[P-SP-11-5] オーストラリアンフットボールチームにおけるスポーツトレーナーとしての勤務経験
Keywords:オーストラリアンフットボール, 臨床パターン, 理学的検査
【はじめに,目的】
今回,オーストラリアンフットボールチームにてスポーツトレーナーとして勤務する機会を得ることができ,スポーツ現場における理学療法士の役割について洞察を深めることができたので,考察を加え報告する。
【方法】
対象は南オーストラリア州5部リーグに属するチーム(A,Bグレードの2チーム)に在籍する約80名の男子選手であった。勤務期間は2015年3月から8月であり,週1回の試合と練習にそれぞれ帯同し,必要に応じて評価・応急処置・治療を行った。評価には問診,整形外科テストを含む理学的検査を用いた。筆者が対応した損傷部位と対応内容についての量的データを提示し,勤務経験を通して得られた洞察を含めて質的・記述的な検討を行う。なお,特定の愁訴が無い場合(予防的テーピングと競技力向上目的のマッサージ)は内訳に含めない。
【結果】
帯同した試合は計40試合,練習は計21回であった。主訴(計212件)のうち最も多かった部位は大腿(60件,26%),次いで下腿(30件,14%),さらに肩関節と腰部(ともに19件,9%)であった。最も頻度が高かったのはハムストリング損傷であり,これは2014年のプロリーグにおける損傷の統計データと一致していた(Orchard, et al., 2015)。実施した対応は計314件で,マッサージ(88件,26%)が最も多く,次いで患者教育(83件,25%),アイシング(37件,11%),運動処方(34件,10%)が多かった。試合では急性傷害の対応が多く,練習では慢性過用性障害の対応と試合での急性傷害のフォローアップが大多数を占めた。同日に医師の診察を要したのは3件(肘関節脱臼1件と顔面創傷2件)であった。
筆者にとってスポーツ現場で働くことは今回が初めての経験であったが,2014年にオーストラリアの大学院にて学んだスポーツ損傷に関する臨床パターンと整形外科テストを含めた系統的な理学的検査の知識・技術が非常に役に立ったと感じた。臨床パターンとはある疾患に関する構造化された知識であり,患者から得られたデータから瞬時に仮説を生成することで,効率的な臨床実践を可能にする(Jones, et al., 2008)。試合においては急性傷害の対応が多く,迅速な判断を要するため様々な疾患の臨床パターンに通じていることが重要であると感じた。また,スポーツ現場でみられる損傷において侵害受容性メカニズムが優位である場合は多いと推察され(Puentedura & Louw, 2012),構造的診断を下すための整形外科テストを含めた理学的検査の重要性は高いと考える。責任組織を可能な限り同定することで,選手に対して説明・教育を行う際の説得力が増し,より良好な信頼関係とコンプライアンスが得られることを実感した。
【結論】
今回の経験から,スポーツ損傷に関する臨床パターンと整形外科テストを含めた系統的な理学的検査に関する知識・技術の重要性を実感した。
今回,オーストラリアンフットボールチームにてスポーツトレーナーとして勤務する機会を得ることができ,スポーツ現場における理学療法士の役割について洞察を深めることができたので,考察を加え報告する。
【方法】
対象は南オーストラリア州5部リーグに属するチーム(A,Bグレードの2チーム)に在籍する約80名の男子選手であった。勤務期間は2015年3月から8月であり,週1回の試合と練習にそれぞれ帯同し,必要に応じて評価・応急処置・治療を行った。評価には問診,整形外科テストを含む理学的検査を用いた。筆者が対応した損傷部位と対応内容についての量的データを提示し,勤務経験を通して得られた洞察を含めて質的・記述的な検討を行う。なお,特定の愁訴が無い場合(予防的テーピングと競技力向上目的のマッサージ)は内訳に含めない。
【結果】
帯同した試合は計40試合,練習は計21回であった。主訴(計212件)のうち最も多かった部位は大腿(60件,26%),次いで下腿(30件,14%),さらに肩関節と腰部(ともに19件,9%)であった。最も頻度が高かったのはハムストリング損傷であり,これは2014年のプロリーグにおける損傷の統計データと一致していた(Orchard, et al., 2015)。実施した対応は計314件で,マッサージ(88件,26%)が最も多く,次いで患者教育(83件,25%),アイシング(37件,11%),運動処方(34件,10%)が多かった。試合では急性傷害の対応が多く,練習では慢性過用性障害の対応と試合での急性傷害のフォローアップが大多数を占めた。同日に医師の診察を要したのは3件(肘関節脱臼1件と顔面創傷2件)であった。
筆者にとってスポーツ現場で働くことは今回が初めての経験であったが,2014年にオーストラリアの大学院にて学んだスポーツ損傷に関する臨床パターンと整形外科テストを含めた系統的な理学的検査の知識・技術が非常に役に立ったと感じた。臨床パターンとはある疾患に関する構造化された知識であり,患者から得られたデータから瞬時に仮説を生成することで,効率的な臨床実践を可能にする(Jones, et al., 2008)。試合においては急性傷害の対応が多く,迅速な判断を要するため様々な疾患の臨床パターンに通じていることが重要であると感じた。また,スポーツ現場でみられる損傷において侵害受容性メカニズムが優位である場合は多いと推察され(Puentedura & Louw, 2012),構造的診断を下すための整形外科テストを含めた理学的検査の重要性は高いと考える。責任組織を可能な限り同定することで,選手に対して説明・教育を行う際の説得力が増し,より良好な信頼関係とコンプライアンスが得られることを実感した。
【結論】
今回の経験から,スポーツ損傷に関する臨床パターンと整形外科テストを含めた系統的な理学的検査に関する知識・技術の重要性を実感した。