[P-SN-05-4] 重症心身障害者の脊柱変形の増悪と腰椎椎間関節の変性との関係性
Keywords:脊柱変形, 椎間関節, 重症心身障害者
【はじめに,目的】
重症心身障害者(重症者)における脊柱側彎は半数以上の症例でみられ,15歳以上でCobb角40°から60°の変形を有する場合,成人を過ぎても増悪することが分かっている。さまざまな因果関係や予後予測の研究はなされているが,なぜ進行が止まらず重症化するのか機能解剖学的な知見での報告は少ない。今回,重症者の腰部脊柱の変形増悪を形態学的視点から分析を試みた。
【方法】
当院に入院する重症者82名(男性49名,女性33名,平均年齢45±7歳)を対象とした。分析方法は,椎間関節の変性,椎間関節の角度,椎体間の角度をCT(TOSHIBA,Activion16)の多断面再構成像(MPR)を用いて評価を行った。このCT画像は他診断で使用したものを用いた。評価基準は,側彎変形の頂椎椎体が第12胸椎以下に見られる症例を対象とし,Cobb角60°以上を重度変形,Cobb角20°以下を変形なしの症例と分類した。またCobb角20°から60°間の症例は軽度変形として除外し,頂椎が第11胸椎以上にある症例も除外とした。さらに健常成人者7名(男性3名,女性4名,平均年齢 63±7歳)を対照群とした。統計解析として椎間関節の変性評価は側彎変形の凸側群と凹側群,変形なし群の3群間に対して変性の有無を名義尺度の差の検定で行った。また椎間関節の角度は側彎変形あり群と変形なし群,対照群に分類し,椎体間の角度は凸側群と凹側群,対照群に分類し,それぞれ3群間の連続変数の平均値を比較した。有意水準を5%とし前提条件により検定方法の選択を行った。
【結果】
椎間関節の変性評価では,カイ二乗検定を行った結果,3群間に有意差を認め(p<0.05),多重比較の結果も,凸側群が凹側群と側彎なし群に有意差を認めた(p<0.05)。椎間関節の角度評価では,Kruskal-Wallis検定で比較し有意差を認めなかった。また椎体間の角度評価では,Welchの検定で3群間比較し有意差が認められ(p<0.05),多重比較では側彎あり群55.6±24°が側彎なし群38.3±15°と対照群37.5±13°に対して有意差を認めた(p<0.05)。
【結論】
重度の脊椎変形を有する重症者は過度に腰椎が前彎し,凸側の椎間関節に変性が多くみられる結果となった。過度の腰椎前彎は上位腰椎でcoupling motionの運動性増加が報告されており側屈による回旋をより助長する。この状態により側彎凸側の椎間関節が圧迫され関節構造が破綻し変性を誘発すると推測される。凸側の椎間関節の変性により左右の椎間関節のモーメントのバランスが崩れ,凸側の椎間関節を支点とし椎間板を作用点として凹側の椎間関節周囲の筋力が力点となる為,従来の伸展モーメントにより側屈・回旋モーメントが誘発され変形が増悪する一因になると推測した。理学療法の介入として椎間関節の変性を評価し,関節が保たれている早期から側彎凸側の椎間関節の動きを引き出すような治療計画を立てる必要があると考える。
重症心身障害者(重症者)における脊柱側彎は半数以上の症例でみられ,15歳以上でCobb角40°から60°の変形を有する場合,成人を過ぎても増悪することが分かっている。さまざまな因果関係や予後予測の研究はなされているが,なぜ進行が止まらず重症化するのか機能解剖学的な知見での報告は少ない。今回,重症者の腰部脊柱の変形増悪を形態学的視点から分析を試みた。
【方法】
当院に入院する重症者82名(男性49名,女性33名,平均年齢45±7歳)を対象とした。分析方法は,椎間関節の変性,椎間関節の角度,椎体間の角度をCT(TOSHIBA,Activion16)の多断面再構成像(MPR)を用いて評価を行った。このCT画像は他診断で使用したものを用いた。評価基準は,側彎変形の頂椎椎体が第12胸椎以下に見られる症例を対象とし,Cobb角60°以上を重度変形,Cobb角20°以下を変形なしの症例と分類した。またCobb角20°から60°間の症例は軽度変形として除外し,頂椎が第11胸椎以上にある症例も除外とした。さらに健常成人者7名(男性3名,女性4名,平均年齢 63±7歳)を対照群とした。統計解析として椎間関節の変性評価は側彎変形の凸側群と凹側群,変形なし群の3群間に対して変性の有無を名義尺度の差の検定で行った。また椎間関節の角度は側彎変形あり群と変形なし群,対照群に分類し,椎体間の角度は凸側群と凹側群,対照群に分類し,それぞれ3群間の連続変数の平均値を比較した。有意水準を5%とし前提条件により検定方法の選択を行った。
【結果】
椎間関節の変性評価では,カイ二乗検定を行った結果,3群間に有意差を認め(p<0.05),多重比較の結果も,凸側群が凹側群と側彎なし群に有意差を認めた(p<0.05)。椎間関節の角度評価では,Kruskal-Wallis検定で比較し有意差を認めなかった。また椎体間の角度評価では,Welchの検定で3群間比較し有意差が認められ(p<0.05),多重比較では側彎あり群55.6±24°が側彎なし群38.3±15°と対照群37.5±13°に対して有意差を認めた(p<0.05)。
【結論】
重度の脊椎変形を有する重症者は過度に腰椎が前彎し,凸側の椎間関節に変性が多くみられる結果となった。過度の腰椎前彎は上位腰椎でcoupling motionの運動性増加が報告されており側屈による回旋をより助長する。この状態により側彎凸側の椎間関節が圧迫され関節構造が破綻し変性を誘発すると推測される。凸側の椎間関節の変性により左右の椎間関節のモーメントのバランスが崩れ,凸側の椎間関節を支点とし椎間板を作用点として凹側の椎間関節周囲の筋力が力点となる為,従来の伸展モーメントにより側屈・回旋モーメントが誘発され変形が増悪する一因になると推測した。理学療法の介入として椎間関節の変性を評価し,関節が保たれている早期から側彎凸側の椎間関節の動きを引き出すような治療計画を立てる必要があると考える。