[P-TK-02-3] 回復期リハビリテーション病棟入院患者における家族の予想する退院後の介護負担感
キーワード:回復期リハビリテーション病棟, 介護負担感, 入院患者
【はじめに,目的】
退院後の患者・家族支援として,当院回復期リハビリテーション病棟(リハ病棟)では退院後訪問を実施している。その取り組みの中で,入院中に想定した退院後生活と実際の退院後生活とでギャップが生じ,家族が介護に対して負担を感じているケースを多く経験した。また,我々は,第50回日本理学療法学術大会(2015)において,主介護者が在宅介護する上で自身の時間が取れないことに負担を感じていた症例の報告を行った。今回,より早期からの家族支援に向けた一助とすべく,入院中に患者家族が予想する退院後の介護負担感を明らかにすることを目的とした。
【方法】
某リハ病棟に2015年8月から10月までに入棟し,在宅復帰を希望された6名の患者の家族を対象とした。調査は,質問紙による自記式で行った。調査項目は入棟直後(入棟より2週以内)に家族が予想する退院後の介護負担度(Zarit介護負担度日本語版の短縮版(J-ZBI_8)を用いて評価)とした(予想J-ZBI_8)。具体的には,J-ZBI_8と同じ8項目の質問に対して,それぞれ退院後生活を予想した際に該当する点数に記載するよう依頼した。点数はJ-ZBI_8と同様に0~4点の5段階とした。
調査結果は,(1)単純集計し,各項目の平均点を算出した。(2)介護そのものにより生じる負担であるPersonal strain(PS):項目1,2,4,7,8と介護者が介護を始めたためにこれまでの生活が出来なくなったことにより生じる負担であるRole strain(RS):項目3,5,6の二つの尺度に分類した。PSとRSをWilcoxonの順位和検定を用いて比較した。また,該当した項目でそれぞれ合計点数を,各々の尺度の総得点で除し割合を求めた。
統計処理は,フリーソフトR2.8.1を使用した(有意水準5%)。
【結果】
(1)予想J-ZBI_8の平均点数は9±3.8,項目5の「介護があるので,自らの社会参加の機会が減ると思いますか」の質問で2.8±1.1と全項目の中で最も高い値が得られた。(2)PSとRSの比較では,有意差は認められなかった。合計点数を基準とした場合のそれぞれの尺度での割合は,PSで17.0%,RSでは28.0%を認めた。
【結論】
上村らは,在宅介護をしている主介護者を対象に介護負担感評価を行っており,介護を開始する以前の生活が出来なくなったことが介護負担感の増大に影響していると報告している。
本研究において,リハ病棟入棟直後より予想J-ZBI_8でRS尺度が高い割合を示した。このことより,リハ病棟入棟時から家族は,患者が在宅復帰を迎えた際に自身に社会的制約が生じると想定していたと考える。理学療法士は患者の在宅復帰に向けた自宅内での自立支援のみならず,外出や手段的日常生活活動への支援を行っていく必要がある。また,リハ病棟入棟直後から,介護サービス内容(通所系サービス)を提示し,介護と離れる時間を作ることも可能と家族に知ってもらえるよう働きかけることが,退院後生活への不安・負担減少を図る上で重要と考える。
退院後の患者・家族支援として,当院回復期リハビリテーション病棟(リハ病棟)では退院後訪問を実施している。その取り組みの中で,入院中に想定した退院後生活と実際の退院後生活とでギャップが生じ,家族が介護に対して負担を感じているケースを多く経験した。また,我々は,第50回日本理学療法学術大会(2015)において,主介護者が在宅介護する上で自身の時間が取れないことに負担を感じていた症例の報告を行った。今回,より早期からの家族支援に向けた一助とすべく,入院中に患者家族が予想する退院後の介護負担感を明らかにすることを目的とした。
【方法】
某リハ病棟に2015年8月から10月までに入棟し,在宅復帰を希望された6名の患者の家族を対象とした。調査は,質問紙による自記式で行った。調査項目は入棟直後(入棟より2週以内)に家族が予想する退院後の介護負担度(Zarit介護負担度日本語版の短縮版(J-ZBI_8)を用いて評価)とした(予想J-ZBI_8)。具体的には,J-ZBI_8と同じ8項目の質問に対して,それぞれ退院後生活を予想した際に該当する点数に記載するよう依頼した。点数はJ-ZBI_8と同様に0~4点の5段階とした。
調査結果は,(1)単純集計し,各項目の平均点を算出した。(2)介護そのものにより生じる負担であるPersonal strain(PS):項目1,2,4,7,8と介護者が介護を始めたためにこれまでの生活が出来なくなったことにより生じる負担であるRole strain(RS):項目3,5,6の二つの尺度に分類した。PSとRSをWilcoxonの順位和検定を用いて比較した。また,該当した項目でそれぞれ合計点数を,各々の尺度の総得点で除し割合を求めた。
統計処理は,フリーソフトR2.8.1を使用した(有意水準5%)。
【結果】
(1)予想J-ZBI_8の平均点数は9±3.8,項目5の「介護があるので,自らの社会参加の機会が減ると思いますか」の質問で2.8±1.1と全項目の中で最も高い値が得られた。(2)PSとRSの比較では,有意差は認められなかった。合計点数を基準とした場合のそれぞれの尺度での割合は,PSで17.0%,RSでは28.0%を認めた。
【結論】
上村らは,在宅介護をしている主介護者を対象に介護負担感評価を行っており,介護を開始する以前の生活が出来なくなったことが介護負担感の増大に影響していると報告している。
本研究において,リハ病棟入棟直後より予想J-ZBI_8でRS尺度が高い割合を示した。このことより,リハ病棟入棟時から家族は,患者が在宅復帰を迎えた際に自身に社会的制約が生じると想定していたと考える。理学療法士は患者の在宅復帰に向けた自宅内での自立支援のみならず,外出や手段的日常生活活動への支援を行っていく必要がある。また,リハ病棟入棟直後から,介護サービス内容(通所系サービス)を提示し,介護と離れる時間を作ることも可能と家族に知ってもらえるよう働きかけることが,退院後生活への不安・負担減少を図る上で重要と考える。