第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本スポーツ理学療法学会 一般演題ポスター
スポーツP07

2016年5月28日(土) 14:50 〜 15:50 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-SP-07-4] 大学生サッカー選手における鼠径周辺部痛の既往歴と身体特性との関連性について

―静的な身体特性に着目した予備調査―

中山恭章1, 西口周2,3, 福谷直人2, 田代雄斗2, 城岡秀彦2, 野崎佑馬2, 平田日向子2, 山口萌2, 田坂精志朗2, 松原慶昌2, 青山朋樹2 (1.京都大学医学部人間健康科学科理学療法学専攻, 2.京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻, 3.日本学術振興会特別研究員)

キーワード:鼠径周辺部痛, サッカー, 身体特性

【はじめに,目的】

サッカー選手に特徴的な障害として鼠径周辺部痛が挙げられ,慢性化しやすい障害として問題視されている。鼠径周辺部痛は利き足に生じやすく,中学生から大学生のサッカー選手で既往歴を持つ割合が5割を超えるとの報告がある。鼠径周辺部痛と股関節に関連する臨床指標との関連性についての研究は進んでいるが,原因は特定されていない。一方で,運動連鎖の観点から鼠径周辺部痛の原因が体幹や下肢にも存在すると考えられるが,股関節に関連する臨床指標以外との関連性は検討されていない。そこで本研究では,股関節に関連する臨床指標を含め骨盤アライメントや足部の筋力に着目し,大学生サッカー選手の鼠径周辺部痛既往歴との関連性を検討した。

【方法】

本研究は京都大学サッカー部に所属する大学生サッカー選手60名(20.3±1.2歳)を対象とした。まず,アンケートにて基本的情報(身長,体重,年齢,利き足)と左右の鼠径周辺部痛の既往歴の有無について聴取した。身体特性として股関節可動域,股関節外転筋力,静止立位時の左右の骨盤前後傾角度,足趾把持力を計測した。股関節外転筋力は,hand held dynamometerを用いて測定し,骨盤前後傾斜角度は,Palpation Meterを上前腸骨棘と上後腸骨棘の下端に当て測定した。統計解析は,左右両方に鼠径周辺部痛の既往を有する者と非利き足に既往を有する者を除いた40名を対象者とした。解析対象者を利き足のみ鼠径周辺部痛の既往歴あり群と鼠径周辺部痛の既往歴なし群に群分けし,対応のないt検定を用いて2群の基本情報及び身体特性を比較した。統計学的有意水準は5%未満とした。

【結果】

対象者40名のうち,既往歴あり群は12名(30%),なし群は28名(70%)であった。t検定の結果,非利き足の股関節外転筋力が,既往歴なし群と比べてあり群の方が有意に強かった(既往歴あり群:2.2±0.4N・m/kg,なし群:1.9±0.3N・m/kg,p=0.027)。また,左右の骨盤前後傾角度や足趾把持力,その他の身体特性,基本情報については有意な差は見られなかった。

【結論】

本研究の結果,利き足に鼠径周辺部痛の既往を有する選手の方が,既往を持たない選手に比べて,非利き足の股関節外転筋力が強いことが明らかとなった。本研究では測定できていないが,先行研究により股関節外転/内転筋力の筋バランスの崩れが原因で,鼠径周辺部痛が発生すると報告されている。そのため,股関節外転/内転筋力の筋バランスに関しては,今後詳細に検討していく余地がある。一方で股関節に関連する臨床指標以外については,静止立位時の左右の骨盤前後傾角度や足趾把持力と鼠径周辺部痛の既往歴との関連性はなかった。他の身体特性を含め,静的な身体特性と鼠径周辺部痛との関連も見られなかった。よって,今後は動的な身体特性に関して,鼠径周辺部痛に起因する身体的特徴を同定する必要がある。