第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本地域理学療法学会 一般演題ポスター
地域P01

2016年5月27日(金) 11:50 〜 12:50 第11会場 (産業振興センター 2階 セミナールームA)

[P-TK-01-3] 専門職連携の効果―課題別分析―

塩澤和人1, 大部令絵2, 田口孝行3 (1.日本リハビリテーション専門学校理学療法学科, 2.埼玉県立大学保健医療福祉学部大学間連携共同教育推進事業担当, 3.埼玉県立大学保健医療福祉学部理学療法学科)

キーワード:専門職連携, 連携効果, 課題別

【はじめに,目的】

専門職連携の重要性が指摘されているが,連携の効果を検証した報告は少ない。より良いチーム医療サービスを提供するために連携の効果を検証する必要がある。

本研究では,連携の重要性が指摘されている課題の一部を選択し,その課題別に連携による医療専門職の主観的に感じる効果を明らかにすることを目的とした。

【方法】

対象はA病院の保健医療福祉関連専門職191名とした。連携可能と思われる4つの課題(患者のゴール設定,退院支援,褥瘡予防,転倒・転落予防)を選択し,課題毎に1)連携が図れていると思うか(①思う,②思わない),2)連携による効果(①課題解決,②患者・家族の満足,③スタッフの満足,④作業の効率向上,⑤課題解決に向けた目標・計画の共有と実施)(複数回答可)を調査した。

分析方法について,連携状況を明らかにするために,「連携が図れていると思う」の回答者割合を課題別に算出した。また,連携の効果を課題別に明らかにするために,「連携が図れていると思う」の回答者について連携による効果(①~⑤)の割合を課題別に算出した。

【結果】

調査票の回収数は135件(回収率70.7%)であった。「連携が図れていると思う」の回答者割合は,「転倒・転落予防:53.5%」,「退院支援:50.4%」,「患者のゴール設定:45.7%」,「褥瘡予防:42.9%」であった。

連携による効果について,「患者のゴール設定」は①課題解決:40.7%,②患者・家族の満足:54.2%,③スタッフの満足:11.9%,④作業の効率向上:11.9%,⑤課題解決に向けた目標・計画の共有と実施:74.6%であった。「退院支援」は①36.5%,②68.3%,③14.3%,④9.5%,⑤55.6%であった。「褥瘡予防」は①35.8%,②18.9%,③17.0%,④9.4%,⑤64.2%であった。「転倒・転落予防」は①50.7%,②29.9%,③16.4%,④17.9%,⑤64.2%であった。

【結論】

いずれの課題でも回答者の約半数が日常業務内で連携できていることを示したが,約半数が「連携が図れていない」と思っているため,各課題における連携が図れていない理由の明確化および連携体制の整備が必要と考えられた。

課題別の連携の効果について,「退院支援」では回答者の約7割は「患者・家族の満足」につながったと認識しており,患者・家族を中心とした医療サービス提供に現状の専門職連携状況は有効であると考えられた。また,「転倒・転落予防」は回答者の半数超の者は連携による「課題解決」「目標・計画の共有」ができたと認識しており,現状の専門職連携体制が比較的機能していることが示された。一方,全ての課題で③スタッフの満足,④作業の効率向上の連携による効果があるとする回答者は少なく,連携には手間と時間がかかり疲労すると言われていることを裏付ける結果となった。