第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本小児理学療法学会 一般演題ポスター
小児P05

Sun. May 29, 2016 11:10 AM - 12:10 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-SN-05-6] 歩行可能な脳性麻痺児の歩行能力は身体活動量に関連するのか?

西部寿人1,2, 樋室伸顕3, 清野緒珠2, 和泉裕斗1, 井上和広1, 小塚直樹4 (1.北海道立子ども総合医療療育センター, 2.札幌医科大学大学院保健医療学研究科理学療法学・作業療法学専攻, 3.札幌医科大学医学部公衆衛生学講座, 4.札幌医科大学保健医療学部理学療法学科)

Keywords:脳性麻痺, 歩行能力, 身体活動量

【はじめに,目的】

近年,脳性麻痺を持つお子さん(Cerebral palsy:以下CP児)の運動機能維持・向上や生活習慣病の予防のために,身体活動量(Physical Activity:以下PA)の確保が重要であると報告されてきている。歩行可能なCP児においても,健常発達児と比較してPAが少ないと報告されている,しかし,粗大運動機能分類システム(Gross Motor Function Classification System:以下GMFCS)レベルIとIIの違いや,PAに与える因子は明確になっていない。

本研究の目的は,日常で独歩をしているCP児のPAと歩行能力の関連を調査する事である。

【方法】

対象は20例(平均年齢12才4か月±2才7か月)で,痙直型両麻痺14例と片麻痺6例であった,GMFCSのレベルIが13例,IIが7例であった。PAの評価は,一軸性の加速度計であるライフコーダGS4を1週間終日装着して記録した。評価内容は一日の歩数(歩),低~中強度ならびに高強度活動時間(分)とした。歩行能力評価は,ABILOCO-Kidsによる歩行遂行能力,1分間歩行とTUGによる機能的歩行能力とした。PA(一日の歩数,活動時間)と,各評価結果との関連を,SPSSのPearsonの相関係数を使用して,危険率5%として検討した。また,年齢,性別,GMFCSの各々を調整因子とした偏相関も同様に検討した。

【結果】

PAは,一日の歩数で平均12413±4679歩,低~中強度活動時間で平均102.6±30.4分,高強度活動時間で平均17.7分±11.6分であった。

PAとの相関は,一日の歩数とTUG(p=0.008,r=-0.572),ABILOCO-Kids(p=0.028,r=0.491),1分間歩行(p=0.035,r=-0.474),低~中等度の活動時間とTUG(p=0.007,r=-0.584),ABILOCO-Kids(p=0.008,r=0.577),1分間歩行(p=0.015,r=0.535),高強度の活動時間とTUG(p=0.032,r=-0.481)でみられた。年齢や性別を調整因子として偏相関を検討しても大きな変化はなかったが,GMFCSを調整因子にすると,TUGのみに一日の歩数(p=0.031,r=-0.496)と低~中等度の活動時間(p=0.025,r=-0.511)に相関がみられた。

【結論】

PAは,主にバランスを評価する機能的歩行能力評価のTUGとの関連は有るものの強い相関ではなかった。GMFCSは,歩行遂行能力(ABILOCO-Kids)や耐久性/歩行スピードなどを評価する機能的歩行能力(1分間歩行)と関連が深いため,GMFCSを調整因子にすることで,それらの評価結果とPAの相関関係は見られなくなった。

CP児のPAは,歩数や低強度~中等度の活動時間には全般的な歩行能力が関連しており,特にTUGは粗大運動機能であるGMFCSの影響を調整しても単独で関連が見られることが示された。強度の強い運動を安全に行うためにはバランスが関連する可能性も示されたが,GMFCSを調整因子とすると関連は明確にならなかった。

本研究の限界として,趣味や生活スタイルなどの参加や個人因子がPAに及ぼす影響は検討できていない。