第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本スポーツ理学療法学会 一般演題ポスター
スポーツP02

2016年5月27日(金) 11:50 〜 12:50 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-SP-02-2] 女子サッカー選手の身体能力

中学生と高校生の比較

井上由里, 大谷啓尊, 藤井瞬, 上杉雅之, 武政誠一 (神戸国際大学リハビリテーション学部理学療法学科)

キーワード:女子サッカー選手, 身体能力, スポーツ傷害

【はじめに,目的】

大学男女サッカー選手の傷害調査の結果,女子選手では高校時代の傷害発生率が高い傾向にあった(井上,2014)。これは発育段階に応じた筋力の発達に性差があることが影響(Timothy, 2004)すると考えられる。しかし,その他の運動能力が傷害発生に与える影響について検討された報告は少ない。本研究では女子サッカー選手の身体能力を中学生と高校生の間で比較し,高校女子選手の傷害発生リスクが高くなる要因について検討することを目的とした。

【方法】

兵庫県下のクラブチームに属する女子サッカー選手29名(中学18名,高校11名)を対象とした。Finger Floor Distance(FFD),軸足側の股関節外転・伸展等尺性最大筋力,膝関節屈曲・伸展の等速性最大ピークトルク(60°/sec)を測定,体重比を算出した。30秒間上体おこし回数,40mスプリントタイム,3歩バウンディングと左右の3歩ホッピング距離(身長比を算出),閉眼片脚立位時の静的重心動揺を測定した。またmodified Star Excursion Test(mSEBT:脚長差で除したリーチ率を算出),Yo-Yo間歇性回復テスト,ディフェンスとオフェンス能力をそれぞれ考慮した2種類のアジリティテストを実施した。これらの結果を対応のないt検定を用いて中学群と高校群の2群間で比較した。有意水準を5%とした。

【結果】

中学群と高校群の間ではFFD,下肢筋力,30秒間上体おこし回数,バウンディングおよび右足ホッピング距離,閉眼片脚立位時の静的重心動揺,mSEBT,Yo-Yo間歇性リカバリーテストには有意な差が認められなかった。一方で高校生の方が40mスプリント(p<0.05)と2種類のアジリティテスト(p<0.01)は有意に速く,左脚ホッピング距離(p<0.01)は有意に長かった。

【結論】

女子サッカー選手において中学生と高校生の間では,柔軟性,腹筋持久力,下肢筋力,静的および動的バランス能力,全身持久力には有意な差が認められなかった。しかし,40mスプリントタイムとアジリティ(敏捷性)能力には有意な差が認められた。これらのことから女子選手では先行報告のように発育段階に応じた発達は筋力だけでなく,バランス能力や全身持久力にも認められない半面,高校生になるとパフォーマンス時のスピードが高まることが明らかとなった。このような能力のギャップが女子高校生のスポーツ傷害のリスクを高める可能性が示唆された。

本研究では女子選手には軸足の傷害が多い(Hawkins,1999)ことから軸足に着目したが,高校生と中学生のホッピング能力で左右差が認められたことから,今後は軸足と非軸足の身体能力差の特性を明らかにし,スポーツ傷害との関連性について検証する必要性が示唆された。