[P-SP-06-3] 膝前十字靭帯再建術後の下肢における筋肉の量および質と膝伸展筋力およびパフォーマンスとの関連
Keywords:前十字靭帯, 筋量, Muscle quality
【はじめに,目的】
膝前十字靭帯(以下ACL)再建術後では術側の筋力低下が問題となる。筋力低下の要因として,ACL再建術後では筋量減少など筋肉の量による要因と,神経筋機能低下など筋肉の質による要因のそれぞれが報告されている。しかし両者を包括的に検討した報告は数少ない。またパフォーマンスとそれぞれの関連についての報告はない。機能低下の要因を検討することはリハビリテーションの内容を選択する上で重要である。そこで本研究では,ACL再建術後6ヶ月の術側下肢における筋肉の量および質と,膝伸展筋力およびパフォーマンスの関連について横断的に検討することとした。
【方法】
2011年7月から2012年9月に当院または当科関連病院にてHamstrings腱を用いたACL単独再建術を施行し,術後6ヶ月に膝関節機能および身体組成を測定し得た連続71名(男性43名,年齢22.8±8.1歳)を対象とした。除外基準は反対側受傷および術側既往歴がある者,膝蓋腱をgraftとして用いた者とした。個人特性は性別,年齢,BMI,受傷前Tegner activity scale(以下TAS)を聴取した。膝関節機能は膝伸展筋力とパフォーマンスとして片脚幅跳び距離を測定した。膝伸展筋力はMYORET RZ-450を用いて等尺90°での最大膝伸展筋力を測定した。片脚幅跳び距離は2回の施行での最大跳躍距離とした。身体組成ではYamato DF860を用い下肢筋肉量を測定した。筋肉の量の評価として,体重あたりの術側下肢筋肉量(以下%筋肉量)を算出した。筋肉の質の評価として,術側の下肢筋量あたりの膝伸展筋力(以下Muscle Quality:MQ)を算出した。統計解析として,術側膝伸展筋力と片脚幅跳び距離それぞれと各項目の関連について単変量解析により検討した。また術側膝伸展筋力と片脚幅跳び距離それぞれを従属変数とし,単変量解析にて有意な関連を示した変数を独立変数とした重回帰分析を実施した。統計はJMP ver12.0を用い,有意水準は5%未満とした。
【結果】
単変量解析の結果,術側膝伸展筋力は男性で有意に強く(男性205.3±67.9 Nm,女性118.6±29.5 Nm),BMI(r=0.57),TAS(r=0.35),%筋肉量(r=0.41)およびMQ(r=0.80)と有意な関連を認めた。術側片脚幅跳び距離は男性で有意に長く(男性1.47±0.26 m,女性1.09±0.19 m),TAS(r=0.34),%筋肉量(r=0.50)およびMQ(r=0.38)と有意な関連を認めた。重回帰分析の結果,術側膝伸展筋力では性別(β=0.14),BMI(β=0.37),%筋肉量(β=0.29)およびMQ(β=0.61)が独立した因子として抽出された(R2=0.93)。術側片脚幅跳び距離では性別(β=0.42)およびMQ(β=0.69)が独立した因子として抽出された(R2=0.47)。
【結論】
ACL再建術後6ヶ月では,術側膝伸展筋力には性別,BMIに関わらず筋肉の量および質がそれぞれ独立して関連していた。一方片脚幅跳び距離には筋肉の質は独立して関連していたが,量は独立した関連を認めなかった。本研究より,量のみならず筋肉の質の着目した介入の重要性が示唆される。
膝前十字靭帯(以下ACL)再建術後では術側の筋力低下が問題となる。筋力低下の要因として,ACL再建術後では筋量減少など筋肉の量による要因と,神経筋機能低下など筋肉の質による要因のそれぞれが報告されている。しかし両者を包括的に検討した報告は数少ない。またパフォーマンスとそれぞれの関連についての報告はない。機能低下の要因を検討することはリハビリテーションの内容を選択する上で重要である。そこで本研究では,ACL再建術後6ヶ月の術側下肢における筋肉の量および質と,膝伸展筋力およびパフォーマンスの関連について横断的に検討することとした。
【方法】
2011年7月から2012年9月に当院または当科関連病院にてHamstrings腱を用いたACL単独再建術を施行し,術後6ヶ月に膝関節機能および身体組成を測定し得た連続71名(男性43名,年齢22.8±8.1歳)を対象とした。除外基準は反対側受傷および術側既往歴がある者,膝蓋腱をgraftとして用いた者とした。個人特性は性別,年齢,BMI,受傷前Tegner activity scale(以下TAS)を聴取した。膝関節機能は膝伸展筋力とパフォーマンスとして片脚幅跳び距離を測定した。膝伸展筋力はMYORET RZ-450を用いて等尺90°での最大膝伸展筋力を測定した。片脚幅跳び距離は2回の施行での最大跳躍距離とした。身体組成ではYamato DF860を用い下肢筋肉量を測定した。筋肉の量の評価として,体重あたりの術側下肢筋肉量(以下%筋肉量)を算出した。筋肉の質の評価として,術側の下肢筋量あたりの膝伸展筋力(以下Muscle Quality:MQ)を算出した。統計解析として,術側膝伸展筋力と片脚幅跳び距離それぞれと各項目の関連について単変量解析により検討した。また術側膝伸展筋力と片脚幅跳び距離それぞれを従属変数とし,単変量解析にて有意な関連を示した変数を独立変数とした重回帰分析を実施した。統計はJMP ver12.0を用い,有意水準は5%未満とした。
【結果】
単変量解析の結果,術側膝伸展筋力は男性で有意に強く(男性205.3±67.9 Nm,女性118.6±29.5 Nm),BMI(r=0.57),TAS(r=0.35),%筋肉量(r=0.41)およびMQ(r=0.80)と有意な関連を認めた。術側片脚幅跳び距離は男性で有意に長く(男性1.47±0.26 m,女性1.09±0.19 m),TAS(r=0.34),%筋肉量(r=0.50)およびMQ(r=0.38)と有意な関連を認めた。重回帰分析の結果,術側膝伸展筋力では性別(β=0.14),BMI(β=0.37),%筋肉量(β=0.29)およびMQ(β=0.61)が独立した因子として抽出された(R2=0.93)。術側片脚幅跳び距離では性別(β=0.42)およびMQ(β=0.69)が独立した因子として抽出された(R2=0.47)。
【結論】
ACL再建術後6ヶ月では,術側膝伸展筋力には性別,BMIに関わらず筋肉の量および質がそれぞれ独立して関連していた。一方片脚幅跳び距離には筋肉の質は独立して関連していたが,量は独立した関連を認めなかった。本研究より,量のみならず筋肉の質の着目した介入の重要性が示唆される。