第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本スポーツ理学療法学会 一般演題ポスター
スポーツP11

2016年5月29日(日) 11:10 〜 12:10 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-SP-11-1] 中・高年期の野球選手における傷害調査

田中直樹1, 我妻浩二1, 榊原加奈1, 村上純一1, 石渕重充1, 村本勇貴1, 岡田尚之2, 岩本航2 (1.江戸川病院スポーツリハビリテーション, 2.江戸川病院スポーツ医学科)

キーワード:中・高年期, 野球, 傷害調査

【はじめに,目的】

野球は,本邦における競技人口が約810万人とされ,幅広い年代で行われている。学童期や高校野球選手に対する研究報告は多いが,中・高年期の野球傷害に関する報告はほとんどみられない。今回我々は,中・高年期以上で構成される1チームについて傷害調査を行う機会を得た。そこで本研究は中・高年期野球選手における傷害発生件数と程度を調査すること,および野球経験年数,野球ブランク年数と投球障害の関係を明らかにすることを目的とした。

【方法】

対象は,東京都還暦軟式野球連盟所属の野球選手23名(平均年齢67.4±5.6歳)とし,調査は配票による自記式アンケートとした。調査項目は,①「野球経験年数(トータル年数,野球のブランク年数)」,②「野球に起因する傷害」,③「②の野球への支障度合い(VAS)」,④「野球以外に起因する傷害・疾患」,⑤「④の野球への支障度合い(VAS)」,⑥「現在野球を行う理由に関する自由記載」の6項目とした。また,アンケート調査項目④で肩肘痛を有していると回答した13名の「野球における支障度合い」と「経験年数」,「野球のブランク」との関係をpearsonの積率相関係数を用い検討した。統計解析は統計ソフトR ver.2.13.0を用い,有意水準は5%とした。

【結果】

①野球経験トータル年数は平均36.1±19.5年(±標準偏差)であった。野球経験者のうち現在野球を行うまでのブランク年数は平均25.2±14.5年(±標準偏差)であった。②野球に起因する傷害は合計18/23名で,肩・肘合計13件,腰痛3件,下肢障害3件,外傷では慢性硬膜下血腫1件,手指骨折1件であった。③野球に起因する傷害による野球への支障度合いは平均14.4±12.7mm(±標準偏差)であった。④野球に起因しない傷害・疾患を有すものは合計12/23名で腰痛3件,膝痛2件,喘息2件,痛風1件,前立腺疾患2件,心房細動1件,その他3件であった。⑤野球に起因しない傷害や疾患の野球への支障度合いは平均11.0±9.6mm(±標準偏差)であった。⑥現在野球を行う理由については,生きがいが5件,ストレス発散が5件,健康のためが4件であり,その他は仲間意識,社会交流等の回答があった。「野球経験年数」および「野球のブランク年数」と「肩肘痛による野球への支障度合い」との関係はそれぞれr=0.65(p<0.05),r=0.69(p<0.05)と正の相関を認めた。

【結論】

野球に起因する傷害は18/23名(78%)が有し,肩肘痛においては,野球経験年数,野球ブランク年数と野球への支障度合いについて正の相関を認め,今後身体機能との関係を明らかにする必要性がある。野球に起因しない傷害・疾患は12/23名(52%)が有し,年代を考慮した参加基準の指標や疾患の重症度の把握が必要であると考えられる。