[P-SK-06-6] 自助具の使用により自転車の操舵およびブレーキ操作が改善した先天性前腕欠損児
キーワード:自助具, 小児, 前腕欠損
【はじめに,目的】
出生時に身体部位の欠落がある場合や形態形成異常を示す場合を先天性欠損といい,上肢が欠損している児に対しては義手が処方される。義手装着のメリットとして,両手動作の獲得があり,これにより児はBody Imageの中に義手を取り入れやすくなると報告されている。しかし,一般的に処方される義手は手関節部の動きが固定されており,代償的な動作が必要な場合や動作の獲得に難渋する場合がある。今回,自転車の操舵およびブレーキ操作の獲得に難渋した症例に対し,自助具の作製が奏功したので経過を報告する。
【方法】
対象は左側の示指以外の手指欠損と前腕の形態形成異常を有する5歳女児であった。左肘関節は45度屈曲位で強直しており,前腕長は健側の42.2%の短断端である。4歳時に電動義手を処方されており,開閉コントロールが可能であった。児の成長と活動範囲の増加に伴い自転車での移動を必要としているものの,義手ハンド部および肘関節の強直により操舵が困難であった。また,義手による後輪ブレーキ(左)が困難であり,前輪ブレーキ(右)のみを使用していた。2つの課題に対し,まず,操舵性の改善を目的としフレキシブルホースと漏斗を組み合わせた前腕差し込み式の自助具を製作した。次に,ブレーキの改良として,健側のみのブレーキ操作にて両輪の制動が可能な機構を採用した。義手および自助具使用時の変化を比較する目的で,ビデオカメラおよび二次元動作解析ソフトKinoveaを用いた分析を行った。撮影は頭上から行い左右ハンドル操作中における頭頂偏移量,右回旋時における左上腕と義手のなす角および左上腕と自助具のなす角,左回旋時における右肘関節角度を抽出・比較した。
【結果】
左右ハンドル操作時における頭頂偏移量は義手使用時9.3cm,自助具使用時8.1cmであった。ハンドル右回旋時における左上腕と義手のなす角は屈曲41度,左上腕と自助具のなす角は屈曲8度であった。ハンドル左回旋時における右肘関節角度は義手使用時0度,自助具使用時屈曲26度であった。
【結論】
ハンドル回旋時には回旋側の上肢の折り畳み(距離の短縮)と対側のハンドルへのリーチ(距離の延長)を必要とする。一方,児は左肘関節の強直と義手ハンド部の運動制限により上記2つの動作が困難であった。そのため,義手着用時には頭頂を含む体幹全体を前後方向へ偏移させるとともに,健側の折り畳みおよびリーチを増大させることで代償していた。一方,自助具使用時にはフレキシブルホースの可動性により左上肢の折り畳み距離やリーチ距離が補償された結果,操舵時における頭頂の偏移量と健側による代償が軽減されたものと考える。以上の変化より自転車の操舵性が改善するとともに,健側上肢のみによるブレーキ操作が可能となり,安全かつ快適な動作の獲得にいたった。
出生時に身体部位の欠落がある場合や形態形成異常を示す場合を先天性欠損といい,上肢が欠損している児に対しては義手が処方される。義手装着のメリットとして,両手動作の獲得があり,これにより児はBody Imageの中に義手を取り入れやすくなると報告されている。しかし,一般的に処方される義手は手関節部の動きが固定されており,代償的な動作が必要な場合や動作の獲得に難渋する場合がある。今回,自転車の操舵およびブレーキ操作の獲得に難渋した症例に対し,自助具の作製が奏功したので経過を報告する。
【方法】
対象は左側の示指以外の手指欠損と前腕の形態形成異常を有する5歳女児であった。左肘関節は45度屈曲位で強直しており,前腕長は健側の42.2%の短断端である。4歳時に電動義手を処方されており,開閉コントロールが可能であった。児の成長と活動範囲の増加に伴い自転車での移動を必要としているものの,義手ハンド部および肘関節の強直により操舵が困難であった。また,義手による後輪ブレーキ(左)が困難であり,前輪ブレーキ(右)のみを使用していた。2つの課題に対し,まず,操舵性の改善を目的としフレキシブルホースと漏斗を組み合わせた前腕差し込み式の自助具を製作した。次に,ブレーキの改良として,健側のみのブレーキ操作にて両輪の制動が可能な機構を採用した。義手および自助具使用時の変化を比較する目的で,ビデオカメラおよび二次元動作解析ソフトKinoveaを用いた分析を行った。撮影は頭上から行い左右ハンドル操作中における頭頂偏移量,右回旋時における左上腕と義手のなす角および左上腕と自助具のなす角,左回旋時における右肘関節角度を抽出・比較した。
【結果】
左右ハンドル操作時における頭頂偏移量は義手使用時9.3cm,自助具使用時8.1cmであった。ハンドル右回旋時における左上腕と義手のなす角は屈曲41度,左上腕と自助具のなす角は屈曲8度であった。ハンドル左回旋時における右肘関節角度は義手使用時0度,自助具使用時屈曲26度であった。
【結論】
ハンドル回旋時には回旋側の上肢の折り畳み(距離の短縮)と対側のハンドルへのリーチ(距離の延長)を必要とする。一方,児は左肘関節の強直と義手ハンド部の運動制限により上記2つの動作が困難であった。そのため,義手着用時には頭頂を含む体幹全体を前後方向へ偏移させるとともに,健側の折り畳みおよびリーチを増大させることで代償していた。一方,自助具使用時にはフレキシブルホースの可動性により左上肢の折り畳み距離やリーチ距離が補償された結果,操舵時における頭頂の偏移量と健側による代償が軽減されたものと考える。以上の変化より自転車の操舵性が改善するとともに,健側上肢のみによるブレーキ操作が可能となり,安全かつ快適な動作の獲得にいたった。