第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本小児理学療法学会 一般演題ポスター
小児P02

2016年5月27日(金) 16:30 〜 17:30 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-SN-02-1] SMAI型の小児に対するSNS機能獲得に向けた訪問リハビリ

LINEを活用した一取組み

泉智恵, 永森裕幸 (クオラクリニックせんだい)

キーワード:SMA, コミュニケーション, SNS

【はじめに,目的】

近年,急速に発達したsocial networking service(以下SNS)は「人と人とのつながりを促進・サポートするコミュニティ型の会員制のサービス」と定義づけられ,身近なコミュニケーションにとどまらず,各国の企業や政府機関等,多種多様な分野において利用がすすんでいる。今回,脊髄性筋萎縮症(以下SMA)I型を呈し,人工呼吸器を使用する女児に対し,訪問リハビリにSNS利用を取り入れることで遠隔地におけるコミュニケーションという形で活動・参加につながり,それが座位保持時間の延長という身体機能へも影響を与えるという経験をしたため,今後の可能性も踏まえここに報告する。


【方法】

SMAI型を呈した11歳女児。人工呼吸器使用し,ADL全介助で臥床傾向。栄養面は胃瘻摂取。足部内返し運動のみ自動運動可能(GMT3レベル)。対面における意思疎通は下肢のスイッチ操作にて,Let'sチャット及び伝の心を使用。遠隔地におけるコミュニケーションはiPadにてSNSの1つであるLINEを使用。しかし,文字入力の手順が多く困難であり,従来の機器で入力した画面を家族が写真で撮り,添付する介助を要する。理解表出はPVT-R3歳未満レベルである。社会との主な接点は訪問学級(週2回の授業)及び訪問リハビリ(週3回)。

期間:H27.2~H27.10までの9か月間。介入時間:1回40分,週2回

アプローチ:①モールド型坐位保持装置での坐位とベッド上背臥位にて足関節内返し運動を行えるポジショニング。②文字盤を作成し,視覚を利用した操作練習。③本人,家族,支援者によるLINEグループを作成,やり取りの実施。

評価方法:介入前後のPVT-R,下肢GMT,坐位保持時間を比較。


【結果】

PVT-Rは3歳未満と変化はみられなかったが,介入初期は単語を羅列するのみだった表出が,助詞を使った2語文程度の表出となり,自力での文字入力及びやり取りが可能となった。下肢筋力はGMT3と変化はなかったが,坐位保持時間において介入初期平均1h/日に対し,平均2h/日と延長がみられた。


【結論】

今回,PVT-Rでは大きな変化は得られなかったが,iPadの操作が可能となり,座位保持時間が延長したことにより,これまで,家族の介助を要していた遠隔地におけるコミュニケーションが自力で可能となった。この事は,在宅で介助を受ける生活が中心の本児にとって,自らが自らの意志で行える活動として心身に大きな変化を与えたのではないかと考える。また,更なるSNSの利用により積極的な社会参加も可能になると考える。在宅支援の充実により在宅生活が可能になっている重心障害児が増えつつあるが,訪問リハビリに関わる理学療法士として,身体機能レベルだけでなく,活動・参加を念頭に入れたアプローチの重要性を再認識していく必要があると考える。