第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本地域理学療法学会 一般演題ポスター
地域P10

Sat. May 28, 2016 4:00 PM - 5:00 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-TK-10-5] 骨折リスクが高い重症心身障害児の母親支援

短期入所を安全に利用できるために

黒川めぐみ (大阪発達総合療育センター訪問看護ステーションめぐみ)

Keywords:重症心身障害, 短期入所, リスク管理

【はじめに,目的】

重症心身障害児(以下,重症児)とそのご家族が安心して在宅生活を送るために,短期入所事業が進んでいる。しかし,医療的ケアに加えて移乗やおむつ交換などの日常的な介助場面での事故も多く,入所先にとってもリスク管理は切実な課題である。今回,骨折リスクが高い重症児が複数の短期入所を新たに利用することになったことで,母親は入所先に症例の介助をどのように説明したら良いか困惑していた。そこで,母親の日常的な介助に訪問リハビリテーション(以下,リハ)の専門的視点での解釈を添えることで,入所先に適切に説明ができ安全に過ごせた。この経過をもとに母親支援について考察する。

【方法】

症例はダウン症及び脳症後脳性麻痺,人工換気療法を受ける12歳,男児。入所先で原因不明の大腿骨骨折をしたことがあり,その後のリハでも骨折リスクに配慮した介助方法を母親と確認していた。骨折から約1年後,精密検査にてくる病と診断された。同時期,今まで利用していた入所先の期間短縮に伴い新たに複数箇所を利用することになった。母親は骨折時にリハと介助方法を確認していたが,新たな入所先に何をどこまで説明したら良いか困惑していた。そこで,短期入所を安全に利用できることを目標に改めて介助を見直した。症例は下肢の筋緊張が高く著明な両股関節屈曲・外転制限及び両膝関節屈曲制限があり,体幹低緊張であったが仰臥位で両上肢を持ち上げることや頭部を右へ回旋できた。母親の介助場面を観察すると,移乗時には体幹と両股・膝関節を動かさずに抱えることや,おむつ交換では症例の随意的な運動に合わせた姿勢変換など,骨折を回避した心地良い介助であった。母親の日常的な介助に解釈を添えるために上下肢の関節可動域と筋緊張,呼吸状態を再評価し,母親の介助が効率的であることを確認した。母親は自身の介助を客観的に知ることで症例の関係者に骨折リスクを共有する必要性を感じ,多職種とカンファレンスを行うことにした。母親が介助の要点を伝えることの難しさを実感され,これをもとに入所時にスムーズに説明できることを目標にサポートブックの作成を提案し,介助場面の写真を撮影,母親とご家族の言葉で説明を加え,入所時に持参した。

【結果】

母親はサポートブックの作成を通して骨折リスクを把握し,入所時に介助の要点を適切に説明できるようになった。新たに利用した複数箇所の短期入所を安全に過ごせた。

【結論】

重症児の母親の多くは短期入所を希望されるが,骨折リスクの高い重症児の介助は個別性が高く,リスク管理も多岐にわたる。重症児はご家族との関わりの中で適応しており,ご家族の介助方法こそが効率的であることを経験する。今回,ご家族が日常的な介助の要点を第三者に説明できるように支援することがリスク管理のひとつであることを学び,安全な短期入所の利用につながったのではないかと考える。