第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本スポーツ理学療法学会 一般演題ポスター
スポーツP09

Sun. May 29, 2016 10:00 AM - 11:00 AM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-SP-09-6] 学童期における前距腓靭帯損傷の発生頻度

樫村孝憲1,4, 大歳憲一2, 鴫原智彦3,4, 渡邉和之2 (1.JA福島厚生連白河厚生総合病院, 2.福島県立医科大学整形外科学講座, 3.福島県立医科大学付属病院リハビリテーションセンター, 4.福島県理学療法士会公益事業局MST企画推進部)

Keywords:足関節捻挫, 前距腓靭帯損傷, 足関節外果裂離骨折

【背景】

バスケットボール競技は,攻守の展開が速く,ジャンプ,着地等のプレーが要求される競技特性を有し,足関節,足部の外傷や障害が発生しやすい。足関節捻挫(以下捻挫)急性期はプレーのみならず,日常生活にも高度の支障を来すことがある一方,靱帯の機能不全や足部・足関節の機能低下から慢性的な足部不安定性を生じることがあり,軽視できない傷害の一つである。

捻挫は,靱帯の損傷の有無や程度をスポーツ現場で正確に評価することは困難である。しかし近年超音波診断装置が小型・携帯化され,スポーツ現場でも損傷の有無や程度を可視化して評価することが可能となってきている。

今回我々は,メディカルチェックに参加した学童期バスケットボール選手を対象とし,アンケートを用いた捻挫の有病割合の調査と,ポータブル超音波診断装置を用いた前距腓靭帯(以下ATFL)損傷と足関節外果ATFL付着部裂離骨折(以下外果裂離骨折)の有病割合の調査を行ったので報告する。

【方法】

平成26年度福島県で開催したバスケットボールクリニックに参加した219名438足を対象とした。内訳は男子111名,女子108名で,年齢平均は11.5±1.65歳であった。捻挫既往の有無と重症度は,事前配布したアンケート用紙にて調査した。重症度は捻挫による競技支障度を用い,支障なし,軽度支障あり,高度支障ありの3段階で評価した。ATFL損傷と外果裂離骨折は,ポータブル超音波診断装置を用いて評価した。使用ソフトはJSTATとし,有意基準を5%とした。

【結果】

捻挫既往は438足中127足29.0%に認めた。捻挫既往あり群において,ATFL損傷,外果裂離骨折ともに15足11.8%存在した。一方,捻挫既往がないと答えた選手の中にも,ATFL損傷が7足2.3%,外果裂離骨折が12足3.9%認めた。

捻挫による競技支障度は,支障無し28足22.0%,軽度支障あり74足58.3%,高度支障あり25足19.7%であった。ATFL損傷は,高度支障あり群で4足16%,支障なし,軽度支障あり群で11足10.8%認められ,高度支障あり群で頻度が高い傾向が認められたが有意差はなかった。一方,外果裂離骨折は,高度支障あり群で8足32.0%,支障なし・軽度支障あり群では7足6.9%であり,高度支障あり群で有意に頻度が高かった。

【考察】

捻挫は全体の約3割の選手に認められ,ATFL損傷と外果裂離骨折は,そのうち約1割の頻度で存在していた。捻挫の既往を有していても約8割は正常であったことから,学童期の捻挫は器質的障害を伴わない軽微な損傷が多いと考えられる。一方で,高度支障あり群では,支障なし・軽度群と比較し,ATFL損傷は1.5倍,外果裂離骨折は約4倍多く存在していた。競技に高度の支障をきたすような重度の捻挫では,ATFL損傷や外果裂離骨折合併している可能性を念頭に置く必要がある。学童期において高度の支障をきたす捻挫が発生した場合は,器質的障害,特に外果裂離骨折の存在を念頭に置いて対応すべきである。