第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本小児理学療法学会 一般演題ポスター
小児P01

Fri. May 27, 2016 11:50 AM - 12:50 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-SN-01-5] 問題行動評価法・日本語版Aberrant Behavior Checklistの対象年齢の調査

日本語版Aberrant Behavior Checklistと子どもの行動調査表を比較して

上杉雅之1, 藤井瞬1, 大浦由紀2, 石間伏勝博2, 蓬莱芳光2, 岸本はるか2, 高見かほり2, 三浦昌子2 (1.神戸国際大学, 2.株式会社セラピット)

Keywords:対象年齢, 障害児, 問題行動評価法

【はじめに,目的】

我々は問題行動検査法・日本語版Aberrant Behavior Checklist(以下,ABC-J)を用いた研究を報告してきた。しかし,ABC-Jの対象年齢は明らかにされていないことから疑問を感じていた。そこで,本報告はABC-Jと2~3歳を対象とする子どもの行動調査表(以下,CBCL)の相関を調査することでABC-Jの対象年齢を明らかにすることを目的とした。



【方法】

対象児はデイケアを利用している知的障害を有する障害児12名(男児9名・女児3名,年齢2歳~12歳3ヶ月)で,診断名は脳性麻痺,ピエール・ロバン症候群等であった。検査者は同センターに所属する理学療法士(以下PT)・保育士・看護師の3名で,個別に2つの検査法を用いて担当児を同時期に検査した。ABC-J(1項目0~3点,全58項目,0~174点)とCBCL(1項目0~2点,全100項目,0~200点)の各対象児の総得点をShapiro-Wilk検定後,Spearmanの順位相関係数およびPearsonの相関係数にて解析した。統計ソフトはSPSS ver. 20.0 for Windowsを使用し,すべての検定における有意水準はp<0.05とした。



【結果】

ABC-JとCBCLの相関係数は0.914(p<0.01),PT,看護師,保育士のみを検査者とした相関係数は,それぞれ0.937(p<0.01),0.705(p<0.05),0.243(p>0.05)であった。



【結論】

ABC-Jの使用方法は質問紙の項目に対して,「問題なし」から「大きな問題」の4段階で採点する。採点をスコアーシートに記入することで5つの問題行動を評価できる。CBCLはAchenbachらが開発した,心理社会的な適応/不適応状態を包括的に評価する。精神保健機関や学校などで利用可能である。研究報告は4500以上といわれている。項目は「あてはまらない」の0点,「ややまたは時々当てはまる」の1点,「よくあてはまる」の2点の3段階で採点する。ABC-Jは当初,知的障害支援学校の学童児を対象として使用されたことから,6歳以上が対象年齢と考えられるが,テキストには対象年齢について記載されていない。しかし,本研究の結果から2つの検査法の相関が認められた。これによりCBCLの対象年齢は2-3歳であることから,同年齢の対象児でもABC-Jの対象年齢となりうる可能性があること,さらに,ABC-JとCBCLは問題行動に対して同じように採点する可能性があることが推測された。保育士の相関の低い値は,採点が0~3点のみであり統計上の解析に問題があったためと考える。また,ABC-Jは対象をよく知る物であれば検査者はだれでもよいとなっているが,本研究において保育士は対象児の行動を問題行動として捉えてない傾向があることが示唆された。研究の限界として,対象が知的障害を伴う肢体不自由児であったことと,対象年齢が2-3歳のみでなかったことがあげられる。しかし,karabekirogluらは2つの検査法の関連性が高いと報告されているところから,今回の結果に相関があることで妥当性も高い可能性があることが推測された。