第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本地域理学療法学会 一般演題ポスター
地域P10

2016年5月28日(土) 16:00 〜 17:00 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-TK-10-2] 維持期脳卒中患者における起床時不快感についての調査

飯倉大貴1, 山口智史1,2, 前田和平1, 島田祐里1, 近藤国嗣1, 大高洋平1,2 (1.東京湾岸リハビリテーション病院, 2.慶應義塾大学医学部リハビリテーション医学教室)

キーワード:しびれ, 疼痛, 半構造化面接法

【はじめに,目的】

脳卒中後において,しびれや疼痛などの不快感を訴える患者は約55%と言われており,作業の巧緻性や能率の低下に影響すると考えられている(登喜ら,2004)。一方,臨床において,起床時に不快感が発現もしくは増悪することを訴える患者が多くいることを経験する。しかし,維持期脳卒中患者において,起床時に特有の不快感について,その実態を調査した報告はない。そこで本研究は,維持期脳卒中患者を対象に,起床時不快感について明らかにすることを目的とした。


【方法】

対象は,2015年8月から同年9月に当院併設のデイケアを利用した維持期脳卒中患者50名であった。採用基準は,初発脳卒中片麻痺患者,年齢が20歳から80歳,コミュニケーションが可能である者とした。除外基準は,Mini Mental State Examination Scoreが20点以下,三環系うつ薬を内服している者とした。

調査方法は半構造化面接法とし,事前に作成した質問紙を基に行った。質問の内容は,起床時不快感の有無,部位,種類,持続時間,強さ,および不快感発症の時期などとした。起床時不快感の定義は,起床時に特有,もしくは特に強く感じるしびれ,疼痛,こわばりなどの症状とした。なお,起床時不快感と同等の症状が日中持続する者は,起床時不快感なしとした。基本情報として,Stroke Impairment Assessment Setの運動機能・感覚機能・筋緊張,Functional Independence Measureの運動・認知項目のそれぞれ合計点を評価した。得られた結果から,単純集計を行った。また,起床時不快感の有無により2群に分け,基本情報について,対応のないt検定もしくはχ2検定を用いて比較した。有意水準は5%とした。


【結果】

起床時不快感ありは,50名中17名で34%(女性10名,左片麻痺12名,年齢67±9歳,発症後年数5.7±3.0年:平均値±標準偏差)であった。一方で,起床時不快感なしは,33名(女性16名,左片麻痺17名,年齢66±8歳,発症後年数5.9±3.1年)であり,その内21名が持続的な不快感を有していた。

起床時不快感を有していた者は,すべて脳卒中発症後に起床時不快感が出現しており,17名中8名が発症直後から症状が出現していた。不快感の種類は,こわばり8名,有痛性筋痙攣4名,疼痛4名,しびれ3名,不随意運動1名であり,複数の不快感を有している者は3名であった。不快感の生じる部位は,すべて麻痺側であった。その部位は,こわばりは上下肢4名,上肢のみ2名,下肢のみ2名であった。有痛性筋痙攣は上肢のみ1名,下肢のみ3名であった。疼痛は上下肢1名,腰背部3名であった。しびれは上肢のみ2名,下肢のみ1名であった。不随意運動は下肢のみ1名であった。基本情報について,すべての項目で両群間に有意差を認めなかった(p>0.05)。


【結論】

維持期脳卒中片麻痺患者の34%が起床時不快感を有していることが初めて明らかとなった。今後は対象者を増やし,起床時不快感に関連する要因について検討する必要がある。