第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本スポーツ理学療法学会 一般演題ポスター
スポーツP06

Sat. May 28, 2016 11:40 AM - 12:40 PM 第11会場 (産業振興センター 2階 セミナールームA)

[P-SP-06-2] 膝前十字靭帯初回再建術と再再建術の術前・術後の膝関節前方移動量について

今屋健, 藤島理恵子, 田中龍太, 戸渡敏之 (関東労災病院中央リハビリテーション部)

Keywords:膝前十字靱帯, 前方移動量, 初回再建術と再再建術

【目的】

本研究の目的は,膝前十字靭帯(ACL)初回再建術と再再建術の症例において,術前・術後の膝前方移動量の健患差を調査し,比較検討することである。


【対象と方法】

2004年1月から2014年12月までに,筆者が理学療法を担当した骨付き膝蓋腱(BTB)による一側・初回のACL再建術を施行した症例は173名,ACL再受傷後に同側BTBによる再再建術を施行した症例は112名であった。対象はこのうち術前と術後8か月以降(以下,術後)の膝前方移動量を計測できた,初回ACL再建症例95名(以下,初回再建群)とACL再再建症例53名(以下,再再建群)である。膝関節の前方移動量はKT-2000,またはKneeLAXを用いて全て筆者が計測し,患側から健側の値を引いた値(健患差)を求めた。さらに術前と術後の伸展可動域をHeel Height Difference(以下,HHD)にて,屈曲可動域を正座での踵殿間距離(以下,HH)で計測した。統計処理は対応のないt検定,ピアソンの相関係数を用いた。データ解析は統計ソフトSPSS statistics23を使用し,有意水準は5%とした。


【結果】

1.前方移動量の健患差(患側-健側)

初回再建群の前方移動量の健患差は,術前が4.7±2.2mm,術後が1.4±1.5mmであった。再再建群の健患差は,術前が5.9±2.5mm,術後が2.7±1.6mmであった。術前・術後とも再再建群の方が前方移動量の健患差が有意に大きかった。

2.ROM

HHDは初回再建群の術前で0.7±1.7cm,術後で1.0±1.7cm,再再建群の術前で0.9±1.6cm,術後で1.1±1.2cmであった。HHは初回再建群の術前で1.8±3.3cm,術後で0.1±0.5cm,再再建群の術前で1.0±2.2cm,術後で0.7±2.3cmであった。術前・術後とも両群にHHDの有意な差はなかった。HHは術後で再再建群の方が有意に大きかった。

3.相関関係

初回再建群,再再建群とも,術前と術後の前方移動量の健患差は有意な正の相関があった。また,両群ともに術前と術後のHHDに有意な相関があった。


【結論】

当院ではACL再建術後の再受傷は約3%にみられ,再受傷後はスポーツ復帰を目的に再再建術を施行することが多い。本研究より膝の前方移動量について,術前の膝前方移動量は初回再建群よりも再再建群の方が大きく,また術後も同じ傾向であった。以前,我々は初回ACL再建症例において,術前の膝前方移動量と術後の前方移動量に有意な正の相関関係があることを報告したが,今回も同様な傾向がみられた。一般にACL再建術後に再受傷した膝は,初回受傷に比べ関節包やその他の靭帯も弛緩していることが多く前方移動量が増加しやすい印象があるが,本研究の結果もそれを裏付けている。また今回,再再建術後の健患差は2mm以上となり,今後伸展可動域を確保しつつ我々の目標である2mm以内にすべく努力が必要である。本研究の限界として,再再建群の初回手術の手術手技が統一されていないことやテクニカルエラーを把握できていないこと,受傷してから手術するまでの期間が異なることが挙げられる。