[P-SP-05-1] バスケットボール経験の有無が車椅子バスケットボールのシュート動作に及ぼす影響
キーワード:車椅子バスケットボール, シュート動作, 上肢関節運動
【はじめに,目的】
車椅子バスケットボール(Wheelchair Basketball:WB)では,近年健常者プレーヤーが増加している。WBのリングの高さは通常のバスケットボール(Basketball:BB)と同様であるため,WB初心者のシュートではボールがリングに届かないことも多い。しかし,BB経験のあるWB初心者では,BBのシュート動作の上肢関節運動を利用し,BB経験のない者に比べて高確率でシュートを成功させることが可能である。WB初心者のシュート動作について,BB経験の有無で比較した研究は報告されていない。本研究では,BB経験の有無による上肢関節運動,シュート成功率と投射条件の相違点を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は右利きの健常男性16名(BB経験あり群8名,BB経験なし群8名)とした。課題動作は車椅子上の右手でのワンハンドシュート動作とし,エンドラインから5.8 m,4.8 m,3.8 mの3条件で,各20本試行した。全対象が同一車椅子を使用した。対象の右側肩峰,上腕骨外側上顆,尺骨茎状突起,第5中手骨骨頭,大転子にマーカーを貼付し,デジタルカメラ(EXILIM EX-FC 500,CASIO社)1台を120 Hzに設定し,側方から撮影した。Image J.1.48(NIH製)でマーカーの位置を同定し,そのデータをもとに関節角度を算出した。
分析項目はボールリリース時の肩,肘,手の関節角度,角速度,シュート成功率,投射条件(動作時間,投射角度,ボール初速度)とした。ボールリリースはボールが手から離れた時点,動作時間は膝上のボールが動き始めた時点からボールリリースまでと定義した。代表値は各条件で無作為に抽出した5試行の平均値とした。
統計学的解析は,SPSS for windows ver 20.0(IBM社)を用いた。BB経験の有無とシュート距離を2要因とした二元配置分散分析を行い,事後検定は,群間比較に対応のないt検定,群内比較にBonferroniの調整を行った上で対応のあるt検定を行った。危険率5%未満を有意とした。
【結果】
シュート成功率(経験あり群,経験なし群)(%)は,3.8 m(69,36),4.8 m(58,31),5.8 m(36,7)で,各距離で経験あり群が有意に高かった(p<0.01)。ボールリリース時の肘伸展角度で交互作用を認め(p<0.05),シュート距離の増加に伴い,肘伸展角度は経験あり群では増加,経験なし群では減少した。ボール初速度も交互作用を認め,5.8 mで経験なし群の10.6 m/sに対し,経験あり群が11.8 m/sで有意に大きかった(p<0.05)。動作時間,肩屈曲角度,肩屈曲角速度,手掌屈角速度,投射角度では,シュート距離による主効果は認めたが(p<0.05),交互作用は認めなかった。
【結論】
交互作用を認めたボールリリース時の肘伸展角度とボール初速度が,シュート距離の増加に伴い経験なし群のシュート成功率を低下させる要因であると考えた。経験あり群は,ボールリリース時の肘伸展角度が,ボール初速度に影響を及ぼし,ボールをリングに届かせてシュート成功率を向上させていることが示唆された。今回得られた知見を,WBのシュート動作の指導に役立てたいと考える。
車椅子バスケットボール(Wheelchair Basketball:WB)では,近年健常者プレーヤーが増加している。WBのリングの高さは通常のバスケットボール(Basketball:BB)と同様であるため,WB初心者のシュートではボールがリングに届かないことも多い。しかし,BB経験のあるWB初心者では,BBのシュート動作の上肢関節運動を利用し,BB経験のない者に比べて高確率でシュートを成功させることが可能である。WB初心者のシュート動作について,BB経験の有無で比較した研究は報告されていない。本研究では,BB経験の有無による上肢関節運動,シュート成功率と投射条件の相違点を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は右利きの健常男性16名(BB経験あり群8名,BB経験なし群8名)とした。課題動作は車椅子上の右手でのワンハンドシュート動作とし,エンドラインから5.8 m,4.8 m,3.8 mの3条件で,各20本試行した。全対象が同一車椅子を使用した。対象の右側肩峰,上腕骨外側上顆,尺骨茎状突起,第5中手骨骨頭,大転子にマーカーを貼付し,デジタルカメラ(EXILIM EX-FC 500,CASIO社)1台を120 Hzに設定し,側方から撮影した。Image J.1.48(NIH製)でマーカーの位置を同定し,そのデータをもとに関節角度を算出した。
分析項目はボールリリース時の肩,肘,手の関節角度,角速度,シュート成功率,投射条件(動作時間,投射角度,ボール初速度)とした。ボールリリースはボールが手から離れた時点,動作時間は膝上のボールが動き始めた時点からボールリリースまでと定義した。代表値は各条件で無作為に抽出した5試行の平均値とした。
統計学的解析は,SPSS for windows ver 20.0(IBM社)を用いた。BB経験の有無とシュート距離を2要因とした二元配置分散分析を行い,事後検定は,群間比較に対応のないt検定,群内比較にBonferroniの調整を行った上で対応のあるt検定を行った。危険率5%未満を有意とした。
【結果】
シュート成功率(経験あり群,経験なし群)(%)は,3.8 m(69,36),4.8 m(58,31),5.8 m(36,7)で,各距離で経験あり群が有意に高かった(p<0.01)。ボールリリース時の肘伸展角度で交互作用を認め(p<0.05),シュート距離の増加に伴い,肘伸展角度は経験あり群では増加,経験なし群では減少した。ボール初速度も交互作用を認め,5.8 mで経験なし群の10.6 m/sに対し,経験あり群が11.8 m/sで有意に大きかった(p<0.05)。動作時間,肩屈曲角度,肩屈曲角速度,手掌屈角速度,投射角度では,シュート距離による主効果は認めたが(p<0.05),交互作用は認めなかった。
【結論】
交互作用を認めたボールリリース時の肘伸展角度とボール初速度が,シュート距離の増加に伴い経験なし群のシュート成功率を低下させる要因であると考えた。経験あり群は,ボールリリース時の肘伸展角度が,ボール初速度に影響を及ぼし,ボールをリングに届かせてシュート成功率を向上させていることが示唆された。今回得られた知見を,WBのシュート動作の指導に役立てたいと考える。