[P-SP-02-1] 高校野球選手における投球時肩肘痛の有無が肩関節可動域に及ぼす影響
キーワード:高校野球選手, 肩関節可動域, メディカルチェック
【はじめに,目的】
当院では高校野球選手の投球障害の予防を進めていくことを目的としてメディカルチェックを実施している。投球障害の原因には様々な要因が挙げられており,多くの研究がおこなわれている。本研究では,肩関節可動域に着目し,高校野球選手における投球時痛の有無が肩関節可動域に及ぼす影響を調査することを目的とした。
【方法】
対象は,当院で実施したメディカルチェックに参加した高校野球選手118名とした。計測項目は,投球時痛の有無と投球側の肩関節可動域とした。投球時痛の有無は,質問紙を用いて評価時の投球時痛の有無ならびに疼痛の部位に関しての回答を得た。肩関節可動域は,背臥位にて徒手的に肩甲骨を固定した状態で投球側の肩関節屈曲角度,2nd肢位での肩関節外旋角度,肩関節内旋角度をゴニオメーターで計測した。その後,投球時に肩痛のみを有する選手,肘痛のみを有する選手,肩痛と肘痛の両方を有する選手,疼痛を有していない選手の4群に群分けを実施した。統計学的解析にはSPSSを使用し,投球時の肩痛または肘痛の有無での肩関節可動域の差異を検討するために,一元配置分散分析を実施し,その後の検定はTukeyの多重比較を実施した。有意水準は5%とした。
【結果】
投球時痛の有無に関して,投球時に肩痛のみを有する選手は10名(8%),肘痛のみを有する選手は5名(4%),肩痛および肘痛の両方を有する選手は13名(11%)と全体で投球時に肩肘痛を有する選手は28名(23%)であり,疼痛を有していない選手は90名(77%)であった。投球時痛の有無による肩関節可動域の差異に関して,肩関節内旋角度は,肩肘痛を有していない選手と比較して肩痛と肘痛の両方を有する選手において肩関節内旋角度が有意に減少した。肩関節屈曲角度と肩関節外旋角度には投球時痛の有無で有意差が生じなかった。
【結論】
本研究では投球時に肩痛と肘痛の両方を有する選手は肩関節内旋角度が減少しており,近年の研究とは異なる結果を示した。これまでの研究は,投球時に肩痛または肘痛を有する選手では肩関節内旋角度が減少するとの報告が多かった。しかし,近年の研究では,練習内容の変化や投球数の制限から投球時の肩痛または肘痛と肩関節内旋角度が関係しないと報告している。先行研究ではメジャーリーグなどアメリカの選手を対象としており,本研究では日本の高校野球選手を対象としていることから,練習内容の違いや投球数の制限が日本で進んでいないため,近年の先行研究と異なる結果が生じたと考えられる。野球選手に対してメディカルチェックを実施することにより,投球障害の原因を検討し予防法を考案できると考えられる。本研究において,投球時に肩痛および肘痛の両方を有する選手は肩関節内旋角度が減少することを示したことから,投球障害の予防には肩関節内旋可動域の改善が必要であることを示唆した。
当院では高校野球選手の投球障害の予防を進めていくことを目的としてメディカルチェックを実施している。投球障害の原因には様々な要因が挙げられており,多くの研究がおこなわれている。本研究では,肩関節可動域に着目し,高校野球選手における投球時痛の有無が肩関節可動域に及ぼす影響を調査することを目的とした。
【方法】
対象は,当院で実施したメディカルチェックに参加した高校野球選手118名とした。計測項目は,投球時痛の有無と投球側の肩関節可動域とした。投球時痛の有無は,質問紙を用いて評価時の投球時痛の有無ならびに疼痛の部位に関しての回答を得た。肩関節可動域は,背臥位にて徒手的に肩甲骨を固定した状態で投球側の肩関節屈曲角度,2nd肢位での肩関節外旋角度,肩関節内旋角度をゴニオメーターで計測した。その後,投球時に肩痛のみを有する選手,肘痛のみを有する選手,肩痛と肘痛の両方を有する選手,疼痛を有していない選手の4群に群分けを実施した。統計学的解析にはSPSSを使用し,投球時の肩痛または肘痛の有無での肩関節可動域の差異を検討するために,一元配置分散分析を実施し,その後の検定はTukeyの多重比較を実施した。有意水準は5%とした。
【結果】
投球時痛の有無に関して,投球時に肩痛のみを有する選手は10名(8%),肘痛のみを有する選手は5名(4%),肩痛および肘痛の両方を有する選手は13名(11%)と全体で投球時に肩肘痛を有する選手は28名(23%)であり,疼痛を有していない選手は90名(77%)であった。投球時痛の有無による肩関節可動域の差異に関して,肩関節内旋角度は,肩肘痛を有していない選手と比較して肩痛と肘痛の両方を有する選手において肩関節内旋角度が有意に減少した。肩関節屈曲角度と肩関節外旋角度には投球時痛の有無で有意差が生じなかった。
【結論】
本研究では投球時に肩痛と肘痛の両方を有する選手は肩関節内旋角度が減少しており,近年の研究とは異なる結果を示した。これまでの研究は,投球時に肩痛または肘痛を有する選手では肩関節内旋角度が減少するとの報告が多かった。しかし,近年の研究では,練習内容の変化や投球数の制限から投球時の肩痛または肘痛と肩関節内旋角度が関係しないと報告している。先行研究ではメジャーリーグなどアメリカの選手を対象としており,本研究では日本の高校野球選手を対象としていることから,練習内容の違いや投球数の制限が日本で進んでいないため,近年の先行研究と異なる結果が生じたと考えられる。野球選手に対してメディカルチェックを実施することにより,投球障害の原因を検討し予防法を考案できると考えられる。本研究において,投球時に肩痛および肘痛の両方を有する選手は肩関節内旋角度が減少することを示したことから,投球障害の予防には肩関節内旋可動域の改善が必要であることを示唆した。