第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本地域理学療法学会 一般演題ポスター
地域P04

2016年5月27日(金) 16:30 〜 17:30 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-TK-04-4] 自主的な行動を引き出すための適切な課題の有用性

職場復帰を目指す左片麻痺患者への訪問リハビリでの介入

小野雅之 (桜ヶ丘中央病院リハビリテーション科)

キーワード:職場復帰, 公共交通機関, 活動と参加

【目的】2015年度の介護報酬改定では「活動と参加に焦点を当てたリハビリテーションの推進」が目的となった。今回訪問リハビリ(以下訪リハ)にて職場復帰を目指す左片麻痺患者を担当した。本症例は当院回復期病棟入院時から職場復帰の意向を訴えていたが,何から取り組むべきか不明確な状態であり,具体的に行動を起こすことや現実味のある課題を設定することが困難であった。訪リハにて介入することで,適切な課題を設定することができ自主的な行動を引き出すことに着目した症例の経過を報告する。


【方法】平成27年3月に右皮殻出血を発症し他院で急性期治療を経て,当院回復期病棟を8月に退院した専業主婦の妻と二人暮らしの50代男性である。左片麻痺を呈し,左半側空間無視と注意障害を合併している。Brunnstrom recovery stageは上下肢ともに3レベルであった。介護度は要介護2であり,自宅でのトイレ動作は手すりを使用して自立,シャワー浴と屋外T字杖歩行は見守りにて実施している。職種はパソコンを主に扱い,海外の工場での業務もこなしていた。職場は自宅から駅までの15分程度の歩行,電車の乗り換え,職場まで15分程度の歩行を要する。退院前から訪問リハビリ導入の意向があったために,ケアマネジャーも同席のもと地域カンファレンスを開催し,ケアプランにも復職に向けた公共交通機関での外出練習を組み込むことになった。実際の訪リハでは復職までの課題を細分化し,一つひとつの課題を対象者と妻が納得したうえで実施した。それらの課題を達成できるとセラピストが判断した時点で次の課題に取り組み,できるだけ失敗の無いように注意を払いつつ実施した。介入は理学療法士(以下PT),作業療法士(以下OT),言語聴覚士が1回1時間を週2回交代で実施した。


【結果】介入からひと月で妻との屋外歩行が1時間程度行えるようになり,次の課題である公共交通機関での練習を開始した。バスの昇降練習,駅でのエスカレーターを用いての移動,電車の乗り降りと順を追って行った。この経験を踏まえ妻と二人で職場へ通勤経路を用いて行くこともでき,挨拶を済ませることができた。活動の幅が広がったことを踏まえ,PTが多く介入していた頻度もOTを多くし異なる課題に取り組むこともできた。この間で麻痺の大幅な改善は見られておらず,Timed up & goは26.4秒,Functional Reach Test 16cm,片脚立位は5.7秒であった。


【結論】職場復帰を目指す左片麻痺患者を担当した。身体機能面では転倒の危険が予想される結果であっても,現時点では転倒することもなく職場までの移動も見守りで可能になった。目標を明確にして適切な課題を提供することは,自主的な行動を引き出し,能力面を高めることに有用だと示唆される。