第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本地域理学療法学会 一般演題ポスター
地域P06

Sat. May 28, 2016 11:40 AM - 12:40 PM 第10会場 (産業振興センター 2階 セミナールームB)

[P-TK-06-3] 当院回復期リハビリテーション病棟における大腿骨近位部骨折患者の自宅復帰を困難とした因子

村田智恵, 水谷真康, 岩月律道, 後久由貴, 佐藤崇平, 水野圭祐, 小柳芳樹, 泉沢未樹, 国本純基, 平尾奈緒美 (小山田記念温泉病院)

Keywords:大腿骨近位部骨折, 自宅復帰, 社会的交流

【はじめに,目的】大腿骨近位部骨折は増加傾向にあり,受傷を機に施設へ入所する者は18~41%,その要因はトイレ動作に介助を要することや,同居人数が少ない場合自宅復帰が困難になると報告されている。そのため,当院では早期の動作獲得を優先して介入を行っているが,自宅復帰困難となった例もあり,他の要因について更なる検討が必要である。そこで,本研究は当院回復期リハビリテーション病棟(以下,当院回復期)における大腿骨近位部骨折患者の自宅復帰を困難とした因子について検討した。

【方法】対象は,当院回復期に2012年4月から2014年5月までに入院した大腿骨近位部骨折患者127例のうち,病前から施設入所していた12例と入院中に死亡・転院・転科した10例,データ欠損のあった11例を除外した94例とした。このうち,自宅退院した患者71例(79.6±8.4(歳),男性15名)を自宅群,施設退院した23例(87.9±7.3(歳),男性3名)を非自宅群とした。方法は,年齢,性別,急性期在院日数,回復期在院日数,同居人数,キーパーソンとの同居の有無,退院先,退院時Functional Independence Measure(以下,FIM),退院時Mini-Mental State Examination(以下,MMSE),退院時10m歩行時間について後方視的に調査した。統計解析は,自宅群・非自宅群における2群間の比較では,Mann-Whitney U検定・カイ二乗検定を用いた。さらに有意差を認めた項目を独立変数,転帰先を従属変数として多重ロジスティック回帰分析を行い,非自宅退院となる影響力を評価した。FIM各項目については6点以上を自立,5点以下を非自立に分類し統計処理を行い,有意水準は5%未満とした。

【結果】2群間の比較では,年齢,FIM合計,整容,清拭,更衣上衣,更衣下衣,排便管理,移乗浴槽,歩行,表出,社会的交流,問題解決,記憶,MMSEに有意差が認められた。多重ロジスティック回帰分析の結果,有意差を認めた変数は年齢,社会的交流でオッズ比はそれぞれ1.21,8.86であった。

【結論】本研究では,大腿骨近位部骨折患者の自宅復帰を困難とする因子は,年齢,社会的交流が非自立であることが示唆された。過去の報告と異なる結果となった理由として,ADL動作の獲得が自宅群,非自宅群双方の症例に対して得られたこと,それにより,必要とする介護力が変化したことが考えられる。また,社会的交流とは,相手に迷惑をかけているかどうかわかる,ということであるが,高齢者が骨折し,入院での共同生活や被介護者を経験することで,心理面,行動面の影響を受け,社会的交流項目が低下することは予測される。さらに,動作獲得による介助量軽減が為されたとしても,迷惑行為が自宅退院後も残存する可能性は,家族への精神的,身体的負担となり,自宅復帰を困難とすることが考えられる。今後は,社会的交流項目に着目し,アプローチすることが重要であり,より細分化した評価,具体的方法を検討する必要がある。