第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本スポーツ理学療法学会 一般演題ポスター
スポーツP09

2016年5月29日(日) 10:00 〜 11:00 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-SP-09-4] 中学生野球選手における身長成長速度曲線と体力要素との関係 The relationship between the Height Velocity Curve and Physical Fitness in Junior High School Baseball Players

渋澤雅貴1,2, 宇賀大祐1,2, 中澤理恵1, 坂本雅昭1 (1.群馬大学大学院保健学研究科, 2.上武呼吸器科内科病院)

キーワード:野球, スポーツ傷害, 発達過程

【はじめに,目的】

スポーツ傷害の要因として関節可動域,筋力,筋柔軟性の低下等の身体的要素や,練習量,練習頻度,用具等の環境要素が挙げられる。成長期である中学生年代の傷害を予防するためには,個人の成長段階が大きく異なるため,個々の成長段階を把握することが必要となる。これまで,暦年齢と体力要素の関係における検討は報告されているが,身長成長速度曲線の成長区分と体力要素の関係について報告したものは少ない。そのため,本研究では中学生野球選手における身長成長速度曲線の成長区分と体力要素との関係について検討することを目的とした。

【方法】

地域クラブチームに所属する中学硬式野球選手71名の内,整形外科的疾患を有さない62名の選手(平均身長162.2±8.2cm)を対象とした。学年別の内訳は,1年生12名,2年生14名,3年生36名であった。小学校1年生から本調査時の学年までの期間について,過去の学校定期健康診断を元に年間の身長増加量を算出し,身長成長速度曲線を作成した。村田の分類(phaseI~IV)に準じ,本調査時点でのphaseを確定し群分けを行った。また,体力要素は,運動能力評価として,(1)握力,(2)30m走,(3)Tテスト,(4)1500m走,(5)垂直跳び,(6)片脚立位バランスの6項目,柔軟性評価として,(1)Straight Leg Raising(SLR)テスト,(2)Heel Buttock Distance(HBD),(3)Thomas test,(4)指椎間距離の4項目とした。統計学的解析にはIBM SPSS Statistics ver22を使用し,体力要素の群間比較を対応のないt検定で行った。尚,有意水準は5%とした。

【結果】

本調査時の身長成長速度曲線のphaseの内訳は,phaseI群3名(平均身長152.8±0.9cm,1年生2名,3年生1名),phaseII群27名(同160.0±7.3cm,1年生7名,2年生8名,3年生12名),phaseIII群32名(同166.3±7.2cm,1年生3名,2年生6名,3年生23名)であった。尚,phaseI群は該当者数が少なかったため統計学的分析から除外し,phaseII群およびphaseIII群を比較検討した。その結果,握力においてphaseII群で右33.7±7.7kg,左30.7±6.3kg,phaseIII群で右40.1±6.9kg,左38.0±5.7kgと,phaseIII群がphaseII群に比べ有意に高値を示した(p<0.05)。その他の項目における群間比較では,いずれも有意差を認めなかった。

【結論】

本研究において,全身筋力を示す指標とされている握力でphaseII群よりもphaseIII群で有意に高値を示したが,アジリティーや全身持久力には有意差が認められなかった。このことから,中学生年代は成長区分によって筋力の発達が異なるため,チーム全体で共通の筋力トレーニングを行うことは傷害発生に繋がる可能性があり,成長区分に合わせた設定の必要性が示唆された。また,アジリティー,全身持久力,バランスについては,成長区分によって有意差がみられなかったことから,チーム共通のトレーニングとして実施可能と考えられた。