第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本スポーツ理学療法学会 一般演題ポスター
スポーツP05

Sat. May 28, 2016 10:30 AM - 11:30 AM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-SP-05-3] 静的ストレッチングと筋収縮の繰り返しがROM,stiffness,最大動的トルクに及ぼす影響

永田健太郎1, 鈴木重行1,2, 深谷泰山2, 山中英士1, 岩田全広2,3, 松尾真吾2,3, 浅井友詞3, 宮崎学4 (1.名古屋大学医学部保健学科, 2.名古屋大学大学院医学系研究科, 3.日本福祉大学健康科学部リハビリテーション学科, 4.東京大学医学部附属病院リハビリテーション部)

Keywords:静的ストレッチング, 筋収縮, 関節可動域

【はじめに,目的】

静的ストレッチング(static stretching:以下,SST)は,関節可動域(range of motion:以下,ROM)の増加やstiffnessの低下といった柔軟性改善効果が報告されており,スポーツや臨床現場において実施されている。我々は,これまでに痛みが生じる直前の伸張強度でSSTを繰り返し行うと,SST開始時の静的トルク(筋の伸張に対する抵抗値)が増加し,高い柔軟性改善効果が得られることを報告した。他方,SST後に筋収縮を負荷すると,伸張刺激に対する痛み閾値を反映する最大動的トルクがSST単独と比較して増加することを明らかにしている。これらの結果を統合すると,筋収縮負荷がもたらす最大動的トルクの増加は,SST開始時の静的トルクの増加に貢献すると考える。そして,SSTと筋収縮を繰り返し行うことでより大きな伸張強度のSSTを実施することができれば,結果的により高い柔軟性改善効果を得ることができると仮説を立てた。しかしながら,SSTと筋収縮を繰り返す介入方法が柔軟性に与える効果を詳細に検討した報告はない。そこで本研究は,SSTと筋収縮の繰り返しがROM,stiffness,最大動的トルクに及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。

【方法】

対象は健常学生10名の右ハムストリングスとした。実験群は1)SST群,2)筋収縮群,3)SST+筋収縮群の3群を設け,被験者は全ての群に24時間以上の間隔を設けてランダムに参加した。実験には等速性運動機器(BTE社製PRIMUS RS)を用いた。SST群は,大腿後面に痛みが生じる直前の膝関節伸展角度にて,60秒間のSSTを5セット(計300秒間)行った。筋収縮群は,maximum voluntary isometric contraction(以下,MVIC)の30%強度に設定した6秒間の等尺性膝屈曲運動(以下,30%MVIC)を5セット行った。SST+筋収縮群は,60秒間のSST後に6秒間の30%MVICを実施することを5セット行った。柔軟性の評価は介入前・後で行い,各介入の効果を検討した。評価指標はROM,stiffness,最大動的トルクとし,これらは測定開始肢位から膝関節最大伸展角度まで5°/秒の角速度で他動的に伸展させた際のトルク-角度曲線より求めた。stiffnessはSST前の膝関節最大伸展角度を基準(100%)にその50%の角度までの回帰直線の傾きと定義し,ROM及び最大動的トルクはそれぞれ膝関節最大伸展角度における値とした。


【結果】

ROM及び最大動的トルクはSST群,筋収縮群,SST+筋収縮群のすべての群において介入後で有意に増加した。stiffnessはSST群では介入後で有意に低下したが,筋収縮群及びSST+筋収縮群では介入前・後で有意な差は認められなかった。

【結論】

本研究の結果から,SSTと筋収縮を繰り返し行うことでROM,最大動的トルクが改善することを明らかにした。今後,SSTと筋収縮の繰り返しがstiffnessに与える影響について詳細に検討したい。