第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本地域理学療法学会 一般演題ポスター
地域P12

2016年5月29日(日) 10:00 〜 11:00 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-TK-12-4] 訪問リハビリテーション利用者の居宅における熱中症リスクと脱水症状について

三木屋良輔 (森ノ宮医療大学大学院保健医療学研究科)

キーワード:地域理学療法, 訪問リハビリテーション, リスク管理

【はじめに,目的】

近年,気候の温暖化に伴い,熱中症になる人が増加している。総務省のデータによると全国で2015年の5月から9月の期間に熱中症で救急搬送された人は55,852人で,年齢層別では65歳以上の高齢者が28,016人となり初めて全体の50%を超えた。熱中症は,気温,湿度,輻射熱の3つを取り入れた温度の指標として暑さ指数(以下WBGT)が28℃以上になると厳重警戒とされ,急激に発生件数が増加するといわれている。昨年度の学会にて,訪問リハビリテーション(以下訪問リハ)利用者の居宅におけるWBGTに関して報告したが,熱中症症状までのリサーチは実施していなかった。そこで今回,居宅における熱中症のリスクについて,居宅高齢者の住環境のWBGTと熱中症症状の視点から調査した。


【方法】

平成27年8月3日~8月26日の期間に訪問リハを実施した62件(60名,平均年齢78.5±10.4歳)を対象とした。訪問リハ中ベッドサイドにおけるWBGT,室温,湿度の計測には黒球式熱中症指数計(タニタ社製TT-560-WH)を使用し,屋外のWBGTと,10分以上室内に設置し安定化させた後に表示された数値を室内WBGTとして採用した。また熱中症症状の所見として血圧,心拍数の著明な変化,体温上昇,ブランチテスト陽性,ツルゴール低下,さらに極度の体重減少,尿量低下,口・舌の乾燥,認知機能の悪化の有無を調査した。統計処理は,クーラー使用群とクーラー使用無し群での室内WBGTの比較を対応のないT検定とし,統計学的有意差判定基準は5%未満とした。


【結果】

本期間中の訪問リハ実施中に外気温が30℃以上のいわゆる真夏日であった件数は29件(46.7%)であった。また室内WBGTが28℃以上の厳重警戒ラインに達していた件数は,1件(1.6%),25~28℃未満の警戒領域であった件数は,16件(25.8%)であった。さらにクーラーの設置率は全体の96.8%で,厳重警戒ラインに達していた1件ではクーラーが設置されていなかった。そしてクーラー使用群の平均室内WBGTは23.2℃(±1.7),クーラー使用無し群の平均室内WBGTは25.4℃(±2.7)であったが,両群に有意差は無かった。また所見として両群において血圧,心拍数の著明な変化や体温上昇例は無かったが,室内WBGTのレベルに関係なく,ブランチテスト陽性が6件,ツルゴール低下20件,さらに極度の体重減少が3件,尿量低下が4件,口・舌の乾燥が3件,認知機能の悪化が6件でみられた。


【結論】

本研究により,8月の期間中において居宅高齢者の脱水症状が明らかとなった。ただし脱水症状は高いWBGTから生じているだけではなく,原因は多岐に渡っている可能性があり,リスク管理上留意する必要がある。よって訪問リハの利用者には,8月の暑い時期にクーラーを使用するように指導することに加えて,水分摂取や電解質補給状況についても十分注意する必要がある。