第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本スポーツ理学療法学会 一般演題ポスター
スポーツP03

Fri. May 27, 2016 4:30 PM - 5:30 PM 第10会場 (産業振興センター 2階 セミナールームB)

[P-SP-03-4] Front Walkoverにより発生した伸展型腰痛症の評価治療に対する新しい着眼点の提案

~症例報告~

大嶺俊充, 吉岡豊城, 愛洲純 (島田病院リハビリテーション課)

Keywords:Front Walkover, 伸展型腰痛症, 腰椎骨盤帯

【はじめに,目的】新体操やバトントワリングで行われるFront Walkover(以下FW)とは,両上肢支持相,両下肢離地相,インバーテッド姿勢相,ブリッジ相(片足接地相),起き上がり相により構成される技である。技の実施中は常にいずれかの四肢が床に接地していることが条件となる。FWはブリッジ相から起き上がり相(以下FW後半)において腰椎の伸展が強制されるため,伸展型腰痛症発生に影響している可能性がある。本報告では,FWによる伸展型腰痛症に対して一般的なアプローチに加え,新しい着眼点で評価治療介入を追加したことで症状の改善を認めた1例について報告する。

【方法】本症例は,全国レベルのバトントワリング部に所属する大学生(21歳女性)で,明確な受傷起点はなく,約8カ月間,FWの反復により右腰部痛の増減を繰り返し,FW不可となり受診に至った。初診時ではX線検査に異常なく,理学評価は,FW動作時痛Numeric Rating Scale(以下NRS)10,右Kemp test陰性も右腰部痛があり,右第4/5腰椎,第1仙椎(以下L4/5/S1)椎間関節に圧痛がみられ,prone instability test(以下PIT)陽性,右腰腸肋筋に筋硬結があり,圧痛,収縮時痛が存在した。また左股関節に伸展制限(前後開脚時の骨盤回旋が左股関節伸展時35°/右股関節伸展時25°)が存在した。評価所見から,FW時のL4/5/S1過可動性の抑制のために,脊椎分節間の安定性向上,左股関節伸展可動性向上,右腰腸肋筋の硬結除去を目的に3カ月間介入した。その後,FW後半の動作を再度確認すると,腰椎過伸展に加え右側屈左回旋が存在した。FW後半の動作改善のため,右下肢前方での両上肢支持相における,腰椎骨盤帯の左右非対称性アライメント(腰椎屈曲位での腰椎右側屈左回旋,右寛骨の後傾,右股関節外旋位)に着目し,その要因である右股関節屈曲制限(深屈曲時に前方に疼痛あり,外旋代償あり)に対し介入を追加した。

【結果】介入後3カ月では,Kemp test時右腰痛,椎間関節の圧痛が消失,PIT陰性,左股関節伸展可動性改善となったものの,右腰腸肋筋の硬結,FW動作時痛NRS6と残存した。その後,介入方法変更後2カ月で右股関節屈曲制限が消失,両上肢支持相での腰椎骨盤帯の左右非対称性が改善,更にFW後半での腰椎過伸展右側屈左回旋が改善し,FW動作時痛NRS0となった。

【結論】本症例は,両上肢支持相で前方支持側右股関節屈曲制限により,代償的に右腰腸肋筋を過剰収縮させ,腰椎屈曲右側屈左回旋のアライメントを呈していた。そのため,FW後半で腰椎過伸展に加え右側屈左回旋により,右L4/5/S1椎間関節への反復したストレスが,FW時の筋性,椎間関節性の疼痛に繋がっていたと推察される。FWによる伸展型腰痛症の評価治療には,腰椎過伸展の要因だけでなく,①両上肢支持相での前方支持側股関節屈曲制限,それに伴う②腰椎骨盤帯の左右非対称性,その結果起こる③FW後半の側屈回旋に着目する必要性が示唆された。