第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本支援工学理学療法学会 一般演題ポスター
工学P04

Sat. May 28, 2016 2:50 PM - 3:50 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-SK-04-4] 足首アシスト歩行装置の臨床的有効性の検討

歩行速度の改善が図れた1症例

占部直子1, 杉浦恵介1, 田島匠1, 中西貴江2, 佐藤慎一郎3 (1.社会医療法人至仁会圏央所沢病院, 2.株式会社安川電機, 3.人間総合科学大学)

Keywords:足首アシスト歩行装置, 片麻痺, 臨床的有効性

【はじめに,目的】

2014年に株式会社安川電機より開発された足首アシスト歩行装置(以下アシスト装置)は,足圧センサーの情報を基に,歩行に求められる足関節底屈・背屈の動きをモーターでアシストする機能を有している。この機能は,遊脚期の足関節背屈保持によるトゥクリアランス確保やイニシャルコンタクト時の踵接地,立脚期の重心前方移動を促し,さらに蹴り出しを補助する事が可能となり,回復期における脳卒中片麻痺患者に対する歩行能力回復の支援につながることが予想される。しかしアシスト装置を用いた研究報告はなく,その有効性についても検証されていない。そこで本研究は脳卒中片麻痺患者を対象にアシスト装置前後の歩行速度の変化を比較することによって,その有効性を検証した。

【方法】

対象者は被殻出血により右片麻痺を呈した発症から60日後の50歳代女性とした。身体機能はBrunnstrom recovery stage下肢II,歩行能力は短下肢装具と4点支持杖を使用し3動作揃え型で軽介助レベル,Function Independence Measureの移動項目は3点であり,アシスト装置使用の適応基準を満たしていた。

介入方法は期間を5日間2セットとし歩行練習を行った。患者の歩行能力に合わせ,療法士がアシスト装置の設定,歩行量,歩行時間を調整した。評価項目は介入前後に10m歩行速度,歩行率,重複歩長をそれぞれ3回測定しその平均を比較した。なお,介入期間中は他の理学療法介入は行わなかった。統計解析は,アシスト装置の有効性を検証するために介入前後の歩行速度,歩行率,重複歩長を対応あるT検定を用いた。統計解析ソフトはSPSS 22.0 for Windowsを使用し有意水準を5%とした(両側検定)。

【結果】

介入前の歩行速度は4.58±0.41m/min,介入後は61.68±4.00m/minであった。介入前後を比較した結果,介入後において有意な歩行速度の向上が認められた(p=0.001)。次に歩行速度向上の規定因子である歩行率,重複歩長を介入前後で比較した結果,歩行率は有意な改善を認め(p=0.037),重複歩長には有意差を認めなかった(p=0.084)。なお,それ以外の身体・精神機能の変化は認められなかった。

【結論】

以上の結果より,回復期の脳卒中片麻痺患者に対してアシスト装置装着による歩行練習を行った結果,装着前後において歩行速度に有意な改善を認めた。理由として,アシスト装置装着によって,遊脚期のトゥクリアランスが確保されたことや,立脚終期における股関節伸展角度の増大により,腸腰筋の伸張反射も促すことができ,歩行速度の規定因子である歩行率が変化したことが影響したものと推察された。

本研究の限界として,シングルケースであったこと,対照群を設けていないこと,ABABデザインなどのシングルケースデザインを用いなかったこと,自然治癒などの潜在的交絡因子の存在が否定出来ないことである。今後は以上の問題点に配慮し,さらにアシスト装置の有効性を検証する必要がある。