[P-SP-06-1] 膝前十字靱帯再建術前から術後の筋力の回復について
―利き足と非利き足の差異について―
キーワード:膝前十字靭帯再建術後, 膝筋力, 利き足
【目的】
上肢に利き手があるように下肢にも利き足が存在する。それぞれ使用用途が異なり,可動域や筋力が異なる傾向があると考えられる。木村らはボールを蹴る足を機能脚,踏みきり足を支持脚とし,この両方を利き足と定義している。また,三上らは,主に体を支える脚を軸足,逆側のボールを蹴る足を利き足と述べている。利き足の定義は様々であるが,今回,利き足の影響が大きいと考えられるサッカー・フットサルを対象に,ACL損傷後の利き足受傷と非利き足受傷で,術前から術後筋力の回復の差異を調査し,比較検討した。
【対象と方法】
対象は,当院で2011年1月から2014年12月までに一側の解剖学的二重束再建法によるACL再建術を施行し,ACL再建術前(術前),術後5カ月(5M),術後8カ月(8M)に筋力測定を行えた男性54例である。スポーツ種目はサッカー・フットサルであり,スポーツレベルは当院の分類に基づいてカテゴリー2(市大会から県大会レベル)であった。本研究では主にボールをよく蹴る足を利き足として定義し,受傷側が利き足である群を利き足群30例(右28例,左2例,年齢26.7±9.1歳),受傷側が利き足と異なる群を非利き足群24例(左24例,右1例,年齢27.7±10.3歳)とした。筋力は,Biodex System3を用い,術前,5M,8Mにおける,健側および患側の60deg/secで計測した。
利き足群と非利き足群において,膝伸展筋力を術前,5M,8Mで比較した。群内の比較は,患側の体重比(Nm/kg)と健患比(%)の平均値を,rep.ANOVAと多重比較法(Tukey)で行い,群間の比較は,患側体重比の平均値を対応のないt検定を用いた。データ解析は,統計ソフトSPSS statistics 23を使用し,有意水準はP<0.05とした。
【結果】
1)患側の体重比
利き足群は,術前:2.3,5M:2.6,8M:2.8であり,非利き足群は,術前:2.5,5M:2.2,8M:2.8であった。両群とも術前と5M,術前と8M,5Mと8M間に有意差があった。
2)健患比
利き足群は,術前:83.0,5M:82.4,8M:91.1であり5Mと8M,術前と8Mに有意な差があった。非利き足群は,術前:84.9,5M:83.0,8M:92.8で,差はなかった。
3)両群の患側体重比の比較
5Mのみ群間で有意差がみられた。
【結論】
今回の結果から,術後の筋力の回復過程には異なる傾向がみられた。利き足群の筋力は,時期を追って健患側共に増加するのに対し,非利き足群の筋力は,健患側共に5Mに術前より低下しその後増加する傾向がみられた。術後のリハビリにおいて,非利き足を受傷した場合に,積極的な筋力トレーニングを行う必要性が示唆された。今後利き足の分類を細分化し,受傷側との関係をより明らかにしていきたい。
上肢に利き手があるように下肢にも利き足が存在する。それぞれ使用用途が異なり,可動域や筋力が異なる傾向があると考えられる。木村らはボールを蹴る足を機能脚,踏みきり足を支持脚とし,この両方を利き足と定義している。また,三上らは,主に体を支える脚を軸足,逆側のボールを蹴る足を利き足と述べている。利き足の定義は様々であるが,今回,利き足の影響が大きいと考えられるサッカー・フットサルを対象に,ACL損傷後の利き足受傷と非利き足受傷で,術前から術後筋力の回復の差異を調査し,比較検討した。
【対象と方法】
対象は,当院で2011年1月から2014年12月までに一側の解剖学的二重束再建法によるACL再建術を施行し,ACL再建術前(術前),術後5カ月(5M),術後8カ月(8M)に筋力測定を行えた男性54例である。スポーツ種目はサッカー・フットサルであり,スポーツレベルは当院の分類に基づいてカテゴリー2(市大会から県大会レベル)であった。本研究では主にボールをよく蹴る足を利き足として定義し,受傷側が利き足である群を利き足群30例(右28例,左2例,年齢26.7±9.1歳),受傷側が利き足と異なる群を非利き足群24例(左24例,右1例,年齢27.7±10.3歳)とした。筋力は,Biodex System3を用い,術前,5M,8Mにおける,健側および患側の60deg/secで計測した。
利き足群と非利き足群において,膝伸展筋力を術前,5M,8Mで比較した。群内の比較は,患側の体重比(Nm/kg)と健患比(%)の平均値を,rep.ANOVAと多重比較法(Tukey)で行い,群間の比較は,患側体重比の平均値を対応のないt検定を用いた。データ解析は,統計ソフトSPSS statistics 23を使用し,有意水準はP<0.05とした。
【結果】
1)患側の体重比
利き足群は,術前:2.3,5M:2.6,8M:2.8であり,非利き足群は,術前:2.5,5M:2.2,8M:2.8であった。両群とも術前と5M,術前と8M,5Mと8M間に有意差があった。
2)健患比
利き足群は,術前:83.0,5M:82.4,8M:91.1であり5Mと8M,術前と8Mに有意な差があった。非利き足群は,術前:84.9,5M:83.0,8M:92.8で,差はなかった。
3)両群の患側体重比の比較
5Mのみ群間で有意差がみられた。
【結論】
今回の結果から,術後の筋力の回復過程には異なる傾向がみられた。利き足群の筋力は,時期を追って健患側共に増加するのに対し,非利き足群の筋力は,健患側共に5Mに術前より低下しその後増加する傾向がみられた。術後のリハビリにおいて,非利き足を受傷した場合に,積極的な筋力トレーニングを行う必要性が示唆された。今後利き足の分類を細分化し,受傷側との関係をより明らかにしていきたい。