第51回日本理学療法学術大会

Presentation information

一般演題ポスター

日本地域理学療法学会 一般演題ポスター
地域P10

Sat. May 28, 2016 4:00 PM - 5:00 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-TK-10-6] 日常生活の自立が主介護者の介護負担感に与える因子の検討

講内源太1, 秋元準子1, 佐藤斎2, 日高貞明3, 高島恵4 (1.医療法人社団愛友会訪問看護ステーションゆーらっぷ, 2.合同会社リハビリコンパス地域リハビリケアセンターこんぱす春日部, 3.医療法人社団愛友会上尾甦生病院リハビリテーション科, 4.学校法人康学舎上尾中央医療専門学校教育部理学療法学科)

Keywords:介護負担感, 日常生活自立度, 因子検討

【目的】

厚生労働省の平成27年介護保険事業状況報告では,介護保険の認定者数は600万人を超え,居宅サービスの利用者数は380万人を超えた。高度医療技術の進歩と在院日数の短縮化により,今後も増えることが予測される。一方,老老介護や認認介護,介護を起因とする事件は大きな課題である。理学療法士はご本人のQOLを高めると共に,ご家族の介護負担軽減を図ることも必要である。今回,在宅被介護者の日常生活動作の自立が在宅介護者の介護負担感のどのような因子に影響するのかを検討し,負担軽減に継げる一助とする目的で実施した。


【方法】

2つの訪問看護ステーションと1つの病院,計3施設における要介護認定を受けている利用者で,本研究の説明を行い,同意の得られた68名の被介護者(年齢78.27歳±9.79,男性32名,女性36名)と,その主介護者(年齢64.54歳±10.87,男性18名,女性50名)を対象とした。被介護者の調査項目は年齢,性別,FIMを調査した。主介護者からは年齢,性別,Zarit介護負担尺度の日本語版(以下,J-ZBI)の回答を得た。期間は平成27年8月下旬~9月上旬に実施し,主介護者にJ-ZBIを配布し,後日回収した。統計方法は,FIM運動項目合計とFIM認知項目合計を従属変数とし,J-ZBI22項目を独立変数とした重回帰分析を実施した。統計処理は,SPSS.Ver16.0を用い,有意水準は5%未満とした。


【結果】

J-ZBI22項目の多重共線性は認められなかった。FIM運動項目合計に影響を与える因子は「プライバシーを保てない(問11)」及び「介護による社会参加機会の減少(問12)」「もっと頑張って介護をするべきだ(問20)」であった(総得点=74.170+-10.621×(問12)+-7.157×(問20)+6.676×(問11)。分散分析表の結果は有意で(p<0.000)R2は0.31であり,適合性は高いと評価した。FIM認知項目合計に影響を与える因子は「将来への不安(問7)」及び「介護による社会参加機会の減少(問12)」「もっと頑張って介護をするべきだ(問20)」であった(総得点=29.095+-2.480×(問12)+-2.976×(問20)+2.010×(問7))。分散分析表の結果は有意で(p<0.002)R2は0.21であり,適合性は高いと評価した。


【結論】

FIM運動項目とFIM認知項目共に,介護量の増加は主介護者の社会参加機会の減少,もっと頑張るべきという心理状態との関連が認められ,生活機能への介入や様々な環境設定,対人関係を通しての交流機会の獲得は,主介護者の介護負担軽減に役立つと考える。さらに,介助量の少ない場合でも,FIM運動項目ではプライバシーとFIM認知項目では将来への不安との関連が認められ,地域支援事業や様々なインフォーマルな活動は,被介護者,主介護者に対して,正確な知識の獲得と共に,ピアケアの場を作り出せる可能性があり,積極的に取り組んでいく必要がある。本研究により,従来の個別の介入に加え,地域全体へのアプローチを創設することも重要と考える。