[P-SP-07-3] 中高生サッカー選手におけるFunctional Movement Screen得点の年代別比較
キーワード:スポーツ傷害, FMS, 成長期
【はじめに,目的】
Functional Movement Screen(FMS)の得点に関して,傷害との関係(Kieselら,2007)や性差の比較(Andersonら,2015)等が行われている。しかし成長期の中高生を対象とした報告は少なく,成長期の年代がFMS得点に及ぼす影響は不明である。本研究の目的は,中高生サッカー選手における年代別のFMS得点の特徴を明らかにすることである。
【方法】
対象はプロサッカーチーム下部組織に所属する男子中高生サッカー選手165名で,内訳は中学1年生(U13)が47名(身長154±9cm,体重43±8kg),中学2年生(U14)が44名(160±8cm,47±7kg),中学3年生(U15)が45名(167±6cm,54±8kg),高校生(U18)が29名(172±5cm,62±5kg)であった。FMSは7項目の動作をそれぞれ0-3点の4段階で採点し,合計21点満点である。採点は,正しい動作ができれば3点,代償動作であれば2点,動作ができなければ1点,痛みがあれば0点となる。7項目はDeep squat(DS),Hurdle step(HS),Inline lunge(IL),Shoulder mobility(SM),Active straight leg raise(ASLR),Trunk stability push up(TSP),Rotary stability(RS)である。HS,IL,SM,ASLR,RSは左右のうち得点の低い方を採用した。本研究では得点における年代の影響を調査することが目的であるため,痛みのあった13名を除外し,FMS総得点と項目別の得点を年代別に比較した。統計学的検討にはKruskal Wallis検定とBonferroni法を用い,有意水準は5%未満とした。
【結果】
FMS総得点の平均と標準偏差はU13からU18でそれぞれ16.9±1.9,17.1±1.7,17.2±1.5,17.7±1.4点であり,年代の有意な主効果は認めなかった。項目別ではTSP,RS,ILにおいて年代の有意な主効果を認めた。多重比較の結果,TSPではU18(2.5±0.6)がU13(1.9±0.7)とU14(2.0±0.5)より有意に高かった。RSではU13(1.8±0.4)が他年代に比べて有意に低かった。ILではU14(2.6±0.5)が他年代に比べて有意に低かった。その他DS,HS,SM,ASLRでは年代間の有意差は認めなかったが,DSは高年代ほど低得点の傾向があった。
【結論】
今回の横断調査の結果,FMS総得点はU13からU18で有意差を認めず,年代の影響を受けなかった。しかし項目別に見るとTSPは年代があがるほど得点が高い傾向にあり,RSではU13の得点が低かったことから年代の影響を考慮すべきと考える。TSPやRSは体幹の動的安定性を評価する項目であり,年代別の発育に伴う身体機能の変化の影響が考えられる。一方,ILは年代の有意な主効果を認めたものの,一定の傾向はなく年代の影響とは言い難い。またDSは有意差を認めなかったが,高年代の方が低得点の傾向にあり,TSPやRSと相反したことによってFMS総得点を相殺した可能性が考えられる。その他の項目は有意差を認めず,年代の影響を受けていなかった。今後は縦断的な追跡調査を行ない,成長に伴う得点の推移を検討していく。
Functional Movement Screen(FMS)の得点に関して,傷害との関係(Kieselら,2007)や性差の比較(Andersonら,2015)等が行われている。しかし成長期の中高生を対象とした報告は少なく,成長期の年代がFMS得点に及ぼす影響は不明である。本研究の目的は,中高生サッカー選手における年代別のFMS得点の特徴を明らかにすることである。
【方法】
対象はプロサッカーチーム下部組織に所属する男子中高生サッカー選手165名で,内訳は中学1年生(U13)が47名(身長154±9cm,体重43±8kg),中学2年生(U14)が44名(160±8cm,47±7kg),中学3年生(U15)が45名(167±6cm,54±8kg),高校生(U18)が29名(172±5cm,62±5kg)であった。FMSは7項目の動作をそれぞれ0-3点の4段階で採点し,合計21点満点である。採点は,正しい動作ができれば3点,代償動作であれば2点,動作ができなければ1点,痛みがあれば0点となる。7項目はDeep squat(DS),Hurdle step(HS),Inline lunge(IL),Shoulder mobility(SM),Active straight leg raise(ASLR),Trunk stability push up(TSP),Rotary stability(RS)である。HS,IL,SM,ASLR,RSは左右のうち得点の低い方を採用した。本研究では得点における年代の影響を調査することが目的であるため,痛みのあった13名を除外し,FMS総得点と項目別の得点を年代別に比較した。統計学的検討にはKruskal Wallis検定とBonferroni法を用い,有意水準は5%未満とした。
【結果】
FMS総得点の平均と標準偏差はU13からU18でそれぞれ16.9±1.9,17.1±1.7,17.2±1.5,17.7±1.4点であり,年代の有意な主効果は認めなかった。項目別ではTSP,RS,ILにおいて年代の有意な主効果を認めた。多重比較の結果,TSPではU18(2.5±0.6)がU13(1.9±0.7)とU14(2.0±0.5)より有意に高かった。RSではU13(1.8±0.4)が他年代に比べて有意に低かった。ILではU14(2.6±0.5)が他年代に比べて有意に低かった。その他DS,HS,SM,ASLRでは年代間の有意差は認めなかったが,DSは高年代ほど低得点の傾向があった。
【結論】
今回の横断調査の結果,FMS総得点はU13からU18で有意差を認めず,年代の影響を受けなかった。しかし項目別に見るとTSPは年代があがるほど得点が高い傾向にあり,RSではU13の得点が低かったことから年代の影響を考慮すべきと考える。TSPやRSは体幹の動的安定性を評価する項目であり,年代別の発育に伴う身体機能の変化の影響が考えられる。一方,ILは年代の有意な主効果を認めたものの,一定の傾向はなく年代の影響とは言い難い。またDSは有意差を認めなかったが,高年代の方が低得点の傾向にあり,TSPやRSと相反したことによってFMS総得点を相殺した可能性が考えられる。その他の項目は有意差を認めず,年代の影響を受けていなかった。今後は縦断的な追跡調査を行ない,成長に伴う得点の推移を検討していく。