[P-TK-01-1] 地域在住高齢者における生活空間別の運動機能・ソーシャルネットワークの比較
Keywords:地域在住高齢者, 生活空間, ネットワーク
【はじめに,目的】
厚生労働省は,「これからの介護予防」の中で,これまでの介護予防の問題点として,心身機能改善に偏りがちであったことを挙げている。そして,これからの介護予防の考え方として,高齢者を取り巻く環境を含めたアプローチや人と人とのつながりを通じ,参加者や集いの場を拡大することなど活動・参加に焦点をあてた取り組みを推奨している。しかし,介護予防の先行研究の中で,心身機能とともに活動・参加に焦点をあてることの重要性を示したものは未だ少ない。活動・参加の評価として,身体・生活・認知機能維持に重要とされる身体活動量を生活空間という概念で捉えたLife-Space Assesment(LSA)がある。LSAに関する先行研究において,自立度の高い地域在住高齢者を対象に,運動機能,活動・参加の基盤となるソーシャルネットワークの関係を比較した報告は少ない。そのため,本研究の目的は,自立度の高い地域在住高齢者において生活空間別に運動機能,ソーシャルネットワークを比較することとした。
【方法】
平成27年度に当院が関わった介護予防事業(一次予防)に参加した認知機能に問題がなく,屋外歩行自立レベルの地域高齢者71名(男性14名・女性57名,平均年齢76.0±5.0歳)を対象とした。測定項目は,生活空間の評価としてLSA,運動機能として,握力,Timed Up & Go Test(TUGT),歩行速度,ソーシャルネットワークとして,Lubben Social Network Scale-6(LSNS-6)を実施した。LSAの得点により,①120点満点(27名),②119-84点(27名),③83点以下(17名)の3群に分けた。統計学的に,郡間比較には一元配置分散分析,Kraskal-wallis検定を行い,多重比較法はScheffe法を用いた。有意水準は5%とし,統計学処理には,統計ソフトJSTATを使用した。
【結果】
全対象のLSAの平均値は99.1±24.6点であった。運動機能は,TUGTのみ,群間に主効果(p=0.0382)を認めたが,多重比較では有意な差を認めなかった。LSNS-6の平均値は,①21.5±6.9点,②14.2±6.6点,③13.7±6.4点であり,群間に主効果(p=0.0002)を認め,多重比較の結果,①と②・③の間に有意な差を認めた(p<0.01)。
【結論】
運動機能は3群間に有意な差はみられなかったが,LSNS-6は,①のみ有意に高いという量的反応性が認められた。先行研究では,生活空間と運動機能は関連するとされているが,本研究の対象は生活空間,運動機能ともに先行研究の平均値より高かったことがこの結果につながったと推察される。本研究の結果より,生活空間の広い者は良好なソーシャルネットワークをもつことが示された。これらの結果から,自立度の高い地域在住高齢者の介護予防を考える上では,運動機能とともに,活動・参加の基盤となるソーシャルネットワークに着目することの重要性が示唆された。
厚生労働省は,「これからの介護予防」の中で,これまでの介護予防の問題点として,心身機能改善に偏りがちであったことを挙げている。そして,これからの介護予防の考え方として,高齢者を取り巻く環境を含めたアプローチや人と人とのつながりを通じ,参加者や集いの場を拡大することなど活動・参加に焦点をあてた取り組みを推奨している。しかし,介護予防の先行研究の中で,心身機能とともに活動・参加に焦点をあてることの重要性を示したものは未だ少ない。活動・参加の評価として,身体・生活・認知機能維持に重要とされる身体活動量を生活空間という概念で捉えたLife-Space Assesment(LSA)がある。LSAに関する先行研究において,自立度の高い地域在住高齢者を対象に,運動機能,活動・参加の基盤となるソーシャルネットワークの関係を比較した報告は少ない。そのため,本研究の目的は,自立度の高い地域在住高齢者において生活空間別に運動機能,ソーシャルネットワークを比較することとした。
【方法】
平成27年度に当院が関わった介護予防事業(一次予防)に参加した認知機能に問題がなく,屋外歩行自立レベルの地域高齢者71名(男性14名・女性57名,平均年齢76.0±5.0歳)を対象とした。測定項目は,生活空間の評価としてLSA,運動機能として,握力,Timed Up & Go Test(TUGT),歩行速度,ソーシャルネットワークとして,Lubben Social Network Scale-6(LSNS-6)を実施した。LSAの得点により,①120点満点(27名),②119-84点(27名),③83点以下(17名)の3群に分けた。統計学的に,郡間比較には一元配置分散分析,Kraskal-wallis検定を行い,多重比較法はScheffe法を用いた。有意水準は5%とし,統計学処理には,統計ソフトJSTATを使用した。
【結果】
全対象のLSAの平均値は99.1±24.6点であった。運動機能は,TUGTのみ,群間に主効果(p=0.0382)を認めたが,多重比較では有意な差を認めなかった。LSNS-6の平均値は,①21.5±6.9点,②14.2±6.6点,③13.7±6.4点であり,群間に主効果(p=0.0002)を認め,多重比較の結果,①と②・③の間に有意な差を認めた(p<0.01)。
【結論】
運動機能は3群間に有意な差はみられなかったが,LSNS-6は,①のみ有意に高いという量的反応性が認められた。先行研究では,生活空間と運動機能は関連するとされているが,本研究の対象は生活空間,運動機能ともに先行研究の平均値より高かったことがこの結果につながったと推察される。本研究の結果より,生活空間の広い者は良好なソーシャルネットワークをもつことが示された。これらの結果から,自立度の高い地域在住高齢者の介護予防を考える上では,運動機能とともに,活動・参加の基盤となるソーシャルネットワークに着目することの重要性が示唆された。