車椅子を作製することにより色々な姿勢を日常生活に取り入れることができ本児の生活のめりはりができ保護者の意識改革にもなったと思われる。

急性期病院では車椅子や座位保持装置の作製,ましてや小児に対して車椅子や座位保持装置を作製するということは皆無に等しい。今回,このような機会を与えてくださった本症例,保護者に感謝申し上げたい。