[P-SP-12-5] 水泳選手における腰痛が胸腰椎,肩甲骨の可動性に及ぼす影響
Keywords:腰痛, 胸椎後彎角, 肩甲骨上方回旋
【はじめに,目的】
水泳選手の障害では腰痛が最も多く,水泳特有のStream Line(両手足が伸びた状態で水中での抵抗を軽減するための肢位:以下SL)時の腰椎の過度な前彎が関与すると報告されている。その主な要因として肩甲骨の可動性低下が挙げられるが,腰痛とこれらの関係については不明である。本研究の目的は水泳選手における腰痛が胸椎後彎角,腰椎前彎角および肩甲骨の可動性に及ぼす影響を明らかにすることである。
【方法】
対象は水泳部に在籍する男子大学生22名(非腰痛群15名,腰痛群7名)とした。胸腰椎の角度は上肢下垂位,SL時の各椎間関節の前後彎をスパイナルマウスⓇ(index社製)を用いて測定し,また2肢位間の変化量も求めた。肩甲骨の可動性はテープメジャーを用い上肢下垂位,SL時の肩甲骨の位置を測定し,上肢下垂位とSL時との差を算出した。その可動性は第7頸椎棘突起(O),肩甲棘内側端(A),肩甲骨下角(B)を骨指標とし,Oの垂線とA,Bの水平線が交わる点をそれぞれA´,B´と定め,2点間距離の増減(OA'距離:肩甲骨拳上・下制,AA'距離:内外転,OB'距離は上方・下方回旋,BB'距離:上方回旋)で判断した。疼痛は直線100mmの視覚的アナログスケールを用いて測定した。統計学的解析は非腰痛群と腰痛群との間で肩甲骨の可動性,胸腰椎の角度,および変化量を比較するためt検定を用いた。また疼痛と各測定項目との関連性を検証するためにPearsonの積率相関係数を求めた。
【結果】
胸椎後弯角,腰椎前弯角は上肢下垂位,SL時とも2群間に有意差は認められなかった。胸椎後彎角変化量では腰痛群が非腰痛群に対して有意に低値を示し(-6.57±6.97 vs -15.67±6.98;p=0.013),疼痛との間に有意な正の相関関係を認めた(r=0.457,p<0.05)。腰椎前彎角及び変化量は2群間での有意差や疼痛との相関関係は認められなかった。
肩甲骨の可動性はOB´, BB´距離で腰痛群が非腰痛群に対して有意に低値を示した(それぞれ-2.07±3.26vs -4.10±1.70;p=0.017,4.14±2.17 vs 6.27±1.48;p=0.027)。また疼痛とOB´距離との間に有意な正の相関,BB´距離との間に有意な負の相関を認めた(それぞれr=0.531,r=-0.472,p<0.05)。
【結論】
水泳選手の腰痛は上肢下垂位からSLをとる際,胸椎後弯角の変化量や肩甲骨の可動性であるOB'およびBB'が低値を示したことから,胸椎伸展と肩甲骨上方回旋の可動性を低下させることが明らかとなった。またこれらは腰痛との相関関係が認められたことから,胸椎や肩甲骨の可動性低下は更なる腰痛の発現など悪循環に陥る可能性もある。したがって理学療法においては腰痛自体の管理に加え,胸椎や肩甲骨に対するアプローチも必要であることが示唆された。
水泳選手の障害では腰痛が最も多く,水泳特有のStream Line(両手足が伸びた状態で水中での抵抗を軽減するための肢位:以下SL)時の腰椎の過度な前彎が関与すると報告されている。その主な要因として肩甲骨の可動性低下が挙げられるが,腰痛とこれらの関係については不明である。本研究の目的は水泳選手における腰痛が胸椎後彎角,腰椎前彎角および肩甲骨の可動性に及ぼす影響を明らかにすることである。
【方法】
対象は水泳部に在籍する男子大学生22名(非腰痛群15名,腰痛群7名)とした。胸腰椎の角度は上肢下垂位,SL時の各椎間関節の前後彎をスパイナルマウスⓇ(index社製)を用いて測定し,また2肢位間の変化量も求めた。肩甲骨の可動性はテープメジャーを用い上肢下垂位,SL時の肩甲骨の位置を測定し,上肢下垂位とSL時との差を算出した。その可動性は第7頸椎棘突起(O),肩甲棘内側端(A),肩甲骨下角(B)を骨指標とし,Oの垂線とA,Bの水平線が交わる点をそれぞれA´,B´と定め,2点間距離の増減(OA'距離:肩甲骨拳上・下制,AA'距離:内外転,OB'距離は上方・下方回旋,BB'距離:上方回旋)で判断した。疼痛は直線100mmの視覚的アナログスケールを用いて測定した。統計学的解析は非腰痛群と腰痛群との間で肩甲骨の可動性,胸腰椎の角度,および変化量を比較するためt検定を用いた。また疼痛と各測定項目との関連性を検証するためにPearsonの積率相関係数を求めた。
【結果】
胸椎後弯角,腰椎前弯角は上肢下垂位,SL時とも2群間に有意差は認められなかった。胸椎後彎角変化量では腰痛群が非腰痛群に対して有意に低値を示し(-6.57±6.97 vs -15.67±6.98;p=0.013),疼痛との間に有意な正の相関関係を認めた(r=0.457,p<0.05)。腰椎前彎角及び変化量は2群間での有意差や疼痛との相関関係は認められなかった。
肩甲骨の可動性はOB´, BB´距離で腰痛群が非腰痛群に対して有意に低値を示した(それぞれ-2.07±3.26vs -4.10±1.70;p=0.017,4.14±2.17 vs 6.27±1.48;p=0.027)。また疼痛とOB´距離との間に有意な正の相関,BB´距離との間に有意な負の相関を認めた(それぞれr=0.531,r=-0.472,p<0.05)。
【結論】
水泳選手の腰痛は上肢下垂位からSLをとる際,胸椎後弯角の変化量や肩甲骨の可動性であるOB'およびBB'が低値を示したことから,胸椎伸展と肩甲骨上方回旋の可動性を低下させることが明らかとなった。またこれらは腰痛との相関関係が認められたことから,胸椎や肩甲骨の可動性低下は更なる腰痛の発現など悪循環に陥る可能性もある。したがって理学療法においては腰痛自体の管理に加え,胸椎や肩甲骨に対するアプローチも必要であることが示唆された。