[P-SP-02-3] 高校野球メディカルサポートにおける試合中アクシデントの発生状況とその対応について
和歌山県での18年間の活動記録から
キーワード:高校野球, メディカルサポート, 外傷
【はじめに,目的】
高校野球地方大会におけるメディカルサポート活動は全国的に拡がっており,参加する理学療法士も増加している。和歌山県では県高等学校野球連盟からの依頼に基づき,1998年より高校野球和歌山大会におけるメディカルサポートを18年間継続して行っている。現場では急なアクシデントに対する迅速な評価,適切な応急処置などの対応が重要である。本報告の目的は,これまでの和歌山県における高校野球メディカルサポート活動記録を調査し,大会での試合中アクシデントの発生状況を把握し,その現状と今後の課題を明らかにすることである。
【方法】
全国高等学校野球選手権和歌山大会(1998年から2015年までの18大会)において,理学療法士が対応した外傷・障害の処置記録から,試合中アクシデントの発生状況やその対応について調査した。
【結果】
過去18大会において理学療法士が対応した外傷・障害の総処置件数は1038件であり,そのうち試合中アクシデントに対する処置は309件(29%)であった。受傷機転としては熱中症136件(44%),デッドボール64件(20%),打球の直撃31件(10%),選手同士の交錯23件(7%)の順で多かった。また選手単独での守備・走塁中の足関節捻挫や大腿部肉離れ,肩関節脱臼等の急性外傷が22件,フェンスへの激突事例が9件あった。また脳振盪や骨折の疑いによって試合中に救急搬送された事例は8件あった。処置内容では熱中症(主に大腿・下腿の筋痙攣)や打撲に対するアイシングやストレッチングが主(90%)であったが,その他突き指や切創に対するテーピングや創処置なども行われた。
【結論】
野球の競技特性として肩・肘・腰などの障害が多いことはよく知られているが,現場でのメディカルサポートにおいては,試合中に起こりうる急なアクシデントの想定が非常に重要である。高校球児にとって夏の地方大会は甲子園大会に直結する重要な大会であり,その独特の緊張感と暑熱環境下での開催の為,選手の身体的・精神的疲労は大きいと考えられる。今回は夏期大会の調査であり熱中症への対応が多い結果となったが,一方で急性外傷も様々な受傷機転から発生していた。野球はコンタクトスポーツではないが,金属バットや硬式ボールなどの道具を使用することや,普段練習を行っているグラウンドではない大会会場という環境の違いから起こりうるアクシデントを常に想定し,準備しておかなければならない。和歌山大会では頭部外傷や脊髄損傷などの重大な外傷はこれまで発生していないが,地方大会レベルでは球場に医師が常駐していることはまだまだ少ないと考えられ,我々理学療法士に処置・対応を委ねられることが多いのが現状である。そのためには現場での経験がやはり重要であり,評価・応急処置などの技術を持ち合わせ,且つ活動を継続的に行える理学療法士を育成することが必要と考える。
高校野球地方大会におけるメディカルサポート活動は全国的に拡がっており,参加する理学療法士も増加している。和歌山県では県高等学校野球連盟からの依頼に基づき,1998年より高校野球和歌山大会におけるメディカルサポートを18年間継続して行っている。現場では急なアクシデントに対する迅速な評価,適切な応急処置などの対応が重要である。本報告の目的は,これまでの和歌山県における高校野球メディカルサポート活動記録を調査し,大会での試合中アクシデントの発生状況を把握し,その現状と今後の課題を明らかにすることである。
【方法】
全国高等学校野球選手権和歌山大会(1998年から2015年までの18大会)において,理学療法士が対応した外傷・障害の処置記録から,試合中アクシデントの発生状況やその対応について調査した。
【結果】
過去18大会において理学療法士が対応した外傷・障害の総処置件数は1038件であり,そのうち試合中アクシデントに対する処置は309件(29%)であった。受傷機転としては熱中症136件(44%),デッドボール64件(20%),打球の直撃31件(10%),選手同士の交錯23件(7%)の順で多かった。また選手単独での守備・走塁中の足関節捻挫や大腿部肉離れ,肩関節脱臼等の急性外傷が22件,フェンスへの激突事例が9件あった。また脳振盪や骨折の疑いによって試合中に救急搬送された事例は8件あった。処置内容では熱中症(主に大腿・下腿の筋痙攣)や打撲に対するアイシングやストレッチングが主(90%)であったが,その他突き指や切創に対するテーピングや創処置なども行われた。
【結論】
野球の競技特性として肩・肘・腰などの障害が多いことはよく知られているが,現場でのメディカルサポートにおいては,試合中に起こりうる急なアクシデントの想定が非常に重要である。高校球児にとって夏の地方大会は甲子園大会に直結する重要な大会であり,その独特の緊張感と暑熱環境下での開催の為,選手の身体的・精神的疲労は大きいと考えられる。今回は夏期大会の調査であり熱中症への対応が多い結果となったが,一方で急性外傷も様々な受傷機転から発生していた。野球はコンタクトスポーツではないが,金属バットや硬式ボールなどの道具を使用することや,普段練習を行っているグラウンドではない大会会場という環境の違いから起こりうるアクシデントを常に想定し,準備しておかなければならない。和歌山大会では頭部外傷や脊髄損傷などの重大な外傷はこれまで発生していないが,地方大会レベルでは球場に医師が常駐していることはまだまだ少ないと考えられ,我々理学療法士に処置・対応を委ねられることが多いのが現状である。そのためには現場での経験がやはり重要であり,評価・応急処置などの技術を持ち合わせ,且つ活動を継続的に行える理学療法士を育成することが必要と考える。