第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本地域理学療法学会 一般演題ポスター
地域P10

Sat. May 28, 2016 4:00 PM - 5:00 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-TK-10-1] 在宅パーキンソン病者におけるアパシーと自己効力感の双方向因果関係

盛田寛明, 神成一哉 (青森県立保健大学健康科学部理学療法学科)

Keywords:パーキンソン病, アパシー, 自己効力感

【はじめに,目的】在宅パーキンソン病者(以下,在宅PD者)の心理学的徴候として,自己効力感の低下とアパシーがある。アパシーは,日常生活における感情,情動,興味,関心,および目標に対する行動認知の欠如と定義され,動機づけの欠如,つまり,やる気あるいは意欲の欠如を意味する。在宅PD者では,自己効力感低下とアパシーの関連性が指摘されている。先行研究では,自己効力感低下にはアパシーが影響する一方,アパシーの改善には自己効力感の向上が有用であることが示唆されている。よって,この2要因間に相互の因果関係の存在が考えられる。双方向の因果的影響度を分析することは介入の根拠として必要である。しかし,この双方向因果関係における影響の強さの比較および時間的先行性に関する報告はない。本研究の目的は,在宅PD者の自己効力感とアパシー間の双方向因果関係モデルを設定し,その関係を構造方程式モデリング(以下,SEM)にて検証することである。

【方法】調査対象者は,パーキンソン病友の会青森県支部および同友の会東北・北海道ブロックに所属する在宅PD者188名であった。このうち,調査拒否および不正回答を除く122名(男60名,女62名,平均年齢70.9±7.8歳)を分析対象とした。調査方法は,質問紙(無記名,自記式)を用い,郵送法による配布・回収,および研修会会場集合法にて実施した。アパシーおよび自己効力感は,筆者らが開発した在宅PD者アパシー尺度および自己効力感尺度にて測定した。解析にはSEM(多重指標モデル)による双方向因果分析モデルを使用した。[自己効力感]と[アパシー]を潜在変数とし,その指標をそれぞれ観測変数「自己効力感尺度得点」と「アパシー尺度得点」とした。潜在変数[自己効力感]と[アパシー]との間に双方向因果経路を設定し因果係数を比較した。推定法は最尤法で行った。

【結果】SEMによる双方向因果分析の結果,因果係数は,標準化解で[アパシー]から[自己効力感]へは-0.48(P<0.01)であり,[自己効力感]から[アパシー]へは-0.41(P<0.01)であった。赤池情報量基準は,それぞれ426.738,424.964であった。モデルの適合度は良好であり各モデルはデータに適合していた。ブートストラップ法の結果,Bollen and Stineの適合度検定でp値は各モデルで0.05より大きく,モデルの適合度は良好であった。また,影響指標は全て0.7以上であり構成概念と観測変数との対応は適切なものであった。

【結論】在宅PD者では,介入により変容可能な自己効力感を先行的に高めることによってアパシーが改善する可能性がある。また,それと同程度の影響度で,先行的にアパシーを改善する方策を実施することが自己効力感を高めることにつながることも推察される。