第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本スポーツ理学療法学会 一般演題ポスター
スポーツP08

Sat. May 28, 2016 4:00 PM - 5:00 PM 第11会場 (産業振興センター 2階 セミナールームA)

[P-SP-08-5] 投球動作が肩関節周囲筋の筋硬度に与える影響

弾性率を指標とした筋の個別の評価

爲沢透1, 中村雅俊2,3, 梅原潤2, 簗瀬康2, 中尾彩佳2, 水上優1, 市橋則明2 (1.京都大学医学部人間健康科学科, 2.京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻, 3.同志社大学スポーツ健康科学部)

Keywords:肩関節, 投球障害, 超音波エラストグラフィー

【はじめに,目的】

高負荷の運動後には筋硬度が増加することは広く知られており,経験的に野球の投球動作においても,筋硬度の増加による筋の張りを投球後に感じることは多い。しかし,投球によりどの筋が硬くなるかを示した報告は見当たらない。

先行研究においては,高強度の運動により,その筋の弾性率が上昇することが報告されている。弾性率を用いた評価法は,筋ごとに個別に測定できるという利点があるため,投球によりどの筋が硬くなるか明らかにすることができる。

研究の目的は,筋の弾性率を指標として用い,投球動作によりどの筋が硬くなるかを検討することで,どの筋に負担がかかったかを明らかにすることである。




【方法】

対象は,大学硬式野球部員で,上肢に整形外科的および神経学的疾患を有さない者14名(年齢19.3±1.1歳)とした。課題は硬式球の全力投球100回とし,課題を行うにあたり,対象者に対し,課題の前後3日間は投球練習を制限した。弾性率の測定は,投球前(以下Pre)と,投球の24時間後,48時間後の3回実施した。また,投球後の筋の張りや遅発性筋肉痛の発生には個人差があるため,解析には24時間後と48時間後の高い方の値(以下Post)を採用した。解析方法としては,初めにPreとPostを比較し,次に,Preに対しPostが有意に高値を示した筋に関して,Pre-Post間で変化率を求め,筋間で変化率を比較した。なお,PreとPostの比較ではWilcoxonの検定を用い,筋間の比較の際には,Wilcoxonの検定をBonferroni法で補正して用いた。有意水準は5%とした。

対象部位は,肩関節後面筋として4部位(棘下筋上部線維および下部線維,小円筋,三角筋後部線維),前面筋として3部位(大胸筋鎖骨部線維,胸肋部線維,腹部線維)の計7部位とし,後面筋群は肩関節90°屈曲位・肘関節90°屈曲位での肩関節内外旋中間位,前面筋は下垂位で,各筋の筋腹の弾性率を測定した。筋の弾性率の測定には,超音波診断装置(SuperSonic Imagine社製)のせん断波エラストグラフィー機能を使用し,1部位あたり3回の測定を行いその平均値を算出した。




【結果】

PreとPostの比較では,棘下筋上部線維,三角筋後部線維,および大胸筋腹部線維において,Postの弾性率が有意に高値を示した。

有意差を認めた3部位の間で変化率を比較したが,いずれも有意差は認められなかった。




【結論】

今回の研究で,肩関節周囲筋のうち棘下筋上部線維,三角筋後部線維,大胸筋腹部線維は,投球により弾性率が上昇することが明らかとなった。