第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本小児理学療法学会 一般演題ポスター
小児P01

Fri. May 27, 2016 11:50 AM - 12:50 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-SN-01-2] 18トリソミー児のNICUから自宅退院に向けて介入した一症例

中西雅哉1, 池上泰友1, 清水富男2 (1.社会医療法人愛仁会千船病院技術部リハビリテーション科, 2.社会医療法人愛仁会千船病院診療部リハビリテーション科)

Keywords:NICU, 小児理学療法, QOL

【はじめに,目的】

18トリソミーは出生児の1/6000頻度で発生し,身体の特徴として筋緊張低下,手指の重なり,揺り椅子状足底などがよくみられ,また重度の心疾患の合併や,呼吸器・消化器の異常の発生率も高い。そして1年生存率は10%未満と予後不良であるため18トリソミー児への理学療法介入の報告が少ない。今回,18トリソミー児の理学療法に関わる機会を得たのでここに報告する。


【方法】

症例:在胎31週,体重1184g,アプガースコア2/6,帝王切開にて出生した男児。家族構成は両親,祖母が家の近くに在住し,児の育児支援可能である。合併疾患は心室中隔欠損症,慢性肺疾患である。心疾患に対しては薬物療法にて管理され,呼吸管理は修正7ヶ月以降に在宅用BiPAPを使用し,介助時は人工呼吸器と酸素ボンベが必要となる。また本児の身体特徴として筋緊張低下,手指の重なり,左足関節の変形を認め,修正46週1日より理学療法を介入した。


【結果】

介入初期は筋緊張の低下による抱っこ時に後弓反張の出現し,呼吸状態も陥没呼吸が出現していた。母親は抱っこがうまくできず怖いと発言していたため,生命維持・姿勢の安定化を目的にポジショニング,抱っこ座位練習,母親へ抱っこ指導を行った。修正7ヶ月半では,児は他者の顔を見つめるという発達を得,在宅用BiPAPと児の呼吸が同調し,呼吸状態は安定した。母親より花火を病院から見たいと希望があったことから移動手段の獲得を目的に両親とともにベビーカー移乗・移動練習,階段昇降動作練習,呼吸器の扱い,そして児への配慮等を指導・実施した。さらに頸部・体幹の空間保持に不安定性があるためシーティングを行いベビーカー座位練習,頸部・体幹の抗重力位保持を促通する目的で立位練習を行った。その結果,病室より移動して花火を見ることができた。その後,在宅移行の話が進み,修正11ヶ月時,退院前訪問をPT・Ns・MSW・保健師・呼吸器販売業者とともに行い,このときの本児の発達レベルは,腹臥位での一時的な頭部の挙上動作,興味物を手指の内外転による把持,あやすと笑う等の発達がみられたためPTは車移乗方法,移動方法(階段昇降・自宅内移動)の確認,入浴動作介助,室内座位のシーティング方法を指導した。現在,退院予定が修正1歳2ヶ月時点であるため自宅退院へ向け両親や祖母だけによる外出練習を行っている。


【結論】

生命予後が不良な18トリソミーに対し今回の理学療法介入より,PTが発達評価を行い,児の発達段階に合わせた交流機会を提供することで両親と児の希望を叶え,両親と児のQOLを向上できたと考える。児の今後の経過として,退院後は当院での外来と事業所による訪問リハビリを併用しフォローする予定である。