第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本地域理学療法学会 一般演題ポスター
地域P09

Sat. May 28, 2016 2:50 PM - 3:50 PM 第11会場 (産業振興センター 2階 セミナールームA)

[P-TK-09-4] 施設入所高齢者の食後低血圧に関する検討

橋爪真彦1,2, 鈴木規子1,3, 西川秋子4, 塩谷英之1 (1.神戸大学大学院保健学研究科, 2.有馬温泉病院総合リハビリテーション室, 3.明治国際医療大学看護学部, 4.京都学園大学健康医療学部)

Keywords:介護老人保健施設, 高齢者, 食後低血圧

【はじめに,目的】

食後低血圧(Postprandial Hypotension;PPH)は,自律神経が障害された高齢者や糖尿病患者などで臨床上問題となっており,失神や転倒,心血管イベントや脳卒中との関連性が報告されている。PPHの定義について未だ確立されたものはないが,食事摂取後2時間以内に収縮期血圧が20mmHg以上低下する,あるいは収縮期血圧が食前100mmHg以上あった場合に食後90mmHg以下に低下するというものが一般的になりつつある。加齢に伴ってPPHの頻度が高くなり,またケア施設などに入所中の高齢者では,地域在住高齢者に比較してその頻度が高いことが欧米の研究で明らかにされているが,本邦において施設入所高齢者に対するPPHについて検討した報告は,我々の知る限りみられない。そこで本研究では介護老人保健施設に入所中の高齢者を対象に,PPHの発生率およびそれに関連する因子を明らかにすることを目的とした。


【方法】

介護老人保健施設に入所中の後期高齢者78名を対象とし,調査・測定項目に欠損があった6名を除く72名(平均年齢85.8±6.36歳)を分析対象とした。調査項目は,年齢,性別,身長,体重,既往歴と服用薬剤とした。昼食前30分に血圧を測定し,食後30分,60分,90分,120分に血圧を測定した。測定項目は収縮期血圧(SBP)とした。食後の測定値のうち,食前値との比較において最も大きな血圧低下量をΔSBPとし,20mmHg以上低下したPPH群と血圧低下が19mmHg未満のnonPPH群に分けて比較検討した。まず測定値の群間比較をt検定およびχ2検定を用いて行った。その結果をもとに独立変数を選択し,PPHの有無を従属変数とした多重ロジスティック回帰分析により,PPHに関わる因子の抽出を行った。有意水準は5%未満とした。


【結果】

PPH群は29名であり,全体の40.3%であった。PPH群はnonPPH群に比較して,食前のSBPが有意に高かった(P<0.05)。PPHの有無を従属変数,食前SBPと糖尿病の有無を独立変数とした多重ロジスティック回帰分析の結果,食前SBPがPPHの関連因子として抽出された(オッズ比:1.03,95%信頼区間:1.004~1.057,P<0.05)。


【結論】

本研究の結果より,施設入所高齢者の約4割にPPHが認められることが明らかとなり,先に報告された地域在住高齢者(35.9%)より高い結果となった。またベースラインのSBPがPPHと関連するという結果から,日々の血圧測定からPPHの起こりうる入所者を職員が予測して把握することで,入所者のリスク管理やQOL向上につながる可能性がある。本邦の施設入所高齢者におけるPPHの実態とその対策について,更なる検討を進めることが今後の課題である。