第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本地域理学療法学会 一般演題ポスター
地域P12

2016年5月29日(日) 10:00 〜 11:00 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-TK-12-1] 訪問リハビリテーション利用者における栄養状態の把握と傾向について

佐藤麻美, 日野亜由美, 山元総一郎 (沖縄第一病院)

キーワード:訪問リハ, MNA-SF, 栄養

【はじめに,目的】

理学療法を必要とする障がい者,高齢者に栄養障害を認めることが多いことは若林らにより明らかにされており,その対象者は入院中の方に限らず,在宅で療養されている方にも多く見受けられる。障がい者や高齢者のADL,QOLを最大限高めるためには理学療法と栄養管理を切り離すことは出来ず,栄養状態の把握が重要視されている。そこで今回,訪問看護ステーションからの訪問リハビリ・訪問リハビリテーション事業所(以下,訪問リハ)利用者の栄養状態,ADLとの関連性,全身筋肉量との傾向について検討した。



【方法】

訪問リハ利用者のうち身体計測データの得られた22名を分析対象とし,簡易栄養状態評価法(mini nutritional assessment:以下,MNA-SF),BMI,FIM,全身の筋肉量の目安として上腕周囲長と上腕三頭筋脂肪厚から上腕筋囲(以下AMC)上腕筋面積(以下AMA)を計算し各年齢の基準値に対する%値で評価を行い,MNA-SFと各測定結果を比較した。統計解析はMNA-SFとBMI,FIM(運動項目・認知項目・合計),%AMC,%AMAの各項目をスピアマンの順位相関係数を用いて検討し有意水準5%未満とした。



【結果】

MNA-SFで栄養状態良好(以下,良好群)4名,低栄養のおそれあり(以下,At risk群)15名,低栄養群3名という結果となった。MNA-SFとBMI,FIM(認知項目)において有意に相関があるという結果となったが,それ以外の項目で有意な差は認められなかった。%AMC,%AMAでは,良好群で1名,%AMAで軽度栄養障害の結果となったがそれ以外の者は標準値だった。At risk群では%AMCで標準値を示したのは8名,軽度から中等度栄養障害は5名,%AMAでは標準値が5名,軽度から中等度栄養障害が8名,重度栄養障害は2名となった。低栄養群では%AMCで1名が標準値を示し,軽度栄養障害が2名,%AMAでは3名が軽度から中等度の栄養障害という結果となった。



【結論】

結果より,MNA-SFとBMI,FIMの認知項目で有意に相関があるという結果となっており,MNA-SFのスクリーニング項目でもあるように認知障害の有無が栄養状態との関係があると考えられた。若林らは全身筋肉量の目安であるAMC,AMAが低値の場合は栄養状態に問題があるとしている。今回の結果より,栄養スクリーニングでの指標と,実際の身体状況での指標を照らし合わせて総合的に解釈し,今後の栄養管理に繋げていく必要性があると考えられた。入院中はNSTの介入で比較的早期に低栄養に対しての対策が行われるも,在宅ではコメディカルの介入も少なくなる為,栄養状態の管理がより一層重要となる。スクリーニングや身体計測での客観的な指標でのスタッフ間の情報共有,低栄養のリスクとなり得る状態の分析を行い,在宅生活での栄養管理においての対策を検討していきたい。