[P-SP-08-2] 野球選手における体幹筋の筋発達および左右非対称性
―大学生と高校生の比較―
Keywords:硬式野球, 筋肥大, 超音波
【はじめに,目的】
野球競技における体幹筋は,下肢のエネルギーを上肢に伝達することで,打撃および投球の高いパフォーマンスを達成するために極めて重要な役割を果たす。一方,打撃や投球動作は,一方向への回旋動作によって遂行されるため,体幹筋では左右で異なる筋活動が行われる。ゆえに,熟練した野球選手は,体幹筋の左右非対称性が生じる(Wachi, et al.,論文投稿中)。しかしながら,成長期にある野球選手において,このような左右非対称性が存在するかは明らかでない。近年,筋形態の評価には,磁気共鳴画像やコンピューター断層撮影の他に超音波画像(US)が用いられており,これらの中でもUSは,時間分解能や解像度が高く,非侵襲性であることから臨床場面において多用されている。これらのことから,本研究は,USを用いて,高校野球選手と大学野球選手の体幹筋の筋発達および左右非対称性の特徴を明らかにすることを目的とした。
【方法】
被験者は,整形外科的疾患をもたない高校野球選手28名(年齢:16.5±0.5歳,身長:171.4±5.1 cm,体重:65.4±6.1 kg)および大学野球選手30名(年齢:20.4±0.7歳,身長:174.1±4.0 cm,体重:72.2±6.5 kg)を対象とした。USを用いた体幹筋の筋厚の測定は,左右の腹直筋上部(RA1),腹直筋中部(RA2),腹直筋下部(RA3),外腹斜筋(EO),内腹斜筋(IO),腹横筋(TrA),多裂筋(MF)を被験筋とした。また,被験者の打撃側を利き側および対側を非利き側とし,筋厚の左右差を算出した。
【結果】
全ての被験筋の筋厚は,高校野球選手よりも大学野球選手において有意に大きかった。体重補正後の大学野球選手における筋厚の肥大率は,TrA(28.2±30.9%)とIO(27.4±27.4%)において20%を超える値が認められた。また,大学生野球選手のIO(14.7±2.8 vs. 16.5±3.6 mm)およびTrA(5.0±1.1 vs. 5.9±1.3 mm)の筋厚は,非利き側よりも利き側が有意に大きく,それぞれ9.5±15.6%および20.9±26.8%の左右差が認められた。一方,高校野球選手のRA1(13.3±1.5 vs. 13.0±1.5 mm)の筋厚は,非利き側よりも利き側が有意に大きく,2.5±6.2%の左右差が認められた。
【結論】
本研究の結果より,成長期における筋発達は競技特異的な適応をもたらすことが示された。高校野球選手において左右差が認められたRAはアウターマッスルであるのに対して,大学野球選手において左右差が認められたTrAはインナーマッスルである。また,IOはTrAと筋連結があるため機能的にはTrAと同様の働きをする。肥大率の結果から,大学野球選手の体幹筋は,とりわけIOとTrAが大きく発達していることをふまえると,成長期にはインナーマッスルが特異的に発達すると考えられる。これらの結果は,トレーニングやリハビリテーションなどの臨床現場における成長期の野球選手に対する体幹筋評価への活用が期待できる。
野球競技における体幹筋は,下肢のエネルギーを上肢に伝達することで,打撃および投球の高いパフォーマンスを達成するために極めて重要な役割を果たす。一方,打撃や投球動作は,一方向への回旋動作によって遂行されるため,体幹筋では左右で異なる筋活動が行われる。ゆえに,熟練した野球選手は,体幹筋の左右非対称性が生じる(Wachi, et al.,論文投稿中)。しかしながら,成長期にある野球選手において,このような左右非対称性が存在するかは明らかでない。近年,筋形態の評価には,磁気共鳴画像やコンピューター断層撮影の他に超音波画像(US)が用いられており,これらの中でもUSは,時間分解能や解像度が高く,非侵襲性であることから臨床場面において多用されている。これらのことから,本研究は,USを用いて,高校野球選手と大学野球選手の体幹筋の筋発達および左右非対称性の特徴を明らかにすることを目的とした。
【方法】
被験者は,整形外科的疾患をもたない高校野球選手28名(年齢:16.5±0.5歳,身長:171.4±5.1 cm,体重:65.4±6.1 kg)および大学野球選手30名(年齢:20.4±0.7歳,身長:174.1±4.0 cm,体重:72.2±6.5 kg)を対象とした。USを用いた体幹筋の筋厚の測定は,左右の腹直筋上部(RA1),腹直筋中部(RA2),腹直筋下部(RA3),外腹斜筋(EO),内腹斜筋(IO),腹横筋(TrA),多裂筋(MF)を被験筋とした。また,被験者の打撃側を利き側および対側を非利き側とし,筋厚の左右差を算出した。
【結果】
全ての被験筋の筋厚は,高校野球選手よりも大学野球選手において有意に大きかった。体重補正後の大学野球選手における筋厚の肥大率は,TrA(28.2±30.9%)とIO(27.4±27.4%)において20%を超える値が認められた。また,大学生野球選手のIO(14.7±2.8 vs. 16.5±3.6 mm)およびTrA(5.0±1.1 vs. 5.9±1.3 mm)の筋厚は,非利き側よりも利き側が有意に大きく,それぞれ9.5±15.6%および20.9±26.8%の左右差が認められた。一方,高校野球選手のRA1(13.3±1.5 vs. 13.0±1.5 mm)の筋厚は,非利き側よりも利き側が有意に大きく,2.5±6.2%の左右差が認められた。
【結論】
本研究の結果より,成長期における筋発達は競技特異的な適応をもたらすことが示された。高校野球選手において左右差が認められたRAはアウターマッスルであるのに対して,大学野球選手において左右差が認められたTrAはインナーマッスルである。また,IOはTrAと筋連結があるため機能的にはTrAと同様の働きをする。肥大率の結果から,大学野球選手の体幹筋は,とりわけIOとTrAが大きく発達していることをふまえると,成長期にはインナーマッスルが特異的に発達すると考えられる。これらの結果は,トレーニングやリハビリテーションなどの臨床現場における成長期の野球選手に対する体幹筋評価への活用が期待できる。