[P-SP-10-4] 着地動作の反復による脛骨前方移動量の変化
Keywords:前十字靭帯損傷, 脛骨前方移動量, 着地動作
【はじめに,目的】
前十字靭帯(以下ACL)損傷の大半はスポーツ活動中に発生し,スポーツ中の身体的変化が損傷に関与していると考えられているが一定の見解は得られていない。先行研究においても,運動課題前後での脛骨前方移動量(以下ATT)の変化を調査した研究があるが,ACL損傷の受傷機転と関連の薄い動作で検討されている。そこで今回,ACL損傷の受傷動作と関連の深いジャンプ後の着地動作を反復することにより,膝関節安定性の指標であるATTが変化するか検討し,損傷予防の一助にしたいと考えた。
【方法】
対象は下肢に愁訴の無い健常人21名42膝,平均年齢は29.7±9.2歳である。運動課題として,高さ30cmの台上より前方30cmの地点に向け,出来る限り高く飛ばず両脚着地するよう指示した。この際に上肢は胸部前面で組ませた。着地後は両側に設置したバーを使用し,両上肢でプッシュアップして下肢の筋力を出来る限り用いずに昇段した。これらの動作を8秒の間隔をあけて50回遂行し,課題前後のATTを測定した。ATTの測定はKT-2000 knee arthrometerを用い,膝関節屈曲20°で133Nの前方引き出し力を加え,運動課題前後に各々5回測定し平均値を採択した。測定は全て同一検査者で行い,級内相関係数(1,1)=0.78であった。その他の副検査項目として,課題前に東大式関節弛緩性テストの該当数,膝関節可動域測定(東大式ゴニオメーターを用いて屈曲・伸展を測定),柔軟性検査(下肢伸展位挙上角,殿踵間距離,指床間距離),課題前後での腋窩温の変化量,課題後に修正ボルグスケールを測定した。統計ソフトはR2.8.1を用い,運動課題前後でのATTの変化を対応のあるt検定,ATT変化量(課題後ATT値を課題前ATT値で除したもの)と副検査項目との相関をピアソンの相関係数及びスピアマンの順位相関係数を用いて統計学的処理した。
【結果】
ATTは,利き脚が課題前6.0±1.7mm,課題後6.7±1.4mmで有意にATTが増加した(p<0.01)。非利き脚も,課題前5.4±1.3mm,課題後6.2±1.2mmで有意にATTが増加した(p<0.01)。また,利き脚・非利き脚間には課題前・後ともに有意な差は認められなかった(p>0.05)。ATTの変化量と副検査項目との間に有意な相関は認められなかった。
【結論】
今回の研究によりジャンプ着地を繰り返すことで,ATTが増加することが分かった。課題動作の繰り返しによる,膝関節へのメカニカルストレスがATT増加の主要因であると考える。しかし,今回の副検査項目からはATT増加量を決定する要因を見出すことが出来なかった。今後,ACL損傷の危険因子とされている全身関節弛緩性を有する者やACL損傷者の健側などで調査することで,何かしらの関連性が浮き彫りとなる可能性がある。
前十字靭帯(以下ACL)損傷の大半はスポーツ活動中に発生し,スポーツ中の身体的変化が損傷に関与していると考えられているが一定の見解は得られていない。先行研究においても,運動課題前後での脛骨前方移動量(以下ATT)の変化を調査した研究があるが,ACL損傷の受傷機転と関連の薄い動作で検討されている。そこで今回,ACL損傷の受傷動作と関連の深いジャンプ後の着地動作を反復することにより,膝関節安定性の指標であるATTが変化するか検討し,損傷予防の一助にしたいと考えた。
【方法】
対象は下肢に愁訴の無い健常人21名42膝,平均年齢は29.7±9.2歳である。運動課題として,高さ30cmの台上より前方30cmの地点に向け,出来る限り高く飛ばず両脚着地するよう指示した。この際に上肢は胸部前面で組ませた。着地後は両側に設置したバーを使用し,両上肢でプッシュアップして下肢の筋力を出来る限り用いずに昇段した。これらの動作を8秒の間隔をあけて50回遂行し,課題前後のATTを測定した。ATTの測定はKT-2000 knee arthrometerを用い,膝関節屈曲20°で133Nの前方引き出し力を加え,運動課題前後に各々5回測定し平均値を採択した。測定は全て同一検査者で行い,級内相関係数(1,1)=0.78であった。その他の副検査項目として,課題前に東大式関節弛緩性テストの該当数,膝関節可動域測定(東大式ゴニオメーターを用いて屈曲・伸展を測定),柔軟性検査(下肢伸展位挙上角,殿踵間距離,指床間距離),課題前後での腋窩温の変化量,課題後に修正ボルグスケールを測定した。統計ソフトはR2.8.1を用い,運動課題前後でのATTの変化を対応のあるt検定,ATT変化量(課題後ATT値を課題前ATT値で除したもの)と副検査項目との相関をピアソンの相関係数及びスピアマンの順位相関係数を用いて統計学的処理した。
【結果】
ATTは,利き脚が課題前6.0±1.7mm,課題後6.7±1.4mmで有意にATTが増加した(p<0.01)。非利き脚も,課題前5.4±1.3mm,課題後6.2±1.2mmで有意にATTが増加した(p<0.01)。また,利き脚・非利き脚間には課題前・後ともに有意な差は認められなかった(p>0.05)。ATTの変化量と副検査項目との間に有意な相関は認められなかった。
【結論】
今回の研究によりジャンプ着地を繰り返すことで,ATTが増加することが分かった。課題動作の繰り返しによる,膝関節へのメカニカルストレスがATT増加の主要因であると考える。しかし,今回の副検査項目からはATT増加量を決定する要因を見出すことが出来なかった。今後,ACL損傷の危険因子とされている全身関節弛緩性を有する者やACL損傷者の健側などで調査することで,何かしらの関連性が浮き彫りとなる可能性がある。