第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本地域理学療法学会 一般演題ポスター
地域P04

Fri. May 27, 2016 4:30 PM - 5:30 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-TK-04-2] 地域包括ケア病棟における多職種連携による退院支援で在宅復帰を果たした事例

―病院・地域間による連携の重要性―

高木亮輔, 鈴木清子, 土屋勝 (JA静岡厚生連リハビリテーション中伊豆温泉病院)

Keywords:地域包括ケア病棟, 多職種連携, 退院支援

【はじめに,目的】

腰部脊柱管狭窄症の急性増悪によって当院地域包括ケア病棟に入院した事例を担当する機会を得た。事例を通して入院中の退院支援を振り返るとともに,地域を含めた多職種連携による退院支援の重要性について再考する。

【方法】

対象は80代女性。平成26年9月,当院で腰椎の手術を受け伝い歩きで自宅退院。要介護2。週1回の訪問リハビリで対応。疼痛のためトイレ以外は寝たきりの生活であった。通所リハビリも試みたが長時間の座位保持が困難で自粛した。平成27年9月,腰部脊柱管狭窄症の急性増悪にて起居動作困難となり当院地域包括ケア病棟へ入院となった。入院時FIM60点。腰部の疼痛はVAS100mm。食事を拒否し点滴加療で対応。家族は著しい機能低下に困惑し施設入所も検討していた。入院7日目にNs・MSW・PTで在宅復帰に向けた今後の方針を立てた。Nsは医師と連携して疼痛と服薬の管理,MSWはケアマネ・家族と連携して情報交換,PTは疼痛緩和と歩行能力の改善とした。入院15日目に疼痛が緩和し座って食事を100%摂れるようになった。入院25日目で医師・Ns・MSW・PTでカンファレンスを実施。回復傾向であるが,施設も視野に入れて家族・本人の意思を尊重することになった。本人と夫は在宅復帰を,娘は日中介護できないことと再発への不安を訴え施設入所を希望した。理学療法は体幹深部筋の賦活と股関節屈筋群の伸張を行い腰部の安定化と疼痛緩和を図った。夫・娘に歩行を適時見学してもらい,夫へ介助指導を実施。また,ケアマネ・訪問リハビリ担当者へ連絡し,退院後の福祉サービスの見直しと今後の目標設定を行った。目標は退院後の安全な在宅生活と再発防止に向けた座位時間延長とし,本人・家族が納得して在宅復帰できるよう関係職種が目標を共有した。

【結果】

入院40日目で疼痛は腰部にVAS67mm。伝い歩きは夫の見守りで20m可能となり,日中は座ってテレビを見たり食事をして30分の座位保持が可能となった。その結果,娘も在宅復帰を決意した。入院54日目に自宅で本人・家族・ケアマネ・訪問リハビリ担当者・福祉業者・Ns・PTによる家屋評価と担当者会議を実施。本人・家族と関係職種で動線を確認し必要な手すりや福祉用具を導入した。また,体力維持と再発防止を期待して家族へ床上動作の助言と訪問リハビリを週2回に増やした。退院後は社会参加を目的に通所リハビリの再開を目指して介護保険事業へと引き継いだ。入院59日目にFIM92点で在宅復帰となった。

【結論】

地域包括ケア病棟は在宅・生活復帰支援が役割であるため,質の高い退院支援が求められる。永田は地域と病院との垣根を低くすることが,個々の患者における退院支援の質向上において効果的と述べている。当初,病院内での退院支援を行っていたが,地域で関わる職員と連携して退院支援を計画することで,退院後の具体的な目標設定と家族の介護不安軽減に繋がり円滑な在宅復帰を達成したと考えられる。