第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本地域理学療法学会 一般演題ポスター
地域P07

2016年5月28日(土) 11:40 〜 12:40 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-TK-07-4] 短期入所施設での転倒予防を企図した介入

―事故報告書の分析から居室環境の整備を行った事例―

原田浩史1, 備酒伸彦2 (1.KOBE須磨きらくえん, 2.神戸学院大学総合リハビリテーション学部)

キーワード:短期入所, 転倒予防, 事故報告

【はじめに,目的】

短期入所施設での転倒は,その後の自宅生活に大きな影響を及ぼすため未然に防ぐことが重要である。しかし,短期間利用という特性上,施設の環境に十分に適応することが出来ず転倒に至る事例も少なくない。当施設においても多数の転倒が発生していたため,その対策が急務であった。施設入所者の転倒を予防するためには行動を分析することが重要とされていることから,当施設での転倒発生状況の分析を行い,その結果に基づいて居室環境の整備を実施した。ここでは当施設での転倒発生状況と,最も多く転倒を繰り返していた一事例について報告する。

【方法】

転倒発生状況は,事故報告書より2014年10月~2015年9月までの1年間に発生した48件の転倒を抽出し,転倒場所,転倒発生時間を後ろ向きに調査した。そして,最も転倒回数が多かった利用者の転倒を更に分析し対策を講じ,その後の転倒状況を再調査した。

【結果】

事故報告書より,転倒発生時間は日中が28件,職員が1人となる夜間帯に20件であった。転倒場所は居室29件が最も多く,うち17件は夜間帯の転倒であった。

最も多く転倒を繰り返していた利用者は,2014年10月からの1年間で計98日間短期入所を利用しており,その期間内に4回転倒している。この利用者は歩行器を使用した歩行は見守りレベルであるが,独歩では不安定となり転倒の危険性が高い状態であった。転倒発生時間は日中1件,夜間帯に3件であった。転倒場所は全て居室であり,センサーマットを設置しているベッド周囲からトイレまでの範囲に限定されていた。さらに,転倒後の状況から歩行器を使用している形跡はなく,ベッドから起き上がった後独歩で移動を試みた際に転倒していることが想像された。そこで対応策として,ベッドからトイレまでの動線に簡易手すりを設置し転倒予防を図った。その結果,居室環境を整備してから20日間の利用があったが転倒は発生していない。

【結論】

当施設は10人のユニットが2ユニットある20名定員でユニットケアを行っており,同一階ではあるが夜間帯には20人の利用者のケアを1人の職員が行っている。そのため,センサーマットを設置していても他利用者の介助中であれば即座に対応することが出来ず,転倒の発生に繋がることがある。施設入所者の転倒予測には身体機能や知的機能検査のみではなく,行動を分析することが重要とされており,本事例のように行動を分析したうえでの介入は効果的であったといえる。居室での夜間帯の転倒には類似した事例がみられたため,同様の居室環境に複数室整備し転倒発生数の減少に繋げていきたい。