第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本地域理学療法学会 一般演題ポスター
地域P07

Sat. May 28, 2016 11:40 AM - 12:40 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-TK-07-2] 転倒を起因とした骨折により急性期病院へ入院した高齢患者の特徴

上田哲也1,2, 樋口由美1, 今岡真和1, 藤堂恵美子1, 北川智美1, 安藤卓1, 高尾耕平1, 服部玄徳2, 野村日呂美2 (1.大阪府立大学大学院, 2.八尾徳洲会総合病院)

Keywords:転倒, 骨折, 急性期病院

【はじめに,目的】

近年,高齢者の転倒は増加しており,転倒した高齢者の約2分の1が1年以内に再転倒すると報告されている。また,多くの報告において,過去の転倒経験が今後の転倒リスク要因と指摘されている。さらに高齢者の増加にともない,転倒を起因とした骨折が原因で入院する高齢者も増加傾向である。

しかしながら,このような者すなわち過去の転倒を有する者に焦点を当てた報告は少ない。そこで,本研究の目的は,転倒を起因とした骨折により急性期病院に入院した患者の特徴を明らかにすることとした。

【方法】

対象者は,急性期病院整形外科病棟に入院された65歳以上の高齢者のうち,入院前一年間に転倒歴があり,屋内自立レベルにて自宅退院される患者57名とした。除外基準として,重度な片麻痺や視力低下を有すること,認知機能MMSE<24の者とした。入院時情報として,年齢・性別・BMI・疾患名(現病歴)・介護認定の有無・入院前ADL・居住状況・家屋構造・服薬状況・過去一年間の転倒経験・入院前の生活の広がり(Life-Space Assessment;以下,LSA)を調査・測定した。なお,入院の原因が,転倒による骨折の場合(以下,骨折群)とそれ以外の場合(以下,非骨折群)へ2群化した。また,退院時の情報として,退院時に,認知機能評価(MMSE),身体機能評価(TUG・Barthel Index;以下,BI),転倒恐怖感(Modified Falls Efficacy Scale;以下,MFES),抑うつ検査(GDS5)の調査・測定を行った。

統計学的解析は,単変量解析で入院原因と有意に関連した項目及び性別を独立変数,入院原因(1:骨折群,0:非骨折群)を従属変数としたロジスティック回帰分析を行った。なお,統計学的有意水準は5%未満とした。

【結果】

骨折群は38名(77.0±6.8歳,女性28名),非骨折群は19名(73.7±5.3歳,女性9名)であり,年齢・性別に両群間で有意差はみられなかった。BMIは22未満と22以上で2群化し,骨折群は22未満が25名(65.8%),非骨折群は6名(31.6%)であり骨折群が有意に低値を示した(p<0.05)。TUGは非骨折群の16.8±14.6秒に比して,骨折群の18.7±11.0秒は遅い傾向であった(p=0.09)。MFESは骨折群が103.6±24.5点,非骨折群が120.1±26.7点であり骨折群が有意に低値(p<0.01)を示した。

BMI,TUG,MFES及び性別を独立変数としてロジスティック回帰分析を行った結果,BMI(オッズ比4.11,95%信頼区間1.14-14.91)とMFES(オッズ比0.97,95%信頼区間0.94-1.00)が,入院原因と有意な独立関連因子であった。

【結論】

転倒受傷による骨折により入院した高齢整形外科患者は,運動機能面に関わらず,「BMIが低いこと」と「退院時に転倒恐怖感があること」に関連があることが示唆された。今後は,入院中における転倒恐怖感及び多職種介入での栄養状態に対する評価・対策が必要であると考える。