第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本支援工学理学療法学会 一般演題ポスター
工学P06

2016年5月29日(日) 10:00 〜 11:00 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-SK-06-2] 支援機器の科学的臨床評価推進に向けた文献情報データベースの構築

JRRD誌における近年の傾向

川尻みなみ1, 岡野智也1, 原田翔平2, 白銀暁3, 鎌田実4 (1.春日部中央総合病院リハビリテーション科, 2.上尾中央総合病院リハビリテーション科, 3.国立障害者リハビリテーションセンター研究所, 4.東京大学大学院新領域創成科学研究科)

キーワード:支援機器, 福祉機器, 臨床評価

【はじめに,目的】

障害者・高齢者にとって支援機器は,日常生活を助けて豊かなものにする。しかし,実際には積極的な利用は進んでいない。また,機器が利用されている場合も適正に活用されているか疑問が残る。これらの問題には様々な要因が関与しており,容易な改善が見込めない。そこで,我々は支援機器開発研究の客観的評価の不足に着目する。これまで支援機器開発の主要な研究デザインは,利用当事者の試用とその主観的評価であった。このような手法ではバイアスが入りやすく,客観的な機器の性能や効果の説得力に欠けた。今後の利用促進のため,科学性を担保したデザインによる客観的評価手法が普及する必要がある。そのために概念的な整理と共に具体例の提示が有効と考えられる。そこで我々は文献調査による臨床評価データベースの構築を目指している。これまで各種の関連資料を精査して文献調査項目を抽出,これを用いた予備調査を実施して妥当性の確認を行った。本研究は実調査の初期段階として支援機器の臨床評価研究における近年の傾向の一部を把握することである。


【方法】

文献調査の対象誌は,アメリカ退役軍人庁が1964年から発行する学術雑誌で,オンライン版が無料でダウンロード可能なJournal of Rehabilitation Research & Developmentとした。そのうち,2011年から2014年に掲載された計475本の論文を対象に調査を実施した。調査は支援機器種別,実証試験フェイズ,研究デザイン,主要なアウトカムであるエンドポイント等を整理した文献チェックシートを作成して用いた。支援機器のタイプや臨床評価の方法論等に関する情報の抽出を行い,抽出情報をエクセルシートに入力して整理,分析した。


【結果】

支援機器臨床評価に関連する研究は,72本が該当した。機器のISO分類は,医療用具1,技能訓練用具7,義肢装具44,移動機器12,家具・建具・建築設備4,コミュニケーション・情報支援用具4,操作用具2であった。実証試験のフェイズは,少数被験者によるパイロットテストの第2相が28本と多数を占め,機器の基本機能と安全性を調査する第1相が17本,市販製品の評価を行う第4相が16本,現行利用されている機器評価及び利用対象者の身体機能評価等を行う第0相が9本,販売前の最終確認として機器利用者を対象とした本格試験の第3相が2本と,パイロット研究が最も多かった。研究デザインは,群内比較試験が18件と最も多く,ランダム化比較対照試験は8件で,強力な研究デザインはあまり多くないことが把握できた。


【結論】

エンドポイントは機器や対象により多様で,選択の難しさが伺われた。現在,理学療法領域もエビデンスが重要視されるが,支援機器臨床評価に関する近年の報告は不十分で,今後より科学的な臨床評価とエビデンス構築の必要性が確認された。開発者や利用者に資する情報の提供を目指し,データベースの構築を進めていく。